4人目 殺人鬼 無為

第27話 無為

第27話


「横に避けろ、魔王!!」

「おう!!」


俺達が避けた瞬間、地面に深く鋭い斬れ後ができる。


相変わらず、初見殺しの能力だな………


「さっきから何をやってるんだ、コイツ!?」

「斬ってるんだよ、不可視の剣でな!」

「あはっ、ちゃんと私の力を覚えててくれてたんだね♪」

「当然だ。前世でどれだけ苦しめられたと思ってるんだ?」


本当に嫌な思い出ばかりだったな、あの前世は………


☆☆☆


『はぁはぁ、痛い………』


血が止まらない。


『くそっ、まだ死ねない………』


まだ、目的を果たしてない。


『立て、立ち上がれ………』


まだ、との夢を果たせていない!


『しぶといですね、羽虫。』


俺の前に痛みの元凶が現れる。


これが俺と彼女の初邂逅ファーストコンタクト


いきなり襲われ、斬り裂かれ、致命傷の死に損ない状態だ。


理不尽にも程があるだろ、これ………


『何が目的だ、お前?』

『話す理由も義務も無いですよ?』


当然だな………


思わず納得してしまった。


殺されそうになってるのに、変な冷静になってるな、俺………


『お前、何で俺を斬ったんだ………』

『だから、答える理由も………』

『それに、俺から離れてたのにどうやって、こんな芸当を………』

『………………………………………………』


あれ?


何か黙って………


『良いわ、答えてあげる。私の能力で、羽虫を切り裂いたの。』

『能力?』

『真の人間だけが使える選ばれし力よ』


と、傲慢そうに彼女は答えた。


『全く、ローファンタジーかよ………』


もう笑うしかない。


『じゃあ、殺すわね。私はさっさと探したい物があるの。』

『へぇ、何を探してるんだ?』

『────愛よ。』


☆☆☆


「初めは大人しかったのにな………」

「何処がだよ!?今の回想の何処に大人しい要素があった!?」


いやぁ、後の事を考えたら本当に大人しかったよ?


まだ周囲の人間をやたらめったら殺しまくるだけだったし…


それに………


「その頃は目線で照準を合わせて、その直線上に鉄が斬れる程度の斬撃を、真っ直ぐ飛ばす事しか出来なかったからなぁ………」

「ああ、それは大人しいわ………」


まぁ、全盛期は半径5メートルの中なら、どんな方向でも斬撃飛ばせる上に、何でも斬ったりしてたからな………


その上、見えないから避けるのかなり面倒だったなぁ………


「じゃあ、お前はそんな簡単に何で避けれるんだよ。」


そう、俺達はその斬撃を躱しながら、呑気に会話していた。


まぁ、その間にもどんどんと周囲が切り裂かれていくので、かなり地獄絵図ではあるのだが………




殺意よ、殺意。」

「物騒だな、おい………」

「まぁ、慣れだな。」

「おい、秒で否定されたぞ?」

「それ程までに私を(キュン♡)!!??」

「コイツ、無敵か?」


俺も前世でそう思ったよ。


いや、確かに最強だったからなぁ………


ちなみに、俺は無能力者の雑魚だった。


「しかし、いい加減にどうにかしないと駄目だな。」

「で、どうするんだ?魔法でもぶちかして滅却するか?」

「逆に斬られるぞ、魔法。アイツのアレは別次元、だ………」

「じゃあ、何を………」

「こうする!!後は頼んだ!!!」


勢いよく突っ込んで行く。


勿論、斬られる。


避けれる分は避けるが、それでも色々な所が切り裂かれていく。


「ぐっ………」


手が飛んだな、これで手無しだ。


「やべっ………」


今度は右足だな、片足で走るのは魔王との103回目の戦い以来か?


「あらら………」


上半身と下半身が分離しちゃったな………


でも、もう────


「────俺の勝ちだ、無為。」

「へっ!!!???」


思いっきり彼女に突っ込んだ。


そして、彼女の唇に勢いよく口付けする。


勢いがかなり良かったので、歯茎とか当たってめっちゃ痛い。


というか、前歯折れちゃった。


でも、キスはキスだ。


だから…………


「プシュ〜〜〜〜〜」


頭がショートしたかの様に気絶した。


相変わらず、こういうのに弱過ぎるだろ、コイツ………


「なっ、大丈夫だったろ?」

「スプラッタホラーのシュールギャグにしか見えないけどな。」


続く

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