第4話-1 新たなる少女
いつもの通学路。
いつものように遅刻ギリギリを争い、走っていく。
「今日は転校生が来るんだって!」
「こんな時期に転校生なんて珍しいね、どんな人かな」
「私達だってその珍しい転校生でしょ?」
「それはそうだけど……」
すると角の向こう側から、ホバーボードに乗って食パンを咥えた茶髪の女の子が飛び出してきた。
「どいてどいてーーーっ!」
不可避の衝突。
お互いに頭を激しく打ち、その場に尻餅をついた。
地面に落ちた食パンは、スズメについばまれている。
「いてて……危ないじゃないか、こんな場所でホバーボードなんて」
すると黒い布地が見えた。
「黒……?」
思わず
その少女をよく見ると、整った顔立ち。
ウェーブのかかったロングの茶髪。
着崩された制服からも明らかなほど胸が大きく、太ももも魅力的だった。
目を開いた彼女の瞳は青い宝石のよう。
そして、その目と同じ色合いの宝石を首から下げている。
「あ、今、見てたっしょ……えっち!」
少女は顔を赤く染めながらスカートを抑えた。
「あっ、チョーやばい! 先急いでるから、またねーっ!」
そして、彼女はホバーボードに乗り、トラックの荷台に掴まって去っていった。
「……」
「いや、これは事故で」
そんな弁明も途中で途切れた。
「変態、ド変態、Der変態!」
電撃三連発と
担任の女性教師の大きな声が教室に響く。
「喜べ男子共~~~っ、今日は転校生を紹介する!!」
入ってきたのは朝衝突したあの少女だった。
チョークを使い、電子黒板に名前を書いていく。
「ち~~~っす、あーしは
独特な挨拶をすると、
「あーっ、さっきのパンツ見てた人!」
そして、突然指を差して叫んだ。
クラス中の視線が
「待って、それは誤解で、事故で、その……」
男子生徒達が
「聞き捨てならんぞ!」
「これより異端審問を開始する。被告人、罪状はパンツ覗き」
「有罪、死刑に処すべし」
「おい! 何色だったか言え!」
突然始まる馬鹿騒ぎ、
「
「フン、女の子の下着を見るのはそれくらいの罰が相応しいわよ」
授業が終わり、喫茶店アルカディアへ真っ直ぐ向かう。
電車に乗って一時間ほど。
「ねえねえ、今度勉強教えてよ、あーしあんまり勉強できなくてさー!」
そして、同じ場所で立ち止まり、同じ喫茶店へと入っていった。
「なんでアンタがここに居るわけ?」
その答えは副長が言った。
「彼女は種子島支部から移送されてきたダブルのSクラス
「あっ、マネジ!」
エデン本部の司令室。
基本的には同じデザインだが、胸元のリボンの色は
彼女は胸元を開くように着崩しており、周りの男性職員が顔を赤らめている。
「あの、この制服さ、別に……デザインはいいんだけど……もうちょっとスカート丈短くできない?」
「さっきからハサミの刃が通らないんだよー」
「防刃素材だから当たり前よ。貸して、もう少し上で止めればいいのよ」
「ありがとーっ、サンキュー、チョー助かるー」
黒い下着が見えるくらいまで上げた彼女は、
その様子を
「あっ、そこのボク、今見てたでしょ。朝もそうだし、結構見かけによらずムッツリちゃんなんだね! ま、見られても困らないし見てもいいけど?」
日が沈むとバータイムが始まり、店の雰囲気がガラッと変わる。
先程まで働いていた
店長はハチマキを巻き、青い法被を着て寿司を握っていた。
「店長、ビンチョウマグロと炙りサーモン、カンパチ、ホタテとエンガワと赤貝もお願い」
「あと、ハンバーグ寿司とカルビ寿司ってありますかね……」
その不安げな
「あるぞ」
先程まで言っていた注文全てが寿司下駄に乗った状態で提供された。
「店長……あのさ、
そのストレートな疑問に店長は言葉を詰まらせる。
「ち……いや、まあ半分それは合ってると思うが、本人の前で言うなよ」
「どうして?」
「いや……どうしてって言われてもなあ。ただ、あの子はあの子なりに事情を抱えているんだよ」
その釈然としない回答に
「まだ話すわけにはいかん。時期が来たら知るだろうし、知らないほうが幸せってものもあるだろうよ」
「そんなものかなぁ」
「やっぱりハンバーグ寿司が一番美味しいね! 店長、ドクターペパーお願い」
「頼むから寿司屋でそれ言うなよ。ドクターペパー了解、あいよ!」
そうして二人が話していると、後ろから迫りくる影が。
「うぇーーいっ!」
その勢いで思わずむせる。
「な、なにするんだ……げほっ」
「メンゴメンゴ~。いやー、やっと荷物を運び終わったからね!」
今の彼女の姿は黒いボディコンにアウターを腰で巻くスタイルだ。
下はホットパンツにルーズソックス、そして蛍光色のスニーカー。
昼間はあまり注視していなかったが、ボディコンであるが故にモデル顔負けの美しいラインがくっきりと出ている。
「なんか、すごい格好だね……」
そう言う
生真面目でキッチリした服装の
「でしょ~?」
「んと、あーしがここに来たのはそういうんじゃなくって……。明日は二時限で終わりだし、放課後に遊びに行こって誘いに来たの! 同じチームなんだし、親睦は深めたほうが良いって言うじゃない!」
しかし、
「遊びに行くったって、僕はそういうのよくわからないよ」
不安がる
「へーきへーき! あーしは色々知ってるよ、カラオケとかショッピングとかボウリングとか!」
背中を何度も叩く
「店長……喫茶店の都合は?」
店長はニヤリとして言った。
「大丈夫だ、
それで行くことに決まった。
「にははー、ダブルデートって奴だね! いや、チョット違ったかな?」
そして、手を広げて走りながらバックヤードへと向かう。
「んじゃ、明日はよろしくねーーーーーー! あ、制服のままで来るなよ?」
顔を半分だけ出して
「……あの子も僕達と一緒に暮らすことに?」
その問いに、所長は白い歯を輝かせて答えた。
「当然だ」
――
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