第49章| トモコとのファミレスディナー <4>神秘のハーブ? その3

<4>



「・・・・・・・・・って、感じなワケよ」



オンラインミーティングが終わって、パソコンの電源を切りながらトモコが言った。



イヤホンを外してお水を飲んだ。

「なんか、わかったような、わからないような話だったね・・・・・・」



最後に見せられたギラギラの写真のせいだろうか。

それとも結構長かったオンラインシェア会を見た疲れのせいだろうか。


頭の中がボーッとしていた。



「そうだ。この前渡したサンプル、飲んでみてどうだった? 味はすごく飲みやすいでしょ? 体重、減った?? 」


「あっ・・・・・・うん。臭みがなくて飲みやすいよね。体重は減ったよ、0.5kgだけ」



確かに生活を変えていないわりに、体重は減っていた。

でも浮腫むくみなどでも多少は体重が増減することを考えると、少しインパクトに欠ける数字と言えなくもない。



「あのさ。里菜、一緒にやらない? ハーブを広める活動」


「えっ・・・・・・・・・うーん・・・・・・・・・」


さっき見たシェア会の流れから、なんとなくそう言われるような気はしていた。

だけど、教育制度が充実しているとしても、私にハーブの販売なんかできるとは思えない。


それにどうしてあんなに魔法のように体重が減るのか、少し気になる感じもあった。


答えに困って黙っていると、トモコがたたみかけてきた。



「時代は副業ブームなんだよぉ。スキマ時間に働いて、上手くいけば儲かる。イマドキ収入の柱が一本しかないのって、逆に心配じゃない? 」


「それは、私があの司会の人みたいにテキパキ仕事ができそうだったら上手くやれるかもしれないけど・・・・・・。しかもうちの会社って、そもそも副業していいのかな? 聞いたことないから・・・・・・」


「そうか~。じゃあさ、あたしからハーブ買わない? せっかく鈴木先生からも好感触の応援メールが来てるわけだし、里菜、ダイエットしたいって言ってたでしょ? 」


「興味はあるんだけど・・・・・・、さっきのシェア会、お値段の話は一度も出てこなかったよね? そのハーブ、実際おいくらなの? 」



そのあとトモコが教えてくれた値段は、私にとっては目玉が飛び出るほど高かった。

普通のサプリメントの10倍以上はすると思う。



「ちょっ・・・・・・そ、それは無理だよ! そんなお金ないよ」


「そう? 実は今言ったの、いちばん安いプランなんだけどなぁ」


「トモコ~、ほんとゴメン。今月は買いたい物があるから」


「買いたいもの? 」


「うん・・・・・・・・・。可愛い下着」


この前、脱衣所で見た自分のヨレヨレのブラトップと、色気のないパンツを思い出す。あんな下着しか持っていない状態では、装備が不十分すぎてうっかりワンナイトラブもできやしない。



「それ、今は買うのやめたほうがいいって」

トモコがさらに押してくる。

「だってこのハーブ飲んだら、痩せるしバストアップするんだよ? 先に下着を買ってもサイズが変わっちゃうじゃん!! それならハーブをまず買って飲んだほうがいいよ」



「うっ・・・・・・。そう言われると・・・・・・」



「それにね。このハーブ飲むと代謝が上がるのか、とにかくすっごくドキドキして汗をかくの。あたしなんか病棟で働いて動き回ってると、午前中だけで下着がビショビショになるくらい。だからむしろしばらくは、おろしたての新しい下着より、イイ感じにヘタった脱ぎ着しやすい下着をつけてるほうが便利だよ?

金額がネックなら、里菜には特別に最初の3ヶ月、あたしが新規会員向け割引キャンペーンでまとめ買いしたやつを小分けにして、上乗せ利益いっさいナシで譲ってあげる! それで気に入ったら継続して飲めば良いよ。どうだ最安値ッ! 一緒に神秘のハーブ飲んで、カッコイイ彼氏作ろう。ね? 」



「うっ・・・・・・うっ・・・・・・う・・・・・・ん・・・・・・」




――――――――結局、トモコの押しに負けてしまって、私はトモコからハーブを買って飲むことになった。


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