第22話 久し振りの実家(前世)

第22話


ミカエラの記憶が戻った昼休憩が終わり、悶々とした気持ちを抱えながら授業時間を過ごした。


そして、HRが終わった瞬間、アリスを除いたアイツ等に囲まれた。


「早いな、お前ら………あれ、アリスは?」

「今日は、私達の番!まぁ、正確に言うと、綾子の番なんだけどね。」

「成る程、で………お前は何で俺の腕に抱き着いてるんだ、綾子?」

「お前を逃さない為だ、勘違いするなよ!?」

理解わかってるっての。」


しかし、見た目以外はあの時と変わらんな、コイツも………


身体に感じるこの柔らかい物とか特に。


「さぁ、早く行こう!じゃないと、面倒なのに邪魔される!!」

「走らないと、土に返すからな!」

「へいへい。」


彼女達に連れられ、校舎内を駆ける。


視線を沢山感じるが、そんな物は無視だ。


貴族や勇者やってた時の方が多く、より悪意の籠もった視線向けられてたしな………


「ウザいな、殺すか?」

「やめろ、その時は殺してでも止めるぞ、魔王?」

「くっ………今回は見逃してやる。」


と、残念そうに魔王は視線を外す。


コイツ、俺が止めなきゃ魔眼を使うつもりだったな………


ちなみに、コイツの魔眼は石化の魔眼で、少しでも力を込めて見られると石像と化すのである。


まぁ、俺には全く効かないが………


「で、何処に行くんだ?」

「私達のお婆ちゃん家♪」

「お前の娘なんだろう?なら、早く会うべきだ。お前らの寿命は、儚い物だからな。」

「そうか………そうだな……………」


何となく、会いたいとは思ってた。


でも、『会ってどうするのか?』という疑問も有った。


だが、会わなければ間違いなく後悔していただろう。


「ありがとう、二人とも。」

「どういたしまして♪」

「礼を言うな、気持ち悪い。」


想像通りの返事が返ってくる。


でも、それを気にならない位に、俺の心は高揚していた。


どうせなら、孫にも会いたい。


どんな成長をしているだろうか?


どんな家族になっているのだろうか?


期待も、疑問も尽きない。


ああ、唯ひたすらに会いたいなぁ………


☆☆☆


「懐かしいな、この家も………」


何十年も掛けて必死にローンを返した記憶が蘇る。


────いや、何で真っ先に思い付くのがクソみたいな記憶なの?


それは兎も角として………


「でしょ?中には、まだまだ懐かしい物が残ってるわよ!!」

「へぇ、そうなのか………」

「俺の親も、婆ちゃんも滅茶苦茶大事にしてたな。ありゃ、重度の(グランド)ファザコンだな………」

「うんうん、結婚出来たのが親の私でも不思議な位だったしね………」


酷い言われ様だな………


まぁ、俺も同意見なのだが………


「間違いなく、治ってはないな。よくよく思い返せば、コイツみたいな性格の男を選んでるぞ、アイツ等。」

「あっ、やっぱり?娘は兎も角、孫達に会わすのは止めた方が良いかもね………」

「だね。下手したら、凄い泥沼なリアル昼ドラが始まるぞ。」


そんな訳ないだろ………だよね?


少し不安になってきたが、早く娘に会いたい気持ちもある。


「早く入ろうぜ、もう我慢できん。」

「あっ、そうだよね。ごめんね、東くん。」


そう言うと、彼女は近くの花壇を漁る。


そして、其処から光る金属みたいな物を取り出して………


「隠し場所、まだ変えてないのか?」

「うん、此処にまだ合鍵を隠してるみたいなの。」


防犯的にかなり心配なんだが………


「じゃあ、ただいま♪」

「ただいま?」

「もうお前の家じゃないだろ、勇者………」


いや、何となくここあに連れられち────


中に入った瞬間、俺は固まった。


………!!


「────気が付いた、東くん?」

「ああ、当然だ………」


玄関の近くにはアレが有った。


俺がここあと娘、その全員と撮った家族写真が………


でも、その写真が何故か無いよだ。


「成る程、その記憶になった途端に早柚ちゃんが愚鈍鎌瀬を嫌う訳だ………」

「何か知ってるのか、魔王!?」


てか、鎌瀬って誰だ!?


「早柚のクソゴミクズ幼馴染がね、子供の時に写真を台無しにしたらしい。当時、俺はその場に居なかったから、それ位しか言えねぇけどな………」


と、ほんの少しだけ苛立った声で、彼女はそう告げたのだった。


続く

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