シークエンス7 強制連行

遠くの方で鐘の音が聞こえる。

つまり朝だ。まごうことなき朝だ。


ユール「…………はぁ~あ……」


寝苦しいと思ったら何故かイリアがオレの布団で寝ていた。

ベッドから出るかどうか迷い、とりあえず出る。


適当に朝食を作り、今日の予定をどうしようかと考える。

トーストにサニーサイドアップを乗せてかじると同時にノックの音がした。


ルキス「よう」


扉を開けると、ルキスがたっていた。


ユール「おう、早いな」


ルキス「いやいや、いっつもこんなもんだけどな……」


ルキス「お前、今日学校行く気は?」


ユール「ない」


ルキス「断言とはさすがだな……」


ルキス「ま、それならいいんだ。

な~んか今日、女王様がお昼の挨拶めぐりだとよ」


ユール「あ、そうか。寝る」


ルキス「おいおい……」


ルキス「ま、伝えたぜ~」


ユール「ん?何処行くんだよ?」


ルキス「魔法の自主練だよ。お前と違って鈍るからな」


ユール「あ~なるほどね」


ルキス「じゃな」


ユール「おう」


ルキスが何処かに行ったので、オレは朝食を再開する。

まあ、パン一枚だからすぐに食べ終わり、やることがなくなる。

…………適当に昼飯を探しに行くか。

狩猟用ナイフを腰にさし、いつもの道へ向かう。



………………………

………………

………



ユール「う~~ん…………」


ナイフだとウサギが限界だった。

籠に3羽のウサギの肉を入れ帰ってきた。

ま、食べるものがないよりましでしょ。


とりあえず、ウサギ肉のソテーでも作ろうかとフライパンを暖め始めた。



………………………

………………

………


イリア「ふわぁ~~~~~~………おはよーゆーるー…………」


ユール「おう、おはよう」


イリア「何かお肉の匂いするけど、どったのさ~?」


ユール「狩猟行ってきた」


イリア「えっ…………?

…………魔法は?」


ユール「使えるわけねーよ。

ナイフで採ってきた。ウサギの肉だ。」


イリア「だ、だよね~……びっくりした」


ユール「……自分でも分かってるつもりなんだけど?」


イリア「それでもだよ!」


イリア「まったく……ほら!さっさとご飯作る!!」


ユール「へーへー……」


まあ、もうほとんど出来てるんですがね。


ユール「とりあえず、皿並べて待って……あ、いや、顔洗って来い」


イリア「おお!ほいほ~い」


オレは皿を出し、二人分のソテーを乗っける。

鍋からご飯を取り出し、茶碗に盛る。


イリア「おお~!うまそー!!」


イリアが帰ってきて、喚起の声を上げる。


ユール「まあ、昼には早いけど食うか」


イリア「そうこなくっちゃ!!」



………………………

………………

………



飯も食い終わり、イリアに後片付けを任せてオレは寝転んでぼんやりとしていた。


イリア「ゆ~る~、終わったよ~」


ユール「おー、サンキュー」


イリア「いや~……生きてるってすばらしいね~」


ユール「……適当なこと言ってないで、お茶持ってきてくれよ」


イリア「へーへー。まったくぅ~……人使いが荒いですなぁ」


ユール「お前が言うな」


なんてやり取りをしていると、玄関の扉が激しくたたかれる。


ユール「………ん?」


イリア「誰だろ?」


ユール「さあ……なぁ?(確認を取るように語尾を上げる)」


イリア「ほいほい(にやりと邪悪な笑みを浮かべる感じで)」


オレが差し出す手をイリアが握る。


……1

…………2

………………3


約三秒程度で、握った手を離した。

ナイフを懐に忍ばせる。


ユール「はいはい、今あけますって」


イリアが物陰に隠れるのを見計らって、扉を開ける。


ユミナ「あなたが、〝ユール・コグル〟ね!?

今、この国は戦争をしているのよ!何で授業をサボっていられるの!?

学校に復帰しなさい!!」


ユール「…………え?」


扉を開けた瞬間に、マシンガントークで説教された。

まったく思考がついていけず、数秒遅れて疑問詞をかえす。

物陰のイリアも予想外だったのか、動く気配はない。


ユミナ「あなたは昨日の――」


ユール「お前は昨日の――」


ユール「オレを無罪なのに引っ叩いた女!!」

ユミナ「幼女恋愛対象者ロリコン!!」


ユール「ちげぇ!!!」


ユール「つーか、何の用だ?」


ユミナ「さっき言ったでしょ!!

学校に来なさい!」


ユール「ああ、なるほど。断る」


ユミナ「何で?」


ユール「オレは魔法を使えない」


ユミナ「だったら剣の訓練でもしなさいよ」


ユール「いまさらか?」


ユミナ「盾ぐらいにはなれるでしょ?」


ユール「いやいや、死にたくないっつーの」


ユミナ「国のために死ねるのよ!?名誉あることじゃないの!」


ユール「はいはい、そんなアブナイ宗教は他所でやってくれ」


ユミナ「あんたね…………!

……まあいいわ。今日は学校はもうすぐ終わりだから」


ユール「なら行かなくても良いじゃん」


ユミナ「ええ。でも、午後から女王様のご挨拶があるからそれには来なさい」


ユール「え゛!?」


ユミナ「女王様は王子様とご結婚なされたところで大変なのに、挨拶をされるのよ!?行かないといけないに決まってるわ!」


ユール「嫌だ……」


ユミナ「は?」


ユール「絶対に嫌だ!!」


ユミナ「何言ってるの!!これは国民の義務よ!!」


ユール「それでも嫌だ!!頼む!!この際学び舎も毎日サボらず行くからそれだけは勘弁してくれ!!!」


ユミナ「ダメに決まってるでしょ!!そもそも学び舎は行って当たり前の場所なんだから!!」


ユール「いやマジムリだって!!あいつだろ!?女王ってあいつだろ!?」


ユミナ「女王様に向かってあいつとか言わないの!!懲罰物よ!!」


ユミナ「ほら行くわよ!!」


ユール「いや、ちょっと!?」


ユール「頼むからやめてえええええええええええええ!!!」



………………


イリア「う~~~ん…………」


イリア「これってもしかして面白そうなことが起こるかも……?」



………………………

………………

………



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