第8話 幼馴染はちゃっかりしてる

第8話


全てを話すつもりだが、流石に登校中の少ない時間で話せる物でもない。


なので、何とか伝家の宝刀土下座を使って宥め、放課後まで待ってもらう様にした。


納得はしてくれた、してくれたのだが………


「は〜い、あ〜んだよ東くん♡」

「飛鳥、口開けて。」

「はい………」


昼休憩、襲撃してきた二人(二人とも別クラス)に攫われた。


そして、挟まれてお互いの弁当の具材を口の中へと放り込まれ続ける。


口ごたえなど許さないし、許されない。


この時間での俺の役目は、与えられる愛を何も考えず受け取るだけだ。


「美味しい、東くん?」

「美味しいよ、ここあ。」

「美味、飛鳥?」

「ああ、勿論。」


だけど、俺の腹の容量も考えて欲しいな。


「てか、良かったのか?何か騒がしかったんだが………」


二人の追撃が止んだ瞬間、別の話題を振る。


その言葉に彼女達は少し考える様に黙るが、少し経つと………


「多分、元幼馴染ちゃんのせいじゃない?地味に人気だし、この子。」

「偽幼馴染のせい。思い出したけど、コイツは裏で人気。」


へぇ、そうなのか………


友達が少ない(居ない訳ではない)ので、全く知らんかった………


「だから、変な視線を感じたのか………」

「可哀想に………貴方のせいよ、元幼馴染ちゃん。」

「ごめん、飛鳥。直ぐにこの棚上げ偽幼馴染を排除するから。」

「ナチュラルに煽り合うのは止めようね、二人とも!?」


隙さえあれば、喧嘩しようとするね君達!?


まぁ、俺が原因みたいな物だから、何とも言えないんだけど………


「はぁ………あっ!そういや、何かお前の名前を呼んでる奴が居たな!アイツと何かあったのか?」

「ああ………あのゴミね…………」


何か苦虫を噛み潰したような顔をして、忌々しそうにするここあ。


一体、何が………


「あれ、私以外の女子に人気な陽キャ。飛鳥以下だけど、イケメン扱い。」

「見る目があるわね、元幼馴染ちゃん。東くん以下の糞イケメンよ、アイツは………」


何か変な所で意見が合う二人。


しかし、友達が居ないとそんな話すら知らない事になるのか………


まぁ、どうでも良い情報なのだが………


「酷い嫌い様だが、マジでお前と何があったんだ?」

「幼馴染………」

「へっ?」

「誠に遺憾なんだけどね、今の私の幼馴染なのよ、最悪な事にね。」


それは、また………


「安心してね、貴方にキスされる前の私は兎も角として、今の私は現在進行系で東くんの事が大好きよ、ラブラブララブラユーよ♪」

理解わかってるよ、ここあ。」


しかし、昔は兎も角か………


という事は、まぁ、そういう事だよな………


まるで、俺がソイツからここあを寝取ったみたいじゃないか。


────まぁ、ここあはだから、罪悪感なんて微塵も感じないのだが。


そんな事を考えていると、和泉の方が俺の頬を突き始め………


「痛い、地味に痛い!何だよ、和────」

「なっ、貴方!?」


柔らかい物が俺の唇に触れた。


正体は────和泉の唇だった。


まるで、恋人同士かの様に舌を絡めた後、和泉は美味しかった様に唇を嘗め……


「うっ、頭痛い。でも────」


彼女は勝ち誇る様に、こう告げた。


「私もちゃんと理解わかったわ、貴方様♪」


その言葉に疑問を持とうとした瞬間、俺の頭にも痛みが走る。


こ、コレは………


「そう、私達も長い付き合い、昔から。」


ここあの時がそうだった様に、かつての記憶が蘇る。


つまり、和泉も………


「久し振りだな、アリス。」

「ええ、貴方様♪」


続く

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