Episode:10-3 Don't be afraid
夜、
「副長はいますか?」
「ねえねえ、
そういってグラスに入った飲み物を進めてくる女性オペレーターは
「いっぱいあるゆぉ、これね、テキーラって言うんだ、副長に教えてもらったの」
「僕未成年ですよ? それに
「にぇ……」
叱られた
「現場主任はさすがですね、スタービジョンのメンバーからだけでなくオペレーターにも人気なんて、小学生の内からタラシの才能でもあるんでしょうか。将来に期待ですー」
女性オペレーターの
「
「私は副長先輩一筋で・す・の・でっ」
「ツレないなぁ~」
コーヒーを持った
「昨日のデートは楽しかったか?」
「……そりゃあな。君達は見ようと思えばいつでも見れるじゃないですか。盗聴器も監視カメラもあるんだし」
「こういうのは当人に直接聞いてこそ意味があるものだ」
「そうなんですかね……どっちも変わらないと思うけど」
いつもの司令室の日常の中、所長と副長が忙しない様子で入ってきた。
「所長!」
「副長も!!」
所長が大声で事態を告げる。
「ソロモンⅢによってAクラス事件の予知が出た。場所は中央区の中富ホテル。スタービジョンに
前方の大型モニターに無数の六角形と非常事態の文字が現れる。
先程までふざけていたオペレーター達も真面目な表情になり、目の前の脅威へと向き合う。
札幌の市街地にそびえ立つ超高層ホテル。
赤い航空障害灯が点滅する。
普段は閉鎖されている非常用階段で、警備員は不審な光を見かけた。
彼は懐中電灯を構える。
「そこで何をしている!」
しかし、そこには誰もいなかった。
「……なんだ、気のせいか」
そうして、後ろを振り返り、立ち去ろうとした。
すると、警備員の背後に銀色の閃光が迫った。
刹那、警備員の首と胴体と腕がばらばらになり、その場に転がり落ちた。
「こんな夜遅くに出撃命令なんて、
わざとらしく背筋を逸らして艶めかしくあくびをする
「……仕事よ、真面目にしなさい」
その仕草に苛立ちを覚えた
「まあまあ、タイチョーもそう固くならず、アレ、やろうよ!」
そこにステラが割って入った。
「アレ……?」
"アレ"が何のことか知らない
肩を組む
「せーのっ」
ステラが音頭を取ると、それぞれ掛け声を叫び始めた。
「ジューシー!」
「ポーリー!」
「イェーーーーーイ!」
場違いなそのテンションに
「何かの儀式か?」
「クール系美少女特務
ステラがぴょんっと飛び跳ねて答える。
「もっと適切なものがあっただろ……」
そして
「これくらいはっちゃけてたほうがいいの!」
ステラの破天荒な返しに
「やれやれ……。それじゃ、
「了解!」
そして、
「うえっ、まーーーーたメタリック・アレ?」
相変わらずな造形に
「その呼び方やめろ! メカビートル2号だッ! 二人の様子はこっちで確認できるようにしておく。頼んだ!」
「仕方ないなぁ……おけまる!」
「イエス・サー!」
その二人を見て
「よし、行こうよ。
しかし、
「それよりアンタ、本当に現場に来るつもり? 死ぬわよ」
「……高層階で能力的にも危険なのは
「……ばか」
「今更だよ。それに、僕は無策で行くほどバカではない」
そう言って
「うん」
「行くわ。掴まってて」
周囲を見渡すと辺り一面の夜景。
ある程度の高度を稼ぐと、ホテルに向かって切り返し、直進する。
「突っ込む、衝撃に備えて! 3、2、1、コンタクト!」
その後、降り注ぐガラス破片を防ぐために金属製のテーブルを持ち上げて即席の盾として機能させる。
防刃仕様のスタービジョン制服で
「スタービジョン1号、及び2号も突入成功」
周囲を見渡すと、そこは高層階の個室の中だ。
明かりはなく、割れた窓から入り込む街と月の明かりだけが二人を照らしていた。
完璧なセキュリティで内側から閉じられている。
「駄目、私の直接ハッキングも封じられている」
扉に触れていた
「大丈夫、メカビートル3号で開けられるはずだ」
そこで
「……その必要はないわ。下がってて」
「おい、待て、何をする気だ!?」
部屋で拾ったビスを指に挟み、エラ状器官が開いて髪が白く発光する。
周囲の金属類が磁力によって浮遊し、暗い室内が赤色に染まる。
「PK電磁砲!!」
赤黒い閃光が激しい轟音とともに扉を吹き飛ばした。
「ほら、開いた」
ホテルの40階にあるクリスタルルーム。
白いジャケットに身を包むスキンヘッドにサングラスの男が、金色のソファに座りながら無線機で通信をしていた。
『ヘッド、FleurS商会が所有する96億0000万円の無記名債券の在り処を吐かせやした!』
「でかした、俺はそちらに向かう」
『しかしLTPトラストの連中も無茶言うぜ。ここの金庫のセキュリティは下手な牢獄よりも強いと言うんだからな』
「問題ねえ、そのための俺達だ。明日にはベガスで豪遊だぞ」
「ええ、そうね。でも、私の力があれば分前を増やす事なんて造作もないわよ?」
隣には煙管を吸っている赤いドレスに身を包んだキャバ嬢風の女性がいた。
ドレス、腕時計、臙脂色のバッグ、赤いハイヒール、その全てがブランド物だ。
「おい、おめえは未成年だろ」
そう言ってスキンヘッドは彼女の煙管を取り上げた。
「……リーダー、お言葉ですがこれは疑似煙草ですよ? フフフ」
妖艶な笑みを浮かべる彼女に、スキンヘッドは座り込む。
「フン」
「いつの時代もああいう女が一番つええってこったな」
窓際の席に座っている、黒髪に白いバンダナを巻いたチョッキに身を包んだガンマン風の少年が、弾丸を選びながら言った。
「違いないぜよ……」
冷蔵庫の前に座り、静かに目を瞑る新選組隊服に見を包んだ少年。
異様な出で立ちの三人、その全てが
スキンヘッドの男、
キャバ嬢風の女性がミリーナ、新選組隊服がサブロウ、ガンマン風の少年がイーストだ。
『ヘッド、エデンの特務
「やはりな、恐らく三人いるはずだ、接敵階を仔細に報告せよ」
『正面エントランスから金髪の女が、16階の廊下で茶髪の女と接敵、後は31階に勢いよく何かが突入した形跡ありとの事です』
「
能力の詳細データを見た後、すぐに周りに指示を下した。
「イーストは3階。サブロウは35階、武器は硬質樹脂刀にしておけ。ミリーナは17階へ向かえ」
「わかったわ!」
「承知した」
「御意」
イーストが銃弾を何発か放った後、地面に拳を突き立てて出来た穴で一気に下層階へと下りる。
サブロウはエレベーターの扉を一瞬で切り刻み、そのまま飛び降りる。
ミリーナはもう片方のエレベーターを使い、17階へと向かった。
そして、
「
『了解!』
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