第32話 厄災は放置に限る/誰が為の勇者

第32話


「ふぅ、スッキリした。これで義理は果たしましたよ、美奈さん。」


これで私は自由になった。


この娘、色々と煩かったですからね………


まぁ、これでも私でもありましたから。


少しはこの娘の望みに耳を傾ける事も悪くはないでしょう。


しかし、呆気なく殺したかったな。


細かく切り刻んで、痛みを与えずに少しずつ痛ぶるのは趣味じゃない。


そこら辺は相容れなさそうだね………


「まっ、これからは自由だ。前世の様に好きに生きて、生きる為に殺していこう♪」


私はそれしか知らないし、それ以外は我が愛に殺意を囁いて貰う事しか識らないからね。


────まぁ、それ以外を識るつもりは皆無だから、どうでも良い話か。


頼まれて無理矢理に我慢した時は、確か佐賀を消滅させ様としたんだっけ?


無意識だったから、覚えたないんだけどね♪


無為だけに………


────いや、何を言ってるんだろうね、バカなのか私?


「殺せたから満足だけど、次は何をしようかな?」


でも、私の好みな殺し方じゃなかったから、後何人か………


「そうだ、私を凌辱した奴等を皆殺しにして満たすとしよう♪」


これなら、後何日かは大丈夫だろうね。


☆☆☆


「あ〜あ、本当に殺っちまったな。もう、ブレーキ無くなったぞ、アレ?」

「下手にブレーキなんざ取り付けたら、ヤバい事になるからな、無為は。」


遠く離れた所から、無為の顛末を見届けた俺達。


前世でもそうだった様に、今世でも父親を自らの手で殺した彼女。


もう止まらない、もう止められない。


────まぁ、止めた所で、被害はより凄くなるだけだろうから。


「────あの女、何なんだ勇者?」

「────唯の殺人鬼だよ。人を殺す事でしか生を実感出来ない、哀れな女の子だ。」

「偉く血に塗れた物損な女の子なこった。」


全くだ、押し付けられた俺の事も考えてくれよ。


「あれ、放置するのか?」

「するよ、じゃないとより酷くなる。」

「どう酷くなるのかは理解わからんが、お前は人族を救う勇者だろうに………」


はは、そうだな………


でも、今は………


「そんな勇者、とっくの前に廃業してる。今の俺は、前世に翻弄されてるだけの、唯の高校生だ。」

「はっ、所謂ラノベ主人公様ってか?」

「ふっ、傍から見ればそうなのかもな。後、1つ言っておく事が出来た。」

「何だよ、気持ち悪いぞ。そんな顔を赤くして、恥ずかしい事でも言うつもりか?」


やっぱりバレるか、流石だな魔王………


正直、言うか言わないかは迷ったんだが、言える時に言わなきゃ、絶対に後悔する事を俺は識ってるからな………


「魔王、俺とお前が結婚した時点で、俺はお前と娘だけの勇者になったんだ。それだけは履き違えるなよ。」

「なっ………お前ぇッ!!そういう所、前世と今世もそういう所だよ!!!」

「痛い!!痛いから止めろ!!!」


お前の攻撃が一番身体に響くんだよ!!


ああ、痛てぇ………


「じゃあ、そろそろ学校行くか。」

「ええ、このままサボろうぜ勇者?」

「綾子の方はどう言ってるんだ?」

「ちょっと待て………は別に良いわよ。貴方の事もよく知りたいからね。」

「そっか、じゃあサボるか。」


なら、ここあやアリスにもRainで伝えとかなきゃな。


後で滅茶苦茶に説教されそうだが………


あんまりしたくないが、無為の奴の事も話さなきゃいけなくなるんだろうな………


はぁ、気が乗らねぇ………


「何処に行く?」

「俺、カラオケが良い!!久し振りに派手に歌ってみたい!!!」

「魔法は使うなよ?」


コイツが歌う時は、相手を攻撃するか癒す時だけだったからなぁ………


回復魔法と良い、聖女も名乗れるんじゃねぇかな、この魔王………


理解わかってるって!!??」

「うわっ、嫌な反応!!不安だ………」


そう言い合いながら、俺達は朝からサボりを満喫しに行くのであった。


続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る