第17話
あれだけの魔術を受けても無傷とかどんだけ硬いんだこいつ。
俺だけでなくレティーナも驚いたいたようで反対側でガーディアンを見ながら動けないでいた。
ガーディアンは魔術を受けたことなど気にした様子もなくミラネルの方へ視線を向ける。
このままだとミラネルの方に功撃が行ってしまう。
こうなったら俺のスキルで奴を足止めするしかない。
俺はポケットからスイカの種を取り出し地面に投げる。
そしてそこに両手をかざし水出し種にかける。
すると種は光出し轟音とともに太い蔓が四方八方に成長し伸び始めた。
「行け!! ガーディアンの足を絡めとって足止めをするんだ!!」
俺は前世で見たアニメのトレーナの言葉のように伸びた蔓へ指示を出してみた。
俺のスキルで成長した植物だから、きっと俺が意思表示すれば言うことを聞いてくれるかもしれない。
と思っていたのだが、現実はそう甘くなかった。
俺が成長させたスイカの蔓はガーディアンの周りへ伸びていったがガーディアン自体を飲み込むことはなかった。
そればかりか他の方向へいった蔓が、ミラネルやレティーナ達の周りにまで伸びていきガーディアン諸共みんなの姿を完全に隠してしまった。
その上、成長した蔓から実った巨大なスイカが辺り一面にいくつも生えた結果、戦闘どころか辺りすべてがスイカの海のように変貌してしまったのだ。
数秒前まで戦闘をしていたとは思えないほど周りは全て緑の蔦と大きなスイカの実しか見えない。
俺は自分のやったことが、とんでもないことだとようやく理解し青ざめた。
やべぇ、ここまで大きく育つとは種1つだったし思い通りいかなくてもちょっと邪魔になる程度だと思っていたんだが。
これはもう邪魔どころか地形を1つ変えてしまったみたいだ。
どうしたらいいんだ、ガーディアンもミラネルもレティーナもスイカに飲まれてここからじゃ確認できないし。
そう思っていると俺の前にいくつかあったスイカの1つが思い切り弾け飛んだ。
大量のスイカの汁と実が周りに飛び散りその奥には、スイカの汁で体がコーティングされたガーディアンの姿が見えた。
はぐれた奴の中で一番、再会したくない奴が来ちゃったよ。
ガーディアンは少し目の前の見つめていたが、そのすぐ横にいた俺に気づいたらしく俺の方へと近づいてくる。
さっきのスキルの発動で俺のスキルが戦闘に不向きとわかった以上俺がやることはただ1つ。
俺はガーディアンに背を向けると。
全速力でガーディアンから走って逃げる。
「とりあえず逃げて二人と会わないと、このままじゃ徳もロクに積めないまま虫に転生しちまう!!」
俺は逃げながら絶対死んでなるものかと必死でガーディアンから距離を離す。
幸いガーディアンは動きが遅いため苦労せずに距離を離せた。
あとは二人を探して出会うだけ。
俺はガーディアンから距離をはなしつつスイカだらけになったこの空間をひたすら走りまくった。
ガーディアンは見失ってしまったから正確な位置がわからないのが気になるが、時々遠くの方でスイカが破壊される音が聞こえるから大丈夫だろう。
俺がひたすら走り回っていると。
「あっ! バルトさん助けてください~」
不意に聞き覚えのある声が聞こえた。
たしかこの声はレティーナ。
俺が声のする方を向くとそこにはスイカの蔓に絡まれ身動きがとれないでいるレティーナの姿があった。
敵を絡めて封じるつもりが味方を封じてしまっていたのか。
俺のスキルは本当に邪魔しかしていないようで正直申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
俺は動けないレティーナにこういった。
「レティーナ。一体何があったんだ?」
自分でも白々しいと思うほどの質問だが一応聞いておかねばなるまい。
「何があったんだじゃないですよ!! 突然バルトさんが魔術を使ったかと思ったら、すごい量の蔓が私達の方に来て私もがんばって逃げようとしたんですが
すぐに蔓に絡めとられて気がついたら身動き1つ取れない状態に」
俺の質問に怒って声を荒げるレティーナ。
こればかりは怒るのも無理はない。
「すまないレティーナ。俺もここまで酷いことになるとは思わなかったんだ」
「だからマナの制御がうまくできない間は気をつけてくださいって言ったんですよ!」
「返す言葉もないな……」
「とにかくここから出してください! 早くしないとガーディアンがこっちに気づくかもしれません」
「わかった。すぐに助ける」
俺はレティーナに初めて怒られながらレティーナに絡まった蔓を外そうとするがびくともしない。
力を入れて何度も引き剥がそうとするがしっかり体に絡まっていて到底取れそうもなかった。
「くそ! まったく取れない」
「かなり硬く絡まってますからね。先にミラネルさんと合流したほうがいいかもしれません」
「でもレティーナをこのまま置いていけない」
俺は少しでも蔓を動かせないか試すがやはり無理そうだ。
レティーナは先ほどまで怒っていた顔から少し笑ったような顔になりこういった。
「私は大丈夫です。さっきは取り乱してしまって色々言ってしまいましたが、今はもう平気です。バルトさんがミラネルさんを探している間に、私も自分でどうにか脱出できないか試して見ます」
レティーナは俺に先に行けというがやはりここにレティーナ1人置いていくのは危険すぎる。
そうして俺がどうしようか考えていると、突然近くのスイカが破壊されガーディアンが姿を現した。
こんな大変なときに見つかるなんて。
「バルトさん逃げてください!! このままじゃ二人ともやられてしまいます!」
レティーナは必死に俺へ言葉をかける。
だが、俺の答えは決まっていた。
俺はガーディアンがいる方へ全速力で走っていく。
そしてレティーナに笑顔でいった。
「今、俺にできることはこれくらいしかないから」
「こんなときに何言ってるんですか!? 早く逃げてください!!」
レティーナは懸命に叫ぶが俺は止まらない。
ガーディアンは俺に狙いをつけたのか俺の方へ体を向ける。
俺はガーディアンの目の前まで来ると両手を広げた。
【ファンタジークロニクル】でもこうやってヒロインを主人公が守っていたな。
俺はそれを見てそんなことしなくても誰かが助けに入ってくるだろって見てたら、仲間のイケメンキャラが颯爽と助けに入ってさ。
やっぱりさっきのシーンいらなかったよって笑ってたけど。
まさか俺自身が同じことをするはめになるなんてな。
ガーディアンが俺へめがけて拳を振り上げる。
このまま死んだら徳ってどのくらいもらえるのかな。
仲間1人命がけで守ったんだから少しくらいおまけしてくれよなエリル。
あ、でもこの状況作りだしたのは俺だしプラマイゼロかなぁ。
だとしたらあいつが言ってたみたいに来世は虫かぁ。
死にたくねぇ、死にたくねぇって思ってたけど。
誰かのために死ぬって思ったら不思議と心が軽くなった気がするな。
まぁこの世界もあと3日で滅んでしまうしここで死んでも変わらないか。
『すごいです! バルトさん。やはりあなたはこの世界を救える力を持った特別な人なんですよ!!』
そういや俺が死んだら結局世界を救える奴いなくなるから結局レティーナも死ぬんじゃ。
だとしたら俺がここで死んでもただの犬死になんじゃ……。
振り上げられた拳が俺へと降り注ぐ。
俺はレティーナを守るために命張ったのにこのままじゃ俺の行動の意味が。
もう体が動かない。
死ぬ間際の恐怖ともう助からないって誰かから言われてる。
死ぬんだ。
何も出来ずにここへ来る前の前世と同じように。
俺が死を覚悟したその瞬間。
「はあああああああああああああ!!」
大声とともに1人の剣士がガーディアンの腕に剣を思い切り突き刺した。
ガーディアンの腕は剣の勢いで俺の方向から蔓の方へ向きを変えてそのまま振り下ろされた。
あまりの勢いにガーディアンの腕は根元あたりから砕け完全にもげていた。
そして吹っ飛ばした腕の残骸から1人の若い女性が現れる。
それはさっきまで一緒に戦っていた人だった。
「ミラ……ネル?」
俺は驚きでまともに声が出なかった。
そしてその女性は笑いながらこういった。
「大丈夫か。二人とも」
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