Episode:07-3 The Only Neat Thing to Do
エデン本部の中央広場。
女神像が置いてある噴水。
そしてその周囲に円形に広がり、ベンチが並んでいる。
「チッ……はぁ……」
「どったの」
ベンチに座りながら舌打ちとため息を続ける
俯いていた
「今日は重い日だから食欲ないのに、学食のおばちゃんに若いんだから食べなさいって大量に盛られて……」
「ふぅん、道理で朝からイライラしてると思ったわけねー」
「私、別に子供とか要らないのに……」
落ち込む
「そんな事言われてもな~」
そこに、
「……昼間のエデン本部中央広場でなんて会話してんだよ」
今の
「今イライラしてるからそれ以上喋ったら口を縫い合わすわよ」
「はいはい、そうかい」
手を振りながら去る
「ま、そういう日もあるよね~」
エデン本部の司令室に野球ボールが飛ぶ。
「フライだ、取れ取れ取れ取れ」
エデンの職員達が普段は使わない司令室最下層の広い空間を使って野球をしていた。
「ナイスキャッチ! はい、アウトー」
「ハイターッチ!イエイ!」
次の打球は三塁打、と思った瞬間。
無数の紙飛行機がボールを包み、金髪の軽薄そうなオペレーター、
「
「そんな事言われても野球のルールにはそんな事書いてなかったぜ~~」
そこに
「なんで皆、司令室で野球してるの?」
もっともな疑問である。
「いや、そりゃ暇だからな……」
「中々いい運動になるぞ」
所長も参加していた。
副長は……というと、上部の階層に居り、一人で一手一手立ち位置を変えながら囲碁らしきものをやっていた。
よく見ると時折碁石と将棋の駒が混ざっている。
「副長は暇だから将棋と囲碁を戦わせているんだってさ」
「ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「あ、フリーズした」
イライラを募らせた
「……」
そして、無言で壁に張り紙をしてすぐに出ていった。
『司令室で野球、テーブルゲームをしてはいけません by冥』
そこにまた新しい人が入ってきた。
「なんだ、随分静かだな」
紺色のスーツを着たキッチリした男。
その姿は見覚えのあるものだった。
「あっ、
ジェットスターのハイジャック事件の時に一緒に活躍してくれた内務省直属警察の人だ。
「もしかしてここも監査対象に……?」
慌てて
「いやいや違う違う、今日から君達の仲間になるのさ」
「本当~?」
内務省直属警察……スパイということで
「いやいや、彼が言ってることは真実だ。思わずティンと来たんでな、引き抜きってわけだ。本日付で彼はエデン札幌支部の保安部所属だよ」
所長が野球グローブを外しながら言った。
「よろしくな」
――こんなバカな組織なら一回真面目に監査されて処罰されてくれ。
青空のもと、銀色にそびえ立つ鉄塔。
無数の電線が架かる。
道路標識。
割れた道路、廃棄された線路と朽ちた鉱車。
周囲に広がる東丘炭鉱住宅街。
歯車や蒸気機関に溢れ、札幌とは違った街並み。
オセアニア戦役による石油の価格上昇により石炭の需要が上がり、五大都市開発によるエネルギー問題も生じ、急ピッチな開発が進められた。
その炭鉱都市の中から、水泡が勢いよく上空へと飛び出す。
空中で水飛沫とともに弾け、水泡に包まれていたカプセルも割れて消えていく。
カプセルの中からはスタービジョンの
一人、重力に身を任せた
「ナイスキャッチ! やーりぃ!」
数分前に炭鉱での事故の予知をソロモンⅢは確認。
予知の時間までは猶予がなく、長距離
不機嫌そうな
「……」
本来は連れていく予定などなかったものの、どうしても行くという一点張りで聞く耳を持たなかった。
「
心配そうに優しく声をかける。
「なんでもない。それより予知の場所は!?」
彼は
「……バイタルデータを見たら明らかに無茶だ」
右上に表示されているデジタル時計が目に入った。
「あぁ、時間がない、
「うるさい、黙れ! 私はァ!」
慌てて走り出す
しかし、彼では追いつけない。
「
しかし、道路封鎖をしている警察官に止められた。
「ここから先は通行規制がかかっている。大人しくかえんな、小僧」
「通してくれ! 通行止めでギネス挑戦してる場合じゃないんだ!」
それでも
そこへ
「ごめんね~、ほら、ボク、帰るよ!」
姉のフリをして警察に会釈をしながら走り去る。
死角にたどり着くと、すぐに
「どうして戻ってきたんだ」
「いや~~~、どうも
「ステラっちが先行してるから、とりあえずは大丈夫っしょ!」
「あの道路封鎖を見るに炭鉱事故はもう発生しているかもしれん、炭塵爆発? ガス漏れ? それとも落盤か……見極めなければ!」
目的の入り口へとたどり着いた。
ホイールローダーやモータースクレーパー、ダンプトラックやモーターグレーダーなどの作業用重機がいたるところにある。
周囲にはボタ山が点在していた。
要所要所に鉱山鉄道用の路線が敷かれており、そこに隣接するようにホッパーと呼ばれる貯炭槽があった。
ステラは待機していたが、
「あのバカ……!」
「ステラは意外とお利口なんだな」
そう言ってステラを撫でる。
「でへへ~。命令されてないから駄目かなって!」
「よし、スタービジョン、
「イエス・サー!」
「らじゃ!」
そして、胸ポケットから小型の何かを取り出した。
「行け、メカビートル2号!」
カサカサと銀色の何かが
「いやあああああああああっ!」
時速30kmはあるであろうそれの動きとフォルムは、本州で皆から嫌われているあの害虫そっくりだった。
「カミキリムシ型の偵察機さ。カミキリムシのように、口部の圧縮空気カッターを使って扉をこじ開ける機能もあるぞ」
「どう見てもメタリック・アレだけど。あの……ゴッキーは
「だからカミキリムシだっつーの!」
「頼んだぞ、メカビ」
「メタリック・アレ!」
「その名前で呼ぶな!」
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