第18話

ミラネルはさっきの一撃で砕けた剣を片手に笑顔で俺等に言った。

そのあと剣を捨て再び新しい剣を手に持つ。

俺はミラネルの登場に今までに味わったことのない安堵感と感動をしていた。


「ガーディアン二人を探していたら、レティーナの声が近くでしたから走ってきてみたら、君がやられそうだったから本気で突っ込んだら案外うまくいったよ」


「ありがとうございます。なんてお礼を言ったらいいか」


俺は申し訳なさと助かった喜びが渦巻き心がぐちゃぐちゃになっていた。

そんな俺にミラネルは言った。


「お礼はいいんだよ。詳しい話よりも先にレティーナを助けてこのガーディアンを倒さないと」


ミラネルの言葉で俺は自分のやっていたことを思い出す。

そうだまだ戦闘中。

ガーディアンはまだ生きている。

俺がガーディアンのいた方向に目をやるとガーディアンは自分の腕がもげてしまい動きが止まっていた。


その隙にミラネルはレティーナの元へ行き蔓を剣で切り裂きレティーナを助け出していた。

俺もガーディアンから距離を取るために二人のところへ走る。

丁度ミラネルが助けたレティーナに声をかけていた。


「大丈夫だったか?」


「はい! ありがとうございます。おかげで助かりました」


ミラネルの問いに笑顔で答えるレティーナ。

俺は二人に迷惑かけた上レティーナの制止も聞かずにガーディアンの前に立ち塞がった。

その上ミラネルに助けられる始末。

レティーナにあわせる顔がない。

二人の方へ行こうとしていたがそんなことが頭をよぎり近づけずにいた。


すると俺が来たのに気づいたレティーナが俺の方へ走ってくる。

その表情はあきらかに怒っていた。

こんなことならあのまま死んでいた方がよかったのかもしれない、助かってもかっこ悪くて最低な人間になっただけだ。

俺が自分の過ちに後悔していると、レティーナが俺の目の前までやってきてこういった。


「バルトさん、どうして逃げなかったんですか?」


「それは……俺が逃げたらレティーナがやられると思ったから」


「だとしても私はさっきの行動が正しいと思いません。あのままミラネルさんが来なかったらバルトさんは間違いなく死んでいたでしょう」


「でもあの時の俺にはそれしか方法がなかった」


「それでもこれからは私のことよりも自分が生き残ることを優先してください! あなたはこの世界の希望です。そして私の希望でもあります。

あなたがいなくなったらいくら私達が生き延びても意味はないんです」


たしかにそうだ。

俺は死ぬ間際にそれに改めて気づいた。

世界を救うことができる力を持つということは思った以上に責任が重いのだと。

俺の行動が軽率だったのだ。

俺は自分のしたことの重大さを改めて思い知らされた。

落ち込む俺にレティーナは小さく呟いた。


「もう私の前から大切な人がいなくなるのは嫌なんです……」


「レティーナ今なんて!?」


俺は咄嗟にレティーナへ聞き返したが。


「なんでもないですよ。さぁミラネルさんが待ってます、早く行きましょう」


そう言って振り返ったレティーナはもういつものレティーナだった。


俺達がガーディアンの所へ行くと、すでにミラネルがガーディアンと戦闘していた。

ミラネルの周りにはガーディアンとの戦闘で砕いたであろう剣の残骸がいくつも転がっていた。

そして驚いたことにさっきミラネルが吹き飛ばしたはずの片腕が元通りに戻っていた。

ミラネルは俺達に気づき言った。


「遅かったね二人共。帰ってこなかったらあたし1人で倒してしまっていたところだよ」


ミラネルは笑って俺達に言うが、その顔には疲れの表情も見える。

戦闘開始からしばらく経ち、その上さっきも相当な力を使わせてしまったから無理もない。

レティーナがミラネルさんに聞く。


「遅れてすみませんミラネルさん。何かガーディアンを倒す方法見つかりましたか?」


レティーナの質問に不敵に笑うとミラネルは言った。


「ああ、二人がいない間に何発も体に突きを食らわせてやったらコアを見つけたんだ」


俺達はミラネルの言葉に思わず笑みがこぼれる。

しかしミラネルは少し深刻な表情で続けた。


「けどね。どうしてもコアを壊す前に体が再生してしまうんだ。あと一歩のところなのに」


ミラネルは悔しそうに、近づいてくるガーディアンを睨みつけた。

そしてとても言いにくそうに俺達に言った。


「実はコアの場所を探るためにたくさん剣を砕いてしまったから、あたしの持ってる剣はあと1本だけなんだ」


「つまりそれで失敗したら俺達に奴を倒す手段はないってことか」


俺の言葉にうなずくミラネル。


「しかもその剣っていうのがあたしの家に昔から伝わる聖剣で、もし砕けたりなんかしたら先祖に申し訳なくて。

もちろんそんなこと言ってる場合じゃないのはわかってはいるけど」


聖剣? またとんでもない単語が出てきた気がするが今はそれを気にしている場合ではない。

何かしら策があればいいんだが、何もなしに聖剣を使っても同じことの繰り返しのような気はする。

俺は考えながらレティーナの方を見る。

散々迷惑もかけたし、さっき小声で言っていた言葉も気になる。

でも先にこっちを片付けないとそれどころじゃない。

ガーディアンには魔術も効かないし物理で殴ってもすぐに再生してしまう。

ようは再生させないように強い衝撃で直接コアを壊すことだろうけどそんなことどうやってもできっこな……。


その時、俺の中に1つの考えが浮かんだ。

おそらく俺達で力を合わせればガーディアンを倒せる。

もしかしたら否定されるかもしれない、また失敗してしまうかもしれない。

そんなことが頭をよぎる。

それでも二人の役に立てるかもしれないんだ。


俺は勇気を出して二人に言った。


「二人とも。実は俺にいい考えがあるんだ!」

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念願の異世界転生をしたのに、3日後に世界滅びるってマジ @gagagaman

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