第31章|井場本啓太の別宅 <1>ハーブティー

<1>


 いつものように全身マッサージをやったあと、柳原舞歌がハーブティーを盆に載せて持ってきた。


「啓太さん。はい、どうぞ」


2時間たっぷりと俺の身体を揉みほぐした後だが、舞歌は笑顔を絶やさない。

姿勢にも乱れがない。プロ意識の高い女だ。



「おう、ほなもらっとくか」


ティーカップに入れられた、ぬるめの茶を一気に飲み干す。実は俺はこの、ハーブティーという飲み物があまり好きではない。味も大してうまくないし、せっかく何か飲むなら綺麗な女と高い酒を飲んで周囲の羨望の目線を楽しみたいほうだ。しかし、舞歌は俺が大量に酒を飲むのを見ていい顔をしない。『男のひとはお付き合いもおありでしょうから、お酒を飲むなとは言いません、でもせめてマッサージで代謝があがった後くらいは、この有機ハーブティーをお飲みになって下さいね』と言われるので、マッサージの後は、毎度コレを飲んでやっている。



舞歌のマッサージは本当に質が良い。

これまでに腕がいいと評判の整体や高級ホテルのマッサージを色々と試しても完全には取れなかった全身のコリと疲労が、舞歌に定期的にマッサージさせるようになってからは無くなった。


血流が良くなり少し火照った裸の身体を革のソファの上に投げ出すと、ひやりと冷たく気分が良い。この女に買ってやったマンションの一室が、最近は入り浸りすぎてすっかり俺の家のようになってしまっている。


舞歌は俺が先ほどまでうつ伏せに寝ていたベッドの上を軽く整えると、俺の足元に座り、膝上に手を載せてきた。

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