第33話 濃い数日間

第33話


「はぁ、歌った歌った♪」

「楽しかったな、魔王。」


久し振りに勢いよく歌えたわ………


でも、一番上手いのが童謡なのは笑ってしまった。


カントリロード、良い曲だよね、うん。


「どうだ?少し疲れは癒えたか?」

「ん、何の事だ?」


昨日はお前が料理を作ってくれたし、充分に寝られたぞ?


そういや、確か回復魔法って使われた相手の体力を使うんだっけ?


「そんな設定無ぇよ。在ったらお前は衰弱死してるわ。」

「それもそうか。じゃあ、何を見て俺が疲れてると?」

「いや、俺を含めて前世の記憶を持つ奴等の相手をしてるだろ?ほら、この数日間連続でさ。」


そう言えば、そうだったな………


確か、昨日に無為、一昨日に魔王、三日前にアリス、四日前にここあだ。


いやぁ、凄い連続で会ってるな………


しかも、その度にキスだ。


無為の時は強引だったし、魔王の時は無理矢理だった、アリスは相手から隙を突かれた上に、ここあの時は完全に事故だった。


色々と疲れるよな、精神的に………


「思い返せば、波乱万丈な数日間だったな、俺って………」

「草、って言えば良いか?」

「そっちの方が助かるわ。」


笑わねぇと、疲れるだけだしな。


「下手したら、この一週間ずっとそうなんじゃねぇか?」

「有りそうなのが困る。これ以上増えたら、負担が………」


今でも結構キツいというか、アレな気はしてるんだ。


まぁ、でも………


「増えても、お前は捨てないんだろう?」

「当たり前だろ、何バカな事言ってるんだ?お前を含めて、捨てる気も放す気も全く無ぇよ。」

「だろうな、それがお前だよ勇者。」


そんな事を言っていると………


「待って!!」

「「ん?」」


振り返ると、其処には女が立っていた。


アレだな、清楚美女って感じだな………


でも、幼い感じのツインテールが地雷臭を漂わせて台無しにしてるな………


こういうのは色んな前世で危険だと学んでるんだ、さっさと躱して………


「待ってください、先輩!!」

「先輩?誰の………」

「知り合いなの、阿澄くん?」

「さぁ、お前の方じゃね、綾子?」


全然知らない奴なんだよなぁ………


人違いだと思うのだが、この女の迫力から、そんな風には思えない。


「もしかして、忘れたんですか!?私ですよ、私!!」

「誰に言ってるかは知らんが、そう言って思い出す奴は居ねぇと思うぞ。」

「新手の詐欺かな?」


ワタシワタシ詐欺とか?


オラオラ詐欺やオレオレ詐欺の亜種かな?


まぁ、オラオラ詐欺よりは在りそうではあるな、うん。


「酷いっ!!私ですよ、綾子先輩!!」

「お前の方じゃねぇか、魔王。」

「みたいだな、やっと俺も思い出したよ、勇者………」


へぇ、そうなのか。


後、魔王人格の方が出てるぞ。


「なっ、俺!?まさか、そこの男に色々とされたんじゃ!?」

「う〜ん、半分当たってるな、うん。」

「一回だけだろ。て言うか、人聞きの悪い事を言うじゃねぇよ。」


それに、綾子の方には記憶を思い出させる切欠のキスしかしてねぇよ。


────あれ?


それを含めても、一回だけじゃん………


じゃあ、俺は無罪だな、うん。


「俺を一回で塗り潰した癖に………」

魔王綾子!?」

「ほら、やっぱり鬼畜なんだ!!」

「おい、やめろ!!ガチ目にやめろ!!!」

「いきなり私の唇を奪って………」

綾子魔王!?どっちの味方だ、お前はよぉ!!??」


遊んでるよね、俺で遊んでるよねお前!?


「綾子先輩を解放しろ!!」

「どういう意味で言ってるかは理解わからんが、嫌に決まってるだろ。」


何で魔王を渡さなきゃならんのだ………


「こうなったら………」

「なぁ、魔王?」

「何だ、勇者?」

「凄い既視感を感じるんだ。この後の展開が何となく理解わかっちまうんだ。」

「そうか、奇遇だな。」


「私が犠牲になります!奴隷でも何でもやりますから!!」

「人聞きの悪い事ばかり言うの止めろや!!!」


コイツ、俺の事を鬼畜か何かだと思ってやがるのか!!??


まぁ、魔王軍からは鬼畜勇者とか言われてた覚えあるけどさ!!


「キスが好きだぞ、コイツ。」

「魔王様!!!???」

「ありがとうございます、綾子先輩!!!」


何でお前はちょくちょく俺の敵になってるんだよ、魔王!!!


昔は敵だったけど、今は違うだろうが!!!


ていうか、何で礼を言ってるのこの娘!!??


「じゃあ、緋咲ひざき行きます!!!」


アムロか、お前は!!??


あっ、ちょ、まっ────────────


続く





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