二人一チーム

 朝食を食べたあと、二人は早速森に向かった。


「疾っ!」


 リンは手に持った片手剣で森の木々を用いた立体機動的な動きで敵を倒していく。


「フッ!」


 そしてメロに近付く敵を察知、またはメロが傷付く未来が見える度にメロの元に瞬時に移動し、敵をなぎ倒して行く。


「魔法の準備、出来ました!」


 メロのその合図を聞くと、リンはすぐにメロの元まで下がる。


「いきます!【クリスタル・フィールド】!」


 メロがそう言った瞬間、まだ数十体ほどいた魔物が全て氷漬けになった。


「なるほど、範囲氷結魔法、か」


「はい。倒せずとも、凍らせてるお陰で確実に倒せます」


 凍らせることによって相手を拘束し、その間にトドメを刺すことも可能、ということだろう。


「さて、ここまで来るのにも時間がかかりましたし。休憩にしましょうか」


 メロはそう言うと、持ってきていた弁当をリンにも手渡した。


「ありがとう」


「いいんですよ。私は魔導師なので、動き回ることはないですからね。適材適所です」


 最初は、後輩であるリンが持とうとしていた荷物も、メロが持ってくれている。

 理由は簡単で、メロは基本的に動くことが少ないからだ。


「それにしても、凄いですね。あなたの魔法は」


「そうか?俺からしてみれば、遠距離攻撃できる方が羨ましいけどな………」


「そうでしょうか?私からしてみると、ステータスを大幅に上昇。いいえ、昇華させるあなたの魔法も羨ましいですけどね」


 ないものねだりはわかっているが、それでも言うのはただだ。


「それに、動きも上手ですね。木を有効利用してるのも凄いですし、私に攻撃が来る前に駆けつけてくれますし………」


 弁当を食べながら、メロは先程の戦闘を思い返す。


「ああ。祖父からは周りの地形を有効活用しろって教わったからな。それに、駆けつけられたのは未来視の恩恵もでかい………」


 そして未来視はクロムの目の下位互換だとも、リンは思っている。


 クロムの目は、おそらく見通す目だろう。相手のありとあらゆることを見通せる目。だから、相手の筋肉の動きなどで次の行動も見通せる。そしてそのための頭脳がある、クロムだからできる動き。


 リンのは、見るだけのスキルだ。


「祖父って、おじいさんですか?元冒険者だったんですか?」


「祖父曰く、元Aランクらしい」


 メロはそれに対して関心するような声を上げた。


「だから、あんなに動けるんですね」


「ああ。鍛えてくれた祖父には感謝してる」


 そうだ。実際、あの人がいなければ、リンはまともに戦うことなどできなかったはずだ。


 だが、実際のリン・メイルトも、きっと同じように歩んだのだろう。そして、本来のリン・メイルトならば、もっと上手くやっていただろうと、そう思ってしまう。


 そして、そうやって思い悩んでいるリンの様子を見て、メロは少しだけ困惑していたのだった。

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