第19話 3人目

第19話


あの後、俺達は大人しく離された。


俺の隣にアリス、あのクソ魔王の隣にここあという感じだ。


流石は従姉だ、雰囲気が似てるし、孫達の面影も感じる。


コレで、綾子の中身がゴミじゃなければ、百倍も良かったのだが………


「大丈夫、怖かったよね綾子ちゃん………」

「うん、怖かったよ早柚ぅ………」


うわぁ、猫被ってる………


気色悪いな………いや、戻る前の人格が強く出てるのか?


だとしたら、普段からあんな感じか………


何となく関係性が見えてくるな………


「貴方様。」

「ん?何だ、アリス。」

「私もよしよし。」

「おう、よしよし♪」


可愛いなぁ、アリスは………


それに比べて、あの魔王はクソだな!


ガワの綾子は可愛いひ孫なのに、中身が腐ってるせいで、本当に駄目になってる。


これじゃ、唯の寄生虫だな。


「何だアレは、本当に俺が知ってる勇者なのか?」

「俺?」

「あっ、ごめんね、早柚。私、魔王やってた時はこういう一人称だったの。威厳とか、最初は男として育てられたとか色々あったからね………」


そういや、そうだったな………


でも………


「でも、あのケツとタッパがデカい上に、ボン・キュッ・ボンな身体で男は無理があるだろ………」

「煩い!!俺は好きであんな大きくなった訳ではないわ!!むしろ、邪魔だったわ!!」


おお、ある特定の人種を攻撃するかの様な発言だな………


あの人種はそれがステータスで希少価値なんだぞ?


「おい、クロウ?」

「すみませんでした!!」


そうだった、俺の心はコイツ等に筒抜けだった!!


「それに、俺は認識阻害魔法をちゃんもかけてたぞ?それをいとも簡単に破ったお前が悪いんだろうが!!」

「はぁ、あんなチンケな魔法を破られない訳がないだろ、ヘナチョコ魔法使いが!!」

「普通は無理だっつーの!!俺、アレだぞ!?歴代魔王の中でも最強で、世の中にある全部の属性の魔法を使えるんだぞ!!!」

「何が全部使えるだ!!器用貧乏なだけの、クソ雑魚じゃねぇか!!」

「お前こそ、炎を纏うぐらいしか能がない魔法以外使えない落第生だろうが!!」


何気ない言葉から罵り合いが始まり、ヒートアップしていく。


────だから、俺達は気が付かなかった。


俺達の後ろで、二人が鬼神の様な顔をしている事を………


「東くん、綾子?」

「ん?何だよ、ここ、ひっ!?」

「早柚、私を止め、ひっ!?」


思わず、悲鳴が漏れる。


そして、追い打ちかの様に………


「いい加減にしろよ、クロウ?魔王とやら?さっさと話を進めろ。出来ないなら、地獄に落とすからな?」

「「はい………」」


お互いに顔を見合わせ、少し気不味さを感じながら話し出す。


「えっと、コイツとの世界では勇者をやらして貰ってました、アークです。元平民だったから苗字無しです。」

「俺は栄光ある魔族の王、13代目魔王をやっていたミカエラだ、です。」


思わず敬語を付け足す位には怖かったのだろうか。


本当に珍しい物を死んだ後に見れるとは、人生とは理解わからない物である。


まぁ、今は茶化したらガチで殺されそうなので、何も言わない。


「へぇ、綾子ちゃんが魔王かぁ………」

「貴方様が勇者、良い………」

「「で、どういう関係?」」


まぁ、気になるよな………


でも、先程通りに………


「殺し殺し合う関係だな。」

「天敵同士、因縁の相手でしかない。勇者は魔族共通の怨敵だ。」


真面目に答えた、答えたのだが………


「う〜ん、違う!!」

「疑問、不解消。」

「「ええ………」」


じゃあ、何が聞きたいんだ、お前等………


「「恋愛的な意味!!」」


その言葉に、俺達は互いに見合う。


そして、苦虫を噛み潰した様な顔をし、吐き捨てるかの様に………


「「言いたくない!!!死んでも絶対に!!!」」


誠に遺憾だが、間違いなく俺達の心が通じ合う答えだった。


続く

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