フェンリルに助力を頼んだ
俺はフェンリルの前に立っている。向こうは本来の姿をしていて怒りに打ち震えている。その原因は少し前にさかのぼる。
――
「ご主人様! 何か不吉な予感がします!」
俺がポータルから出るなり走り寄ってきたフェンリルは予感がしたのだろう、不吉だと言った。
「その原因は分かっている」
「本当ですか? さすがはご主人様! 人間になっても力は衰えていませんね!」
「いや、そんなめでたい話じゃないんだ。今回は正直危険だしお前に死んで欲しくないから逃げたって文句は言わない、話は聞かない方がいいと思う。あまり聞いていて気分のよい話じゃあないからな。それでもこの状況の原因を知りたいか?」
「もちろんです! 私はご主人様といつでも共にいます! たとえどんな恐ろしい敵だろうとご主人様が死んでは私の生きる意味が無くなってしまいます!」
コイツは何処までも忠実だなあ……楽しく生きていってもらいたいという本音を伝えたところで聞かないだろう。
「悪いな……俺と死ぬような目にあってくれ」
「是非もないです! ご主人様と共に果てるのもまた私の務め!」
ああ、俺にそんな価値はないよということは簡単だが、フェンリルが絶対に言うことを聞かないだろう。
「すまない……」
「いえ、ご主人様といられるだけで幸せです、ところで何故ご主人様でさえ危ないような敵が現れたのですか?」
その質問にあのエセ神がやりやがったことをそのまま伝えてフェンリルは激怒して今に至る。
「そんなことが許されるのですか! 命に対する冒涜ですよ!」
「そうなんだよなあ……腹いせに俺を狙ったみたいだしなあ……」
「ご主人様、私は気が変わりました」
「そうか」
逃げるのもしょうがないな、神が作った化け物を相手にするなら恐ろしいのも無理はない。出来るだけ長生きしてくれよ、俺の忠実な家臣よ……
「その神とやらが作り出した存在を完膚なきまでに叩き、噛み、切り裂いてやりましょう! 神に魔族の命はおもちゃではないと思い知らせてやりましょう!」
思った方向とは違う方向に力を入れているフェンリル。正直まともに戦ってもあの勇者並みだろうしキツい相手だろうが構わないのだろうか?
「逃げてもいいんだぞ?」
「逃げる? ご主人様、冗談は言わないでください。そのような命を冒涜する存在に逃げたりしたら生涯の恥になります。私は絶対に逃げませんしご主人様と共に勝利を挙げましょう!」
フェンリルはどうやら戦うことに乗り気のようだ。出来れば逃げて欲しかったのだがしょうがないな。
「ここに俺の所に通じるポータルを開いておく。敵と戦いになったら来てくれ」
「かしこまりました、神と手許されぬ事があることを知らしめてやりましょう!」
こうして大戦の役者が一人増えた。元魔王とその配下、対するは神の恩寵を受けた化け物、たったこれだけの頭数で大戦を繰り広げることになる。俺は徐々に濃くなっていく神聖なオーラに大戦が近いことを感じ取った。
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