第九話 コミュ力アップ
ピッピッピと笛の音が耳に入ってくる。俺は保健室にいた。
先週の金曜日、俺は
外を見るともう夜になっていた。事情を聞くと……。
『あなた能力を使いすぎて、
『あの……他の人は?』
『三つ子ちゃん達は先に帰ったわ。新井島君は起きるとすぐに出ていっちゃたのよね〜』
『新井島の名前を知ってるんですか?』
『職員の間じゃ、いや
『はあ』
彼女は
保健の先生で「どんな傷でも治す」能力を使えるベーシック。
本来こんな学校にいるべきではないが、仕事が面倒くさそうだから比較的楽そうな保健の先生にしたらしい。
それ以外にも理由がありそうだが……。
『そんなことよりもう夜だし帰ったら?あ、私と熱い夜を過ごしたいなら別だけどー……』
『結構です』
俺はその時自分の荷物を持とうとした。すると左肩に激痛が走る。
『ああ
『それって本末転倒じゃ……』
『治ったからいいでしょ。お大事に』
その後俺は保健室を出て、家に帰るのであった。現在もなお痛みは引いていない。
それでも今日は良かったなと思う。なぜなら体育があったからだ。
外の様子を見てみよう。
「嫌……やめて……」「走れ」「嫌……」「走るか更に走るか……どっちがいい?」
「嫌ーーーーー!」
「ゲレロロロロ……」「大丈夫か!!
「くっ、クソーー!!!」
「………………」「………………きついねー……」
ご覧の有様である。体育の先生はうちの担任
でも現実はこうだ。初日から体操といい、校庭一〇周させてきたり、腕立て百回とか普通にあった。
それから体育の授業はいつしかこう呼ばれるようになった。
「
安直だが実際そうなのだ。正しく地獄の時間。
この時間が来るのを恐れ当日休む人間もいる。仮病を使い、保健室に来るものも。
まあ後で
俺は完全合法的に休めている。これほどまでに心が休まるのはないだろう。
ガララッ
保健室の扉が開く。入ってきたのは体操服の男子生徒。うちのクラスの誰かだろう。眼鏡をかけたどこか
その男子は服には砂の汚れがあり、全身をズキズキと痛がっているように見えた。
「今日はどうしたの?クラスと名前を」
「一年A組……
「何があったらそうなるの!?」
「すいません……」
「とりあえず治療するわよ、上少し脱いで」
「は、はい」
「はい、
「ありがとうござ……痛っ!」
「痛みはあるわよ。今日はもう休みなさい。このままあの教師の体育を続けたら、
「喜んで休みます」
俺は笑顔で
「えっと、ようこそ。
「え?天国?」
「天国だろ。外に比べりゃ」
「ああー……」
外の叫び声・悲鳴と言ったものが耳に入る。
あんな
神様もびっくりだろう。
「確か
「え?俺のことが分かるの?」
「一応クラス全員の名前とか趣味とか自己紹介の奴全部覚えてるから。それと噂にもなってたし……」
「チョット待って。前の方より後のほうが気になる」
クラスの全員分って、記憶力よすぎだろ!!俺なんか一つも覚えてないよ!!
聞いてないのが悪いんだけど……。そんな事より噂?噂?悪口?え?マジ?
入学してまだ三週間ぐらいだぜ。早くない!?ていうかなんで噂立ってるんだよ!?
「ちなみにどんな噂が……?ああ大丈夫大丈夫。言わなかったら吐かせるから」
「ああーそう……、ってええ!!!吐かせるって?吐かせるって?」
「いいから言え」
「ああはい。えっと
「ほんと?」
「……
「…………」
「ゴメン」
噂は別に大したこと無い。後のほうが俺的には大ダメージ。
「
「半分正解、って所かな。そっちは?」
「……さっきまで能力を使ってたんだけど、その時に能力を制御できなくて……」
「どんな能力なんだ?」
「ベーシックだよ。僕はベーシックでASRもロクに使えないんだよね」
「そう言うなって。俺もお前と同じだしな」
「ベーシックってこと?」
「量も少ねえし遠くのものも動かせない。俺はそんな感じだ」
「親近感が湧いてきたね」
「そうだなー。えっと、
「
「
俺は授業が終わるまで、
広斗は勉強が得意でこの学校の筆記試験も特待だったらしい。
能力の方も
多いほうがいいとも思ったが、多すぎるのはそれはそれで面倒なんだな。
ていうか俺のコミュ力やばくないか。俺のコミュ力はやばい!!
前までの俺とは明らかに違うぞ。
個人にビクビクする
初対面と会ってすぐ名前呼び。
これはコミュ力の悪魔と契約してしちまったな〜〜〜〜!!!!
キーンコーンカーンコーン
「もうか……じゃ、また」
「またね
授業が終わり、俺は保健室を後にする。
「失礼しましたー」
「お大事にー」
「……え?」
「委……員長」
「「「「「「「……」」」」」」」
男子の殆どがぐったりしている。
まるで死んだように眠るものまでいる(まじで死んでるかも知れないが)。
これが「地獄の時間」後の猛烈な睡魔。
大抵多くの生徒が体育の後寝るため、次の授業は自習になることが多い。
ていうか自習だ。時間割に国語(自習)って書いてあるし!学校公認の自習時間。
奈加河先生の影響力が半端ないて。
俺は自分の席に座り、殆どの人が寝てる中、本を読む。
(ったく、情けない。あの程度でこの体たらくとは)
(言ってやんなよ)
ちなみのちなみに声は健在してます。もちろんです。先週末俺は病院に行ってきた。用事はこの声について。新宮町は「街」の方が都会だ。
東京などの主要都市に次ぐ都会。国が珍しく宮町の復興に真面目に取り組んだ。
それによって最新に最新を取り入れたような「街」になった。
追加で教えておくが、新宮町は二つのフロアに分かれている。
一つ目がさっきも言った通称「街」。ビル・タワマン・ショッピングモール・駅といった生活に必要なものが揃った新宮町の心臓部。
そしてもう一つが「町」だ。何も違わねえだろと思う人がいると思うが知らん。
(町と街の違いは賑わってるか賑わってないかみたいな違いです。間違っていたら設定として飲み込んでくださいな)作者より
「町」には住宅街・学校といったものが建てられている。
新宮町のほとんどの人が「町」に住んでいても過言。
俺もちなみに「町」に住んでいる。
俺は珍しくも「街」の方の大きな病院に出かけた。
「街」には多くの人がたくさんで吐きそうになったが、なんとか頑張って病院に辿り着いた。
病院の名前は確か「新宮町総合病院」だったか、そこの精神科で診察をした。
病状を説明すると、医者は淡々とカルテを取り、薬を渡してくる。
俺の症状はストレスによるものだと結論づけられた。
ストレスにより頭の中に想像上の人物を作り出してしまったと。
能力によって治すことも出来るというが、その時に提示された値段が高すぎるため断った。ストレスを緩和する薬も高い出費だったが致し方あるまい。
俺はなんとなくこの声は薬とか能力とかでは治らないと思った。
(薬程度で我が消えるとでも?)
(あんたしぶといそうだし無理かな)
(それに我を病気扱いするとはな。礼儀がなってない)
(声に礼儀どうこうと言われても)
(はっ。それもそうか)
こんな感じで消える気は毛頭ないらしい。元気そうで何より。
女子も更衣室から帰ってきて机に横になる。教室からスヤスヤと寝息の声が聞こえる(所々いびきも聞こえるが)。
「皆寝てるね」
「……
「疲れたけど眠気は無いかな」
殆どの女子が寝てる中、
何らかの特別な力を感じる。
「授業はやっぱりきつかったのか?」
「………………ふふふ」
「へ?」
「きついよ……とんでもなくきついよ。最初の方はきついねーなんか言ってたけど最後の方は声も出なかったよ……」
「
「疲れたのに何度も能力を使わされたよ。霧智さんなんか直談判しに言ったけど「文句を言うぐらいの余裕はあるんだな」って言って他の人の倍頑張ってたし……」
「何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……」
「野見中!野見中!wait!stop!」
「ははは……」
体育の時を思い出したのか、顔から覇気が薄れていく。
そこまで今回はきつかったのか……。なおさら痛みが長引いて良かったと思ってしまう。
「あ……やっぱみんな寝てるか……」
「広斗……もういいのか?」
「うん。もう痛みも引いてきたしね」
「名前で呼んでる?」
「「まあ一応」」
「いつ仲良くなったの?」
「「ついさっき」」
「早くない!?」
俺は
他の人から見ても早いのかー……。俺死ぬのかな。
高いコミュ力を得たと同時に二日後お前は死ぬみたいな感じかな。
「僕としては二人がこの前一緒にご飯食べてたことが気になるけど」
「いや〜あれはー……」
「もしかして
「なわけないだろ」
「そ、そ、ソンナコトナイヨ」
キョドり過ぎじゃないだろうか
余計勘違いされるからやめて〜。意外にも
「あれはホント……たまたまで……」
「本当に偶然みたいだね」
「うん!!そうだよ!!あっ……」
「どうした?」
「大きい声出しすぎたかなって」
「大丈夫だろ。能力でも使われたんかぐらいに寝てるし」
事実さっきの大声でもピクリとも動かない生徒たち。今ここで起きてられるのは授業に参加してない俺と
「……もうそろ、昼だな」
「あっという間だね」
「この後このメンバーでご飯食べる?」
「「えっ」」
「?」
うん、普通にやめたほうがいい。
それ以上を求めてはいけない。
でもこれを断って
「僕はいいよ。せっかくだし一緒に食べよう」
「まあ確かにな……」
ぶっちゃけ他の生徒は全員寝ているし、誰かからとやかく言われる心配もないだろう。全部俺の考えすぎだ。
「じゃあ授業終わったらこの席で飯食うか〜」
「やったー!!」
早速チャイムが鳴り、野見中と広斗は俺の机に弁当を持ってきて飯を食べ始める。
「
「昨日の残り物だよ」
「ご飯全部手作りなのか?」
「一人暮らしだからな」
「すごいねー立派だね!」
「
「え、あ、うん!」
少し気不味そうに言う。
俺も見たことが無いような食材だから何なのか聞いてみようと思ったがそれを見てやめた。
「うっ……」
「「あ」」
ムクリと一人の男子生徒が起きる。それに続くように他の人も起き始める。
クラスの男子全員からすぐに見つかり、殺意の目を向けられる。
((((((よくも僕らの
((すいませんでした))
謎のテレパシーであいつらの考えてることが分かり、俺達は謝罪を述べる。
それでも
(その後俺達は殺意の視線を止むことなく浴びせられた)
とある教会
「司祭様、この度は私にどのような命を?」
「君には二つの試練をあげるよ。まず一つ、我々のためにあの銀行を襲ってほしい」
司祭と呼ばれるものは写真を男に見せる。
「容易いものです。さして二つ目はというのは?」
「ある学園でこの生徒を殺してくれないか?」
「この生徒を?」
「ああ、それが君への試練だ」
「この
男は何人かの人間を連れ外に出る。司祭はニヤリと笑う。まるですべてが上手くいってるかのように。
「計画はすべて始まっているんだよ。…………。」
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