勧誘

 大学に入ってみたはいいが、何もすることがない。勉強はともかく。と思っていたら、構内を歩いている途中、風変わりな男に声をかけられた。

「はじめまして! 俺荒木って言います。映画サークル入りませんかっ!?」

「……映画サークル?」

「そう! 実を言えば俺は今ビジョンが湧いたんだ! 君が主人公だ!!!」

 変な人だ。俺は愛想笑いをしてそこを通り過ぎようとした。

「俺はそんな御大層な人間ではないので」

「いいや! 俺にはピンときたね! 根暗さ! そしてその無自覚の美貌! 君はどうしたって主人公にならなければ!」

「ハァ? 初対面で根暗はないでしょうが」

「いいねその暗い目! 気に入ったよ!!」

 殴ろうかな。するとその男の後ろから、量産型っぽい女子が顔を出した。

「ごめんなさい! 気を悪くしないで。この人馬鹿と天才の間の子なの。許して」

 間の子とは。俺はその男の顔をじっと見た。髪の毛はボサボサでなんの手入れもしていないような風貌だが、意外に容姿は整っている。腹立つな。

「じゃあ見学だけ」

 失礼な人だが、なんとなく撮る映画がどんな作品か気になった。映画は割と見る方なのだ。

「っしゃああ!」

 ガッツポーズを作る荒木(先輩)。

「よかったですね、監督!」

 二人でキャッキャと喜んでいる。俺は温度差に風邪ひきそうになった。

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