第14話 +と−を掛け合わせたら=で虚無になる

第14話


「はぁ、帰ったぞ。」

「うん、お帰り。」


あの後、頑張って朱里を宥めて、ここあを家へと送り返した。


そして、俺は帰って来た。


───和泉の方の家へ。


今日は和泉の親が居ないから、お泊りするのである。


「何か他人の家でこんなやり取りするの違和感凄いな………」

「仮にも昔王族だった、貴方様はもっと傲慢で良い。」

「王族はお前!俺は唯の入婿!!」


俺はお前ほど神経太くなれねぇよ!


そう言えば、アリスのお母さんも肝っ玉だったなぁ………


王様も入婿だったし、そういう家系だったのだろうか………


「じゃあ、早速だけど貴方様………」

「ん?何だ、アリス。そんな改まった態度して………」


あれ?


何か嫌な予感が………


「愛妻料理、今から作る♡」

「やめてください!許してください!!まだ死にたくありません!!!」


コイツ、自分の腕を自覚してないのか!?


お前、和泉の時から壊滅的な錬金術師じゃねぇか!!!


何回やっても爆発したり、ダークマターが錬成されてたじゃん!!!


その挙げ句、俺が作り続ければ良いとか言って、練習を一週間で諦めてたし!!!


「失礼。今の私はアリスでもある。私の腕、忘れた?」

「ああ、そうだったな………」


アリスはメイドだった。


料理も物凄く美味しかった。


確かに、それなら良い物を作ってくれる筈だろう。


「じゃあ、頼むわ。」

「承りました、貴方様。」


懐かしいな、このやり取りも………


☆☆☆


「何これ………」

「私、呪われてる?」


アリスの言った通り、ちゃんとした料理は出てきた。


出来たのだが………


「不味くはないんだが………」

「────美味くもない。」


見た目は良い、物凄く美味そうに見える。


見えるのだが、肝心な味は可もなく不可も無い状態だった。


まるで、見た目だけは整えられているかの様だ。


「良い部分と悪い部分が合わさって、色々と台無しになってるな………」

「うん、コレは虚無。」


食べられる、食べられるんだけど………


「次からは俺が作るよ、アリス………」

「うん、ごめん。」

「良いよ、気にするな。」


久し振りの食卓はまぁ、何とも言えない悲惨な空気で終わってしまったのだった。


☆☆☆


「待ったか、アリス?」

「ううん、大丈夫。」


風呂に入り、下着一枚で彼女の部屋へと向かう。


そして、向かい合い………


「じゃあ、アリス………」

「うん、貴方様………いいえ、クロウ。」


俺の前世の名前を呼んだ瞬間、彼女の纏う雰囲気が一変する。


そして、勢いよく押し倒され、馬乗りで身動きを封じられ………


「私に抱かせろ、クロウ♡」

「ああ、アリス。」

「ふふ、違うだろ?」

「へっ!?」


あっ、しまった!?


久し振りだから、つい約束を………


「ありがとうございます、王女様だろ?この物忘れが酷い奴隷君クロウ?」

「ひゃっ!?」


苛虐的な笑みを浮かべ、俺の首筋を舐めてくる。


そして、獲物を仕留めるかの様に噛み付き、吸い尽くす。


「ふぅ、コレは私の物だって証だ。明日は絶対に隠すなよ?コレは命令だ。」

「は、はい、理解わかりました………」

「ふふ、良い子だ。夜は長い………存分に私に抱き潰されろ、クロウ♡」


この後、彼がどうなったかはご想像にお任せしよう。


続く

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