二人目 アリス・ユークリッド
第10話 アリス・ユークリッド
第10話
「結婚はどうしよう?」
「事実婚、ある。」
「良いわね♪もしくは、最初に子供を孕んだ方を正妻にするとか?」
「それ、名案。」
何か俺の介入無しで、話が進んでいる気がする。
まぁ、何か話そうとすると………
「「ん?」」
────と、まぁ、こんな感じで無言の圧力が俺を襲う。
自業自得でしかないから、何とも言えないのがもどかしい………
「そうだ!作戦会議も含めて、親睦会なんてどう?」
「賛成。なら、私と飛鳥の愛の巣、来る?」
「ありがとう!でも、これからは私達の愛の巣だよ?」
「確かに。」
と、勝手に俺の家へ来る事も決ってしまった様だ。
それに、家には母さんや義妹、飼い猫が居るんだぞ?
どう説明すりゃ良いんだよ………
そんな事を思っていると………
キ〜ン〜コ〜ン〜カ〜ン〜コ〜ン♪
「チャイム鳴ったな、そろそろ教室に戻るとするか。」
「だね。じゃあ、また放課後で!」
「うん。楽しみに待ってる。」
と、それぞれのクラスへ帰る。
教室に入ると面倒な視線に晒されたが、全てをガン無視して、机に付す。
そして、そのまま………
☆☆☆
直ぐに夢だと
最近思い出した懐しい記憶だったから。
コレは、前世………俺がクロウ・ユークリウスという貴族の5男坊をやってた頃の記憶だろう。
確か、コレは………
『まさか、あの出来損ないのお付きをやっていたのが第3王女だったとは………』
俺が小さい頃からの付き合いで、ずっとお付き………メイドをやってくれいた女の子が、この国の王女だった。
とんだ笑い噺だ、荒唐無稽にも程がある。
だが、現実に起きた事だと言うのだから、心底質が悪い。
『本当に勿体ないな、あの男には………』
全くだ、俺はユークリウス家の出来損ないなのだから。
他の兄弟姉妹より、才能が無かった。
だから、色んな場所で虐げられ、侮辱され続けた。
仲が良かった筈の兄弟姉妹も敵になり、親からは半ば放置されていた。
婚約者も居たが、俺の境遇によって巻き込まれる事に耐えられなくなり、破談した。
アリスを除いて、誰も居なくなった。
そして、そんなアリスも今まさに居なくなろうとしている。
『あのネルドラント家の長男との婚約パーティーが、そろそろ始まるぞ。こんな歴史的瞬間に立ち会えるなんて、素晴らしい事だ。』
そう、その長男………コスモス・ネルドラントと婚約するらしい。
そのパーティーに俺も招待されていた。
どれだけ努力しても報われず、奪われ、離れていくのを止められない。
ああ、何て情けない人生なのだろうか………
そして、そんなゴミクズな俺は………
『しかし、何でアイツも呼ばれてるんだろうな?』
『さぁ?でも、出来損ないは場違いなのに、空気が読めてないんだろ。』
『さっさと帰れば良いのに………』
帰れるなら帰りたいさ!
でも、これでアリスとは最後なんだ!
だから、場違いでも、空気が読めない存在だとしても………
最後の最後まで、縋らせてくれ………
『〇〇☓☓△△☆☆□□』
誰かが何かを言っている。
周りも少し騒がしい。
ああ、アリスが来たんだ………
そして、これから彼女は俺の知らない彼女へと成っていく………
悲しいなぁ………
『私は、コスモス・ネルドラントとの婚約を破棄する!』
──────────────────え?
彼女は今、何と………
『そして、私はユークリウス家の………クロウ・ユークリウスを婚約者、婿にする!』
『あ、アリス………?』
何を………言って…………
『むぅ、聞こえなかった様だな。クロウ、いや、貴方様………』
彼女は王女としての顔を止め、まるで、俺のお付きだった頃の様な顔で………
『私はこんな男より、貴方様が欲しいと言ったのだ。』
続く
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