迷宮探索

………あれ?14時に投稿してなかった?


────────────────────


 メロとパーティを組んでから一週間の時が経った。


「リン!魔法の準備が出来ました」


「了解!」


 リンが前に出て魔物をくい止め、メロが一斉放射でトドメを刺す。これは森の中からの定番であり、迷宮アタックを始めても変わらなかった。


「お疲れ様です」


「おう。そっちこそ」


 最初こそ、少しだけ合わないこともあったが、今では目線だけである程度の意思疎通をとれるようになってきた。


 今2人がいるのは迷宮の第1階層だった。


「それにしても、迷宮の魔物って思ったより強くないんだな」


「上層はそうですね。でも、油断しないでくださいよ。五階層からは一気に変わりますからね」


 そうなのだ。Dランクが推奨されてるのは基本的に第三階層まで。それより下は今のリンでは難しい。


「そういえば、でっかい熊型の魔物って何階層に出るんだ?」


 あの日、敗北した魔物を思い出しながらリンはメロに質問した。


「熊型の魔物?パウ・ベアーのことですか?あれなら8階層付近で出現するはずですよ」


「なるほど………」


 ならば、リンがリベンジするためには8階層まで降りる必要があるのだ。


「パウ・ベアーがどうかしたのですか?」


「………いや、なんでもない」


 リンはそう言って、その話を中断させた。

 だが、メロはそれが不満だった。


(リンは、秘密が多いです………)


 ずっと、この一週間の間そうだった。メロが仲良くしようと色々話しかけても、リンは最低限の情報しか言わない。きっと、リンはパウ・ベアーになにか思うところがあるのだろう。


(次の、ランクアップの標的、ですかね?)


 普通なら、まだ速いと止めるべきだろう。だが、メロはリンの成長を知っている。このままでは、近い将来追いつかれる、と。


(私も、もっと成長したい)


 リンを見ていると、メロは焦燥感に駆られる。もっと強くなりたいと思える。


(私がこのままじゃ………)


 きっと、今は自分と仲良くしてくれている少年は、自分を置いていってしまうだろうと、そんな予感がしたから。


「リン」


「ん?」


「午後も、頑張りましょうね!」


 そうして、メロは自分を激励するのだった。



□■



 森の中、一匹の魔物が木にもたれながら目を閉じていた。普通の人が見れば、死んでいると判断しただろう。


「ったく。なんで俺が調査なんて低級の仕事を………」


 そんな魔物の近くに来た男がいた。男の名はゴルド。【マロン様の奴隷】の元副ギルド長だ。

 リンを襲った罰によってゴルドは蜥蜴のしっぽ切りとしてギルドから追放されてしまった。その結果、ゴルドは個人でギルドの罰を受けなければいけなくなった。


 低賃金で面倒な依頼を遂行する。それが罰の1種。仮にもCランク冒険者の力を借りられるのだから、ギルドとしてもいいことでしか無かった。


「さっさと終わらせて………」


 ゴルドは適当に調査しながら歩くと、木にもたれている魔物を見つけた。


「こいつは………パウ・ベアー?」


 パウ・ベアーは、Cランク冒険者がパーティで倒す相手だ。動きは緩慢だが、力があり、個人で倒すのは至難の相手。それが、こんなところで寝ている。


「迷宮から脱出したのか?だが、いい機会だ」


 こいつを倒せば、素材も手に入るし、上質か魔石も手に入る。そうしてゴルドはパウ・ベアーの胸に剣を突き刺そうとして


『gua………』


 パウ・ベアーの手によって、その剣は止められた。


「………は?」


 寝ているはずだった魔物に攻撃を止められたのだ。困惑しない理由がない。

 そしてパウ・ベアーは停止したゴルドの頭を握ると、


『guaaaaa!!!!』


 叫びながら、ゴルドを投げ飛ばした。


「ブベラボベラガベ!!」


 空気によって、ろくに発音できない状態でゴルドは投げ飛ばされ


『guaaaaa!!!!』


 飛び上がったパウ・ベアーに上空から地面に向かって殴り飛ばされた。


 ゴルドは音速を超える勢いで地面に衝突し、その肉片を分解させて、死を迎えた。


『gyuuu………』


 パウ・ベアーはゴルドの死んだ場所を一瞥することも無く、そのまま別の場所に向かって進む。

 その時、ふと気になって自分の目と腕を触る。

 かつて切り飛ばされた腕と、斬られた目を。


『guuuu………』


 パウ・ベアーは弱いくせに自分を追い詰めた一人の好敵手を思い出して、笑う。


 再戦の時は、近い、と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る