シークエンス3 ニーナ
イリア「うん、呼吸も安定してきたし、これで大丈夫かな?」
イリアが女の子の布団を直しながら言う。
ユール「ならよかった。
じゃあオレ、市場に行って来るぞ?」
イリア「ほいほ~い」
オレは果物の入った籠を担いで市場に向かう。
イリアはあの子についている。
ユール「おっちゃん、何か晩飯っぽいのない?」
いつも世話になっているおっちゃんに言う。
おっちゃん「おお、ユールの坊主!
なんでぇ、晩飯っぽいものってのは?」
ユール「何か適当に」
おっちゃん「んじゃ、採り立ての魚が入ってるぜ?どうする?」
ユール「じゃ、それ三匹
後、野菜とジャガイモを適用に」
おっちゃん「ほいほい、まいど~
代金はそれか?」
おっちゃんがオレが背負ってる籠を指差す。
ユール「足りる?」
おっちゃん「ま、まけてやるさ!ほれ、持ってきな!!」
ユール「あんがと」
おっちゃんに適当に晩飯の材料を木の実と交換してもらい、それを木の実が入っていた籠に入れてオレは家に帰る。
ユール「ただいま~」
時間にして大体30分強。
オレの家から市場って若干遠いんだよな~
家に入って鍵を閉め、台所に荷物を置いて、イリアと女の子がいる部屋に入る。
イリア「あ、お帰り~」
ユール「おう。
様子はどう?」
イリア「ん、顔色もだいぶよくなってきたし、そのうち目を覚ますでしょ」
ユール「そう。
あ、今日、アレだけで足りたから」
イリア「お、マジで?ラッキー」
足りたってのは晩御飯代のことね。
ユール「んじゃ、適当に料理してくるよ。」
イリア「ほーい。」
オレはそういって台所に向かった。
………………………
………………
………
包丁で野菜を刻んでいると、鐘の音が聞こえてきた。
この時間帯は授業の終了の合図。
空はうっすらオレンジ色が混ざってきた。
窓から外を見ると、市場の方面から人がちらちら家にもどっていく。
今の人たちは既に自分の商品が売り切れた人たちだろう。
大体の人は、今の鐘の音で片づけを始める。
もうそんな時間か……
帰ってから既に3時間は経過してる。
イリア「ユ~ル、お水頂戴~」
後ろからイリアが声をかけてくる。
ユール「ん、適当にもってけ」
食器を置いてある場所を顎で指す。
イリア「へ~い」
イリアはそこからコップを二つとり、飲み水を汲む。
ユール「ん?あの子、起きたのか?」
イリア「ん~ん。
でも、起きたら喉も渇いてるかもでしょ?」
ユール「ま、そだな」
パタパタと階段を上がって行くイリア。
料理に戻ろうとすると、コンコンと流し台の前の窓がたたかれる。
外を見ると、ルキスが手を挙げたのが見えた。
ルキス「うい~す」
とりあえず部屋に通す。
ユール「どうした?
藪から棒に」
ルキス「いんにゃ。
特に特別な用はないけど、暇だからよってみた。」
ユール「あ、そう」
ルキスは椅子に座る。
オレは料理に戻った。
ユール「んで?
特別な用はないってことは、普通の用ならあるって感じ?」
ルキス「ま、そんなところかねぇ」
ユール「何か面白い事でもあったんか?」
ルキス「いや、な~んかな。」
ルキス「今朝……ってもかなり早朝らしい。
まだ日が昇ってないうちに、
前に全滅したと騒がれていた偵察舞台の生き残りが帰ってきたらしい。
学校じゃ朝からそれで大騒ぎだぜ。」
ユール「ふ~ん」
ルキス「相変わらず興味なさそうだな」
ユール「まあね」
ルキス「んで、驚いた事によ。
そいつ、オレたちと同年齢らしい」
ユール「……マジで?」
ルキス「マジで。
よくまあ、本軍に入れたよな~」
ユール「……実力隠してテストでど真ん中のお前が言うなよ」
ルキス「おいおい……異能型の癖に魔法使えませんって顔してるお前に言われたくねーよ」
ユール「まあ、そりゃそうだ」
ルキス「ま、さすがにボロボロだったらしく、介護藩に保護されながら提出用のレポートまとめてたらしい。」
ルキス「明日にゃ軍賞の授与式でもあるんじゃねーの?」
ユール「……何処でそれやるんだ?」
ルキス「さあな……
まあ、広場じゃなね?」
ユール「オッケー。
明日、絶対城付近に近づかねえ」
ルキス「お前、いっつも近づいてねーじゃん」
ユール「細心の注意を払って近づかねえ」
ルキス「細心の注意も何も、ここからじゃ1時間くらいかかるだろ」
ルキス「まあ、お前の場合、義姉(あねき)の事だろうけどな~」
ユール「………分かってんじゃねーか」
ルキス「ま、な。
お、フライドポテトじゃねーか。
いっただき~」
ユール「つまみ食いすな!」
ルキス「硬い事言うなよ。
ってか、何か晩飯3人分くらい用意してないか、お前」
ユール「ん~~……
ちといろいろあってな。
女の子拾った」
ルキス「……拾った?
誘拐?」
ユール「ちげえ!
道端に倒れてたんだよ」
ルキス「ふ~ん……
ん?」
ユール「どうした?」
ルキス「いや、さっき言ってた奴なんだけどよ……」
ユール「帰ってきた偵察兵?」
ルキス「そそ。
何か、この国に小さい女の子が逃げてこなかったかとか
聞いてるらしいぜ」
ユール「んじゃまあ、あの子かな。
明日の授与式の後に会いに行ってみよう」
ルキス「……お前はどれだけ……
いやまあ、うん。
気持ちは分かるけど……」
ユール「なら言うなよ」
ルキス「……アレも義姉(あね)の愛情表現だろ?」
ユール「どうだか」
ルキス「ま、いいや。
オレは帰るわ~」
ユール「おーう……って、ポテト全部持ってかえんじゃねーよ!」
ルキス「ケチケチすんなよ、情報料だって。
今揚げてる分でも十分量あんだろ~」
ユール「……ったく……」
元気よく扉を閉めて帰っていくルキス。
まああいつの言うとおり、ポテトはまだ量あるんだけどね。
………………………
………………
………
料理が完成して、テーブルに並べている最中に上から声が聞こえた。
イリア「ゆーるー。
あの子、起きたよ~」
ユール「お、マジか」
とりあえず並べる作業を中断してオレは上にあがる。
部屋に入ると、女の子はちょうど水を飲んでいるところだった。
女の子「えっと……その……どうも……」
ユール「ん?ああ」
イリア「あの人がユール。
ここの家の持ち主さんだよ~」
ユール「ユール・コグル、よろしく」
ニーナ「に、ニーナです。
はじめまして……」
ユール「はじめまして。
で、ニーナ……でいいのかな?
ちょっと聞きたい事があるんだけど。」
ニーナ「え?あ、はい……」
ユール「もしかして、うちの国の兵と一緒に……ではないか。
うちの国の兵と途中まで一緒にここに来てた……とかそういう感じ?」
ニーナ「な、何で知ってるんですか!?」
ユール「いや、その兵隊がニーナのような子を探してるって言ってたらしいから」
ニーナ「!
お姉ちゃん……良かった……」
ユール「まあそれなら……
とりあえず飯でも食って、明日の昼にでも連れてってやるよ。」
ニーナ「本当ですか!?
ありがとうございます!!」
ユール「じゃ、飯……
食える?」
ニーナ「あ、はい、大丈夫です……
でも、悪いです……」
ユール「もう三人分作っちまったから、食ってくれないと困るんだけどな~……」
イリア「こいつに遠慮なんてしちゃだめだよー」
ユール「お前は少し遠慮してくれ。
ってわけで、まあ、食ってくれないか?」
ニーナ「え……あ、じゃあ……
いただきます。」
ユール「ほいほい。
じゃあ下だから。」
イリア「ほら、ニーナちゃんも」
ニーナ「え、あ、は、はい!」
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