第3話 キスで魔法は解ける

第3話


柔らかかったな………


キスってレモンの味がするらしいけど、全くそんな感じしなかったな………


────って、そんな馬鹿な事を考えてる暇無いだろ、俺!?


早く、早く弁解しないとセクハラで牢にぶち込まれる!


未成年なのに、前科持ちになっちまう!


「すみません、どうか許してください!俺には親も義妹も、ついでに小学生の頃からの付き合いな飼い猫が居るんです!彼らの為に、捕まる訳にはいかないんです!どうか、どうか俺を許してください!何でもしますから!」


と、周りの目にもお構いなしに、盛大に土下座した。


今の俺にはそれしかできないから………


だが、反応は全く帰ってこなかった。


まさか、ガチギレして無言になってるとか!?


「あの………」


恐る恐る彼女の方を向くと、頭を抑えて苦しそうにしていた。


そこまで、精神的ショックを………


「うっ………」


申し訳なく思っていた瞬間、俺の頭に痛みが走る。


何で、こんな時に頭痛が………


しかも、コレは………


☆☆☆


『ねぇねぇ、きみのなまえは?』

『わたし、ここあ♪』

『ぼく?ぼくはあずまだよ。』


誰だ、コイツ等は………


『ねぇ、東くん。私とずっと一緒に居てくれる?』

『当たり前だ。何馬鹿な事を言ってるんだ、ここあ。』


知らない、知らない筈なのに、どこか懐かしくて………


『ごめん、ごめんね、東くん。私、私は君にあげたかったのに………』

『そんな事はどうだって良い!俺も、俺こそお前を守れなかった………』


この光景の男から、悲しみが、苦しみが、怒りが伝わってくる。


ああ、コレは………


『私、汚れてるよ?それでも、東くんは私を選んでくれるの?私で良いの?』

『お前は汚れてないよ、ここあ。それに、俺はお前が良い、お前じゃなきゃ嫌だ!お前が手に入らないくらいなら、死んでやる!!』


────俺の記憶だ。


☆☆☆


「はぁはぁ、ここあ………」


今の状況も忘れ、思い出した大切な人の名を呟く。


────何で、今の俺が思い出したんだ?


今の俺は飛鳥だ、あの記憶の………あの人生を生きた東じゃない。


前世の記憶を思い出す事なんて………


「えっ、何で私の名前を………?」

「えっ、はぁ?」


その声の主の方を向くと、先程事故でキスをしてしまった女の子が、驚く様な顔で俺を見ていた。


────まさか、嘘だろ?


少し、カマをかけてみるか………


「えっと、乙女座でB型、趣味は人形造り、昔はよくオネショをして泣いていた土屋つちや ここあさんの事なんだけど………」


そう答えると、目の前の彼女は急速に顔を朱色に染めていき………


「にゃっ、にゃっ、にゃあーーーー!!!???」

「ぶげっ!?」


────いきなりの腹パンが俺を襲った。


ちくしょう、ナイスストレートだ。


ちょっと、胃の中身を吐き出しそう………


でも、この反応は間違いなく………


「あ、東くん!?東くんなの!?」

「………まぁ、多分な。」

「にゃっ、にゃっ………着いてきて!!!」


そう答えた瞬間、腕を引かれて引っ張られる。


コイツ………間違いなく、テンパってる!!


目もぐるぐる回してるし、めっちゃアワアワしながら俺を全力で引っ張ってやがる!!


てか、力強っ!?


何なの、前世はそんなにゴリラじゃなかったろ、お前!?


しかも、一体何処に向かって………


「あ、東くん!!こ、此処に入りましょう!!!」

「みゃっ、ここあ!?」


彼女が頭をメダパニりながら指差した場所には………


────お城が在った。


ピンク色に光る、色々とアウトなお城だ。


まぁ、要するに………


「さ、さぁ、東くん!!!ラブホテルにレッツラゴーです!!!」


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る