第4話

「世界が……3日で滅ぶ?」

衝撃的な事実を聞いた俺はしばらく言葉を失い立ち尽くしていた。

これは一体どういうことだ?

俺はここに来る前にエリルから『おぬしの希望通り魔王も侵略者もいない、平和ボケが染み付いた魔法とかもある夢ような世界しといたからのぅ』

って言われてゲートに入ったはず……。

まさかエリルの奴め、俺がからかったから嫌がらせに嘘をついたのか!?

いや待て。

まだ状況を判断するのは早すぎる。

もう少し詳しい話を聞くことにしよう。

そんなことを考えていると俺の様子に心配したのか老人が俺に話しかけてきた。

「急に黙ってしまわれてどうかしたんですか?」

「いやちょっと考え事をしてました。ところで、さっき世界が3日で滅ぶとか何とか言ってましたけど、どういうことなんですか?」

「まぁ知らないのも無理はありません。3日で世界が滅んでしまうというのは、占いをした日付から数えて今日より3日後に、世界が滅んでしまうということです」

「占い? それは一体誰が占ったとか知っていますか?」

「えぇたしかこの村のはずれの方に、レティーナという占いをしている女の子が一人住んでいます。村で困ったことや大事な時にはその子に占ってもらっていたんです」

「なるほどその子は昔からこの村に住んでたり?」

「えぇ数年前まで母親と二人で暮らしてましたが、母親が他界してからは一人で占いや農業をしています」

「その母親も占いをしていたんですか?」

「いや彼女の母親は占いというより魔術の扱いに長けていました」


魔術!? この世界に来て初めて異世界っぽい単語を聞いた。

この世界には少なくとも魔法はあるということだ。

「その魔術っていうのは誰でも使えるものなんですか?」

「誰でも使えるわけではありません。魔術を扱える者は、血筋や生まれつき身体に魔力を持っているものに限定されます。

ただ魔術が使えなくとも、魔力を封じ込めた道具などを使えば擬似的に魔術を使うことはできますが」

ふむふむ魔法は一部の選ばれた者にしか使えないのか。

あわよくば俺も簡易的な魔法ぐらい使えるようにならないかと思っていたが、こればかりは仕方がない。

とりあえず魔法の存在とこの世界が滅びると占った人物の情報は手に入れたし、占いについて詳しい話をその人に聞いてみるか。

俺は老人に別れを告げ、教えてもらった家に行くことにした。


老人と別れポッコロ村と言っていたこの村を歩いているが、やはりいくら歩いても人一人見かけない。

あの人は20名ほどはいると言っていたが、その人たちにすら会わない。

村というよりは、かつて村だった廃墟に来ている気分でかなり不気味だった。

そんな村の中を抜けて村の出入り口らしき場所まで来てみたものの、辺りは一面の草原。

世界から忘れ去られた村といわれても、おかしくないくらい寂しい場所だ。

こんな寂しい村で世界が滅ぶなんてとんでもない占いをしてる奴がいるなんてな、さすが異世界。

「あ、見つけた」

俺がこの村の現状に複雑な気持ちでいると、村から遠く離れた場所に小さな丘がありそこに一軒の家が見えた。

おそらくあの家が、レティーナとかいう占いをやっている女の家だろう。

それにしてもなんで村の中じゃなくて、わざわざあんな場所に家を建てたんだ?


俺はまだ見ぬレティーナとかいう人物に、不安を抱きながら彼女の家を目指した。


「やっと着いた」

村を出てから約30分ほど歩いて、ようやくこの家に辿り着いた。

村からこの家を見た時は大した距離ないだろうと思っていたが、実際歩くと思いのほか時間がかかってしまった。

「マジでこんな場所に家を建てる意味あるのか? 丘も無駄に角度きつくて登るの苦労したし」

まぁそのへんも含めて、彼女に話を聞いてみるしかなさそうだな。

そう思い俺は家のドアをノックしようとした瞬間。

『お待ちしてました。どうぞ入ってください』

まるで俺が来ることを知っていたかのように、俺を呼ぶ声が中から聞こえた。

老人の言っていた通り声の感じからして若い女性のようだ。

「なんでノックする前に俺が来たってわかったんだ? それにお待ちしてましたってまるで来ることがわかっていたみたいに」

彼女の言葉に少し怖気づいたが、あんなとんでもない占いをされて何も聞かずに世界が滅んだら、死んでも死にきれないと思い。

自分を奮い立たせ、言われた通り鍵のかかっていないドアを開け中に入る。


「おじゃましまーす」

中に入った俺を初めに迎えたのは、木彫りのよくわからんお面だった。

「なんだこれ」

赤や黄色、緑など3色の羽が頭に刺さり、顔は死んだ魚のように暗く傍には【おさわり厳禁】とかかれた札があった。

「そのまま奥までいらしてください」

俺が謎のお面に気を取られていると、不信に思ったのか奥いる彼女から催促された。

お面に後ろ髪をひかれながらも、俺は廊下を歩き奥の部屋へと進む。

すると急に薄暗い空間が俺の前に現れた。

「こっちです。こっち」

暗闇の中から先ほどの声が聞こえた。

「この中に入るのか……」

俺はおそるおそる中を覗くと、空間の奥には小さな明かりに照らされた一つのテーブルと椅子があった。

おそらく明かりはランタンか何かから漏れているようで、テーブルの上には薄いカーテンがかかっており光の漏れている奥の様子は確認できない。

しかしその光源の傍に一つの人影が見える。

さっきまで俺を呼んでいた人物だろうか。

俺はゆっくりと近づくと先ほど見えた人影はテーブルの奥に座っており、正確には見えないが俺に座るように右手でジェスチャーをしているようだった。

「し、失礼します」

促されるまま俺は席についた。

「どうも初めまして占いの館にようこそ。私はここで占いをやっているレティーナといいます。あなたが来るのを待っていました」


カーテンに遮られて顔も姿も見えないが、彼女が老人の言っていたレティーナで間違いないようだった。


「レティーナさんのこと村の人から聞いてきたんですけど、俺のことを待っていたと言うのはどういうことなんですか?」

「あなたがここに来ることは数日前に占った際に知りました。今日ここにあなたが私のことを訪ねて来ると」

「なるほど村で聞いたんですがレティーナさんが1ヶ月ほど前に、世界が滅亡すると占ったと聞いたんですがそれは本当ですか?」

「それは本当です。数年前からここで占いをやっていますが、丁度1ヶ月前私のビジョンに世界の滅亡を暗示するものが映っていたんです」

「滅亡を暗示するもの? それは一体?」

「それは詳しくはわかりません。ですがそれは今、世界各地で起きているマナ不足やマナの木が枯れつつあることと、何か大きく関係があると思うんです」

「マナ不足……それはすごく大変なことなんですか?」

「大変なんてものではありません。マナがなくなればマナを糧として生きる魔物達が暴れだし、人々が襲われたり。

マナ不足によって植物や、生物にも悪影響が及ぼされ多くの生物や植物が死に絶えます」

「そんな……このままだと」

「あと3日でこの世界からマナが完全になくなり世界は滅びるでしょう」


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