3人目 魔王 ミカエラ

第20話 ミカエラ

第20話


『今日こそ決着を着けるぞ、魔王!!』

『それは俺の台詞だ、勇者!!』


ミカエラとの記憶を思い出した瞬間、一番に思い出した記憶。


アレはある意味、一夜の過ちだった。


まさか、そのせいであんな事になるとは、俺達は思いもしなかった。


☆☆☆


『はぁはぁ、やるな………』

『そっちこそ………』


何時も通り、通常運転の様に殺し合う。


数十、数百、数千、もう数えるのを止めたくなる位に殺し合った。


その度に殺しきれず、お互いに生き残ってしまった。


諦めれば、どれ程に楽だろうか?


でも、俺にはそれしかなかった。


────もう家族も、好きな人も居ないのだから。


『いい加減に死ねよ、死に損ないが!!』

『お前こそ風呂にへばり付く垢みたいにしつこいんだよ!!』


周りの地形など気にせず、ぶつかり合う。


拳と拳、魔法と魔剣がぶつかり合う度に、周囲は崩壊していった。


だが、それが行けなかった。


他の援軍を警戒していかった訳ではない。


それ位なら、お互い近付いただけで殺せる程の力と技量は有った。


だが、トラップに関しては計算外だった。


というよりも、在ったとしても、破壊されてると思っていたのだ。


だから………


『なっ、転移トラップ!?』

『ちょっ、俺もか!?』


二人して、思いっきりハマった。


それはもう、面白い位に。


☆☆☆


『ぐはっ!!??何だ、此処は………』

『くっ、俺とした事が………』


先に俺が転移させられ、思いっきり地面に叩きつけられる。


だが、魔王の奴は優しく降ろされた様だ。


差別を感じるが、今は此処が何処かを探らなくては………


『ん?待て、此処は………』

『あ?どうした、魔王?』


いきなり、魔王が震え始める。


もしかして、此処は相当ヤバい場所なのか?


『早く防御しろ、勇者!!』

『はぁ、いきなり何を────』


その言葉が紡がれる事は無かった。


言おうとした瞬間、周囲からピンク色をしたガスらしき物が充満してくる。


咄嗟に焔で防ごうとするが………


『がっ、俺の結界魔法もすり抜ける………』

『俺の焔も効果無し、か………』


本当に嫌になるぜ、全く………


しかし、このガスは一体何だ?


息苦しくなる様子は無い。


だが………なのだが……………


『身体が熱い、何だコレ………』

『此処は廃棄された研究所だ、サキュバス淫魔達のな………』


俺の疑問に、声を掠れさせながら、魔王が答える。


────ああ、成る程。


この症状は、俺が発情してるって訳か。


『凄いじゃねぇか、勇者も魔王も見境なしの媚薬ガスとは………』

『コレは攻撃でも無く、害がある物ではないからな。故に、俺達の防御は無意味になるんだ。話に聞いてはいたが、まさか本当だとは思わなかった………』


マジかよ、それ………


ていうか、媚薬なんて悪用されるオチしか思い付かないんだが………


『そもそも、コレはあの色欲バカどもが、俺達魔王軍や、人族のお前らから横領したり、騙し取ったりした予算で作ったトンチキガスだからな………』

『マジでか、お前も苦労してるんだな。』

『ああ………あのバカどもは、本当にしようがない…………』

『で、何が目的で作ったんだよ?』


そう聞くと、苦虫を噛み潰したような顔をして、嫌そうに答えてくれた。


『純愛………』

『はぁ?』

『お前らが書いた純愛系の奴を見て、羨ましくなったから、作ったらしい………』


何じゃ、そりゃ………


ていうか、媚薬なんかで純愛が出来る訳がないだろうに………


『このガスは、周囲に相性が良い相手が居ないと無害でしかないらしい。全く、変な所に力を入れやがって………』

『技術の無駄遣いだな、全く………』


─────────────────アレ?


それはもしかして………


『魔王………』

『勇者………』


何故か、お互いを呼び合った。


そして、其処で俺達の意識は途切れた。


続く

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