第21話 要するにできちゃった婚
第21話
目が覚めた。
目の前には知らない天井。
いや、意識が途切れる前には見ていた天井だった。
それに何より………
『何で俺、裸なんだ?』
下着も含めた全ての服が無く、生まれたばかりの状態だ。
どんどんと嫌な予感が襲ってくる。
俺はそれに気が付かないフリをし、周りを見ようとするのだが………
『うぅ、何か俺の股が痛い………』
今、一番聞きたくなかった声が聞こえた。
これ、もしかして、さ………
『え、何コレ………?何で、俺の股から白くてネバネバしたドロドロが────』
そう言いながら、魔王は周囲を見渡した。
そして、俺を見つけた。
彼女も、俺と同じ生まれたばかりの状態だった。
まぁ、つまり………
『『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』』
☆☆☆
『死にたい………』
『俺の台詞だよ、クソ魔王………』
『なっ、俺の処女を奪った下衆勇者が何言ってんだ!!??』
『俺の童貞を奪ったのは、お前だろうが淫売魔王が!!??』
その数ヶ月後、色々と荒れに荒れたが、普段通り殺し合っていた。
だが、今回は口喧嘩だけに済ませていた。
何故なら………
『何で、お前なんかの子を………』
『俺の台詞だよ、全く………』
あの淫魔達が作ったガスのせいで発情した俺達は、一夜の間ずっと混じり合った。
そのせいで、魔王………彼女は妊娠してしまった。
『────前代未聞だぞ、コレは。』
『────だろうな。常識外にも程があるだろって話だ。』
そして、俺達は特殊過ぎた。
本来、人族と魔族の間に子供は出来ない。
だが、俺達は勇者と魔王。
人族を超えた怪物と、魔族の頂点に立つ例外なのだ。
それが混じり合ったせいで、最悪とも言える奇跡が起きてしまった。
『────責任は取る。俺が死ぬまで、お前の側に居続ける。』
『────ああ。心底断りたいし、受け入れられないが、この子の為だ。』
覚悟は決めた。
後は─────
『やるべき事をやるだけだ。』
『ああ、コレで終わりだ。』
─────この長きに渡る因縁にケリを着けよう。
『俺達は此処で死んだ事にする。』
『そして、二人………いや、3人で隠遁するってか?はは、無駄に理想的な新婚生活じゃねぇか。』
『ほざくな、蕁麻疹が出る。』
『俺は既に出てるっつーの!!』
今ままで出した事のない火力の攻撃をぶつけ合う。
そして、その余波が周囲を地獄絵図へと変えていき………
☆☆☆
「要するに、できちゃった婚したんだ。」
「勇者と魔王、実にロック。」
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」」
結局、押しに根負けし、全てをここあ達に話してしまった。
そのせいで、俺達は叫びながら、恥ずかしさで転げ回ってる。
死にたい、マジで死にたい!!
恥ずかしさで地獄に落ちそうだよ、コンチクショウが!!!
「でも、凄いラブストーリーだったね。」
「ロミオとジュリエット。」
「「何処がだ!!??」」
納得が出来ない。
あの後、色々あったけど、娘が独り立ちするまで仮面夫婦を続けたんだぞ?
結局、仲良くなる事なんて出来なかった。
最後の最後まで、愛してるのかも、魔王の事が好きなのかも
それに、俺は勇者である前に人族だった。
寿命は、魔族に比べて圧倒的に短い。
俺は彼女を置いて、先に逝ってしまった。
絶対に言わない、言えないが、それだけが心残りだった。
「多分、それが綾子ちゃんと東くんの在り方だってだけだよ。」
「それも、1つの形。」
なら、良いんだけどな………
続く
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