シークエンス4 ロリコンのお兄ちゃん

ニーナ「わぁぁ~~」


料理を見た瞬間目を輝かせるニーナ。


ユール「珍しい?」


ニーナ「あ、いえ……

久しぶりのちゃんとしたご飯なので、ちょっと……」


ユール「ああ、なるほど……

本当に過酷だったみたいだね……」


イリア「でも二人とも無事だったんでしょ?

良かったじゃん!!」


ニーナ「です!」


ユール「じゃ、まあどうぞ。

味は保障できないけどね」


イリア「いっただっきま~す!!」


ユール「……お前はマジで遠慮と言う言葉を知ってくれ」


ニーナ「えっと……じゃ、じゃあ……

いただきます」


ユール「ほいほい、召し上がれ」


イリア「む~……

ニーナちゃんには優しいね……」


ニーナ「ふぇ?」


ユール「そりゃそうだ。

こんな礼儀正しくていい子なんだ。

優しくするのは当たり前だろ」


ニーナ「え、えっと……

私は……」


ユール「ああ、うん、このバカは気にしなくて良いよ?

ニーナはニーナのままでいれば良いさ」


イリア「うぅ~

良かったねニーナちゃん~」


ニーナ「え、な、何がです?」


イリア「ユールがロリコンで」


ユール「ちょっと待て!?」


ニーナ「ろりこん?」


イリア「女の子に対して優しい人の事だよ」


ニーナ「ほえ~」


ユール「いやいやいや!事実の中に嘘を――――!?」


急に声が出なくなる。

イリアをみると足元に魔法陣!!

あいつ、残りの魔力で沈黙させる魔法でも使いやがったな!!


イリア「さ、せっかくユールが作ってくれたご飯が冷めちゃうよ~

食べようよ~」


ニーナ「あ、はい~」


ユール「――――――!(って言うか魔法解けよ!)」


と、口パクをしてみたものの、ニーナは気がついてくれず、イリアはニヤニヤするだけ。

魔法が解けたのはイリアの魔力が切れた食事終了直前だった。



………………………

………………

………



イリア「出たよ~」


ニーナ「上がりました~」


ユール「お~う」


食器を洗っているオレの後ろから声がかかる。

イリアとニーナが風呂から出たようだ。


ニーナ「あ、手伝いましょうか?」


ユール「ん、じゃあ拭いていってくれる?」


顎で洗い終えた食器を指す。


ニーナ「わかりました~」


ユール「タオルはそこの引き出しに入ってるから」


ニーナ「はい」


タオルを出してせっせと食器を拭いてくれるニーナ。

それに比べて…………


イリア「ゆ~る~……

超ひま~……」


幼馴染はだらけきっていた。


ユール「あ~あ~うるせー……

お前も手伝え」


イリア「ダルイ~」


とりあえずあいつは無視。

もうそれが一番。


ニーナ「仲、良いんですね」


ユール「ん?

まあ、付き合い長いからなぁ~」


ニーナ「本音で語らえるってすごくいいと思います。」


ユール「まあ気持ちは楽だけどね……

時々ウザくなるよ?」


ニーナ「でも、それってほんの少しの間じゃないですか?」


ユール「ま、そだね」


ニーナ「私にもいたんですけどね……」


ユール「ん?」


ニーナ「心から話せる友人が」


ユール「…………そっか」


『けど』ね……

こいつもやっぱり戦争に嫌な思いさせられてるんだろうな……


ユール「ニーナ」


ニーナ「はい?」


ユール「お前、この戦争どう思う?」


ニーナ「…………えっと……」


答えにくいわな……

戦争反対なんて言ったら、大抵の人は激怒するだろう。

だったら……


ユール「オレは反対だね」


ニーナ「え?」


先にオレの事を言うのが良いな。


ユール「世間は国のため国のためと囃し立てる……

でも、オレはこの戦争で家族を失った。

自分の大切な人を失ってなお、その元凶に加担したいか……

オレはイヤだね。」


ユール「で、お前は?」


ニーナ「私も……」


ニーナ「そうですね。私も反対です。

私も友達が戦争に出されてそのまま行方不明になって……」


ユール「え?友達って……歳近くないの?」


ニーナ「あ、いえ、同い年でしたよ?

ただ、異能型魔導師だったので……」


ユール「……なるほどね……」


それで小さい子供を戦争に……ね……。


ユール「ま、何はともあれ」


ニーナ「?」


ユール「一応お互い本音で喋れたんだし、少しは距離縮まったかな?」


ニーナ「あ……」


ユール「さ、もう遅いし寝るか。

あのアホは既に寝てるけど……」


イリアは洗濯物を抱き枕にして寝てやがる。

パジャマ姿になってるところから、既に泊まるの前提だったのだろう。

……ってか、いつの間にかオレの家にイリアの服のタンスが置いてあるなぁ……

恐るべき幼馴染パワー


ユール「ニーナ、イリアと一緒の部屋で良いか?」


ニーナ「あ、はい、大丈夫です」


ユール「んじゃ、上な。

よいしょっと……」


イリアを持ち上げる


イリア「ふにょぐっ……」


お姫様抱っこ首の支えなしバージョン。


ユール「こっちな」


イリアを抱えて階段をあがっていく。

そしてイリアが泊まりに来たときに貸している部屋のベッドにイリアを寝かせる。


ユール「すまんが布団がこれしかないから、イリアと一緒に寝てくれ」


ニーナ「はい、ありがとうございます」


ユール「んじゃ、お休み」


ニーナ「おやすみなさい~」


オレは扉を閉めて伸びをする。

さてと……オレも寝ますか……

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