Episode:09-4 A Nightmare on NO.6
厄介なのは
これさえ突破できれば勝ち目があると睨む。
「右にいるミチルって方が
「うん!」
「おっけ!」
「ラジャー!」
そして、三人はアイコンタクトをとる。
「ゴーゴーゴーゴーゴー!!」
ミチルは精神系
「げぇ、あの敵意、こっちを狙ってる! 私は複数催眠を行う。チルチルお姉さまはアレを!」
ミチルは手を交差させ、指で輪を作った。
「アレね。わかったわ!」
チルチルの方がスカートの中からワルザーPPS拳銃を出した。
「あんな物騒なもの、どうやって手に入れたんだ!」
車内でのM1918を思い出す
しかし、それは頭の片隅に置く。
「用心しろ、相手は銃を持っている!」
チルチルの正確な拳銃射撃。
それは、
ステラはジグザグにステップを踏むことで、
「ステラ、飛ぶよ!」
目標はミチル。
二人は拳を構える。
「PィィィKェェェェェ、ツインドッグゥゥゥ!」
激しい衝撃音が響き渡った。
「やったか!?」
バリスティックシールド。
ミチルが咄嗟にスカートから取り出した軍用の防弾盾が、二人の拳を受け止めていた。
二人は生身の彼女らに攻撃するために手加減していたのだが、それ故に盾で防がれてしまった。
そして、それは二人にとって大きな隙となった。
「羊が二十匹ィィィィ!」
元々眠っていて
空中制動を失った二人は勢いよく後ろへと投げ出され、電車の最後尾を越え、線路の上へ。
「二人共ぉぉぉぉぉ!」
双子は
「厄介な司令塔ね。先にあっちから潰しちゃいましょ?」
「わかったわ、チルチルお姉さま」
チルチルは拳銃を
そこに、
「あーしの事忘れてないかにゃ!?」
その声にチルチルは向き直り、
トンネルに差し掛かる。
お互いの姿が見えなくなる。
トンネルの暗闇に電車の音、そして銃声と爆音が響く。
「ッ!」
マズルフラッシュや
「はぁっ!」
お互いに一歩も譲らない攻防。
しかし、それをしないのは乗客を巻き込みたくないがためだった。
「守りながら戦うってこんなに大変なのよね!」
トンネルを抜け、再び両者が見える。
双子は目に隈ができ、充血し始める。
お互いに体力の限界だ。
双子はカリウの薬βによる副作用で身体に毒素が回り始めている。
それでもチルチルは拳銃で
「テレポセパレーション!」
銃弾が命中するも、その
再び
――もう縮地はできない……けど、鬼火なら!
「ミチル!」
チルチルはミチルに
しかし、そうはさせまいと
「させない! 臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前、悪霊退散!」
ミチルの周囲に神札が貼り付き、そこを起点に青白い炎が吹き上がる。
「きゃあっ!」
「あらら……置いていかれちゃった……どうしようかしらね」
線路の上で
「大丈夫、ボクは速度なら自信あるよ!」
自信満々なステラ。
「でも、もう私は……」
しかし、
胸の星が点滅し始めている。
「そうだ!」
空中に浮いた自身を起点に、直径5m程の電子ビームで輪を作り出した。
「PKパンジャンドラム!!」
その輪は徐々に太くなり、回し車のようになる。
それは車輪のように、線路の上に乗った。
「これでどうするの?」
ステラは首を傾げる。
「決まってるじゃない、アンタがこの回し車でハムスターみたいに走るのよ!!」
当然という顔で
「ええええええええええええええええええええええええっ」
ステラが筋力を最大まで強化し、電子ビームの回し車を加速。
レールによる電磁加速もあり、速度は時速300kmを越えていた。
余裕で追いつく。
最後尾の客車に迫る。
「乗り上げるよ!」
壁をつたい、勢いよく上に飛び上がり、車体の上へと乗り上げた。
「うわあぁっ!」
電子ビームの回し車はそのまま双子の方へと向かう。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇっ!」
ミチルは
「邪魔! 羊が三匹!」
強烈な眠気が
それによって、回し車が解除され、空中にいた
「
それは、フラフラと動きながら、再び
バッチリと目を開けた
胸の星が点滅し始めている通り、残りの力はほとんどない。
それでも、前へと進む。
双子は焦った。
「くそ、こうなったら、死なば諸共!」
二人共スカート中からロケットランチャーを取り出した。
構えた先は
電車の向かう先、前方の線路だった。
「いけない、ロケットランチャーで線路を粉々にするつもりだよ!!」
ステラは声の限り叫んで
遅かった。
ロケット弾が放たれ、線路へと一直線する。
暗い夜に目立つ爆炎を上げ、前方の線路が粉々になった。
ステラ、
電車は破壊された線路を越え、足場を失いバランスを崩す。
「こいつには解除したとはいえ爆弾もあるんだ、下手に衝撃を与えれば乗客も犠牲になる! 皆、頼む!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
前方には森。
このままの勢いで激突したら多数の怪我人どころか死者が出る。
一歩も引けない。
――私は……この力を……。
「護るために振るうって決めたんだァァァァァァ!!」
火花を散らしながら草原を横滑りする車体。
九両がジグザグに折れ、森へと向かう。
エラ状器官から黒い液体が垂れ、それが赤い火花へと変わり、その赤黒い電撃が全ての車体を包む。
「うわああああああああああああああああああああっ!!」
電車はギリギリの所で衝突を免れた。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
全員が満身創痍だった。
皆の胸の星は光が消えている。
もう
そこに、目を真っ赤にして全身から血を吹き出す双子がフラフラと歩いてくる。
「こうなったら道連れにしてやるヨぉ!」
全身が血の噴水と化しながら双子はまだ
「バカな!」
カリウの薬βによる肉体のリミッターを外した結果だ。
「私達は……望まれてなかったのよぉ! でも、それでもこうしてェ……周りを不幸にすれば……相対的に……私達が幸せになると思って!」
チルチルは涙を流しながら嘆き叫ぶ。
「そんな事、無理だ! 憎しみは憎しみを呼ぶ、君達だって幸せになれる方法はあったんだ! 力は人を傷つけるためじゃない、人を幸せにするためにある、僕達は君達のことだって!!」
大声でそれを否定する。
「黙レ!!」
「……君達は悪夢を見ているんだ、だから、今から、覚まさせてやる!」
メガネは割れ、端末は砕けている。
服はボロボロで手足には無数の切り傷。
その姿に、
「無茶よ!」
「待って、アンタ、何をするつもり!?」
心配する
「大丈夫だよ、
「ばか……無茶するなら、私も一緒!」
双子は吐血しながら再び
「悪夢を見るのはおまえ達だ! その微塵も力の残ってない惨状で如何するつもりか!?」
「ファファファ、悪夢に
「確かに今の私には力が残ってない」
今までサポートをしてくれたエデンの司令室の人達を思う。
「でも、信じてくれる人の想いが!!」
日常を支えてくれた学校の友人達を思う。
「願いを託してくれる人の心が!!」
一緒に戦ってくれる
「未来を委ねてくれる人の魂が!!」
そして、
「届いてるんだからあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁーー!!」
その思いが、一つの力ととなり、道になった。
金色に輝く稲光とともに、白く光り輝く六枚羽とエンジェル・ハイロゥが出現し、
衝撃が周囲の芝生を撫でる。
エデン本部では混乱の様子だった。
『ありえない……全ての数値が振り切れています!』
女性オペレーターがコンピューターによる計測に驚愕する。
『覚醒……!?』
『さあ、でも、どうして』
誰もが理解を超える事態だった。
真っ直ぐ前の敵を見つめる
「行こう、
二人は同じように拳を振りかざす。
「これが私の!」
「僕の!」
想いを束ね、力を一つにする。
「私達の、ゼンリョクゼンカイ!」
そして、二人はその球電を殴り抜ける。
球電は雷撃の槍と化し、赤い電撃で出来た獅子の頭を持つ龍"ガオウ"へと変化した。
「PKガオウ・ギガボルト!」
お互いの好きな生物を組み合わせたかのような中国神話上の伝説の生物。
二人の心象を模したエネルギーが双子を捉える。
瞬間、
しかし、ガオウはその程度では止まらない。
天球のような、書割のような夢の壁をガオウはすぐに食い破る。
パリーンとガラスが割れるように破壊された
「ギャオオオオオオオオオオオオオ!」
ガオウが吠える。
「ミチル!」
「羊が百匹ィーー!」
目から血を垂れ流しながらミチルは
それも多重に。
しかし、直進するガオウは
「――!!」
「ゴオオォォォギャオオオオオオ!」
能力による干渉を食い破りながら突き進み、頭部から姉妹を丸呑みした。
そして、無数の赤い火花となってガオウが散ると、姉妹はその場に倒れ込んだ。
その力の代償は
そして、彼女の白く光る髪が元に戻り、その場に倒れ込んだ。
エデン付属総合病院 101号室。
「ここは……」
見知らぬ天井。
「も~~~、やっとめざめたぁ!」
「僕達は……」
「勝ったんだよ! 死者も重症者も0! あーしらを除いてね! でも
「あの双子は?」
「彼女達は病院で毒素を取り除かれて治療を受けたから無事よ~ん」
「その後はあーしが殺しておいたよ」
その物騒で
「こ、殺し!?」
「わー、ダメダメ、絶対安静ってゆわれてるんだから! 別に命奪ったわけじゃないってば。別の人として生きるってコト!」
その言葉に
「あのドラゴンに噛み砕かれたお陰で記憶が消えているっぽくてね~」
良かったのか良くなかったのかわからない報告に
「それにほら、あーしの能力って
炎で顔を変えるという物騒なワードに背筋を冷やしつつ、それなりに無難な処置をされたことに
「しかしあのドラゴンはどういうコト? あの時
それは
暗い空間の中、赤いローブを身に纏い、ペストマスクをつけた長身の者達が円卓を囲む。
「報告は以上です」
「ふむ、下がってよい」
「想定よりも早い覚醒であったな」
「100通りのパターンに含まれているさ、問題はない」
「それよりもスタービジョン2号の影響がイレギュラーになりかねんな」
「我々の計画に支障が出る場合は軌道修正を行わねばな」
「因果誘導存在、厄介だな」
次回予告
デート。
それは、関係性の分岐点。
人の愛、青春、果たしてそれは正義のヒーローにそれは必要なものなのか。
次回、一方通行の分岐点
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます