葛藤 後押し

『いくら団長の頼みでも………』


 メロ、と呼ばれている少女は、リンはまだ見ていないがクロムの話が正しければエルフのはずだ。

 高潔で、認めた人物にしか距離を縮めることを許さない種族だ。


「まあ、無理なら無理でいいんだけどな」


 すぐ側で聞いていたリンも別にいいって言ったのだが、


『え?そう言われると、私が悪いみたいじゃ………っていうか、あなたいたんですか!?』


「え?うん」


 部屋の許可を取りに行くのに本人が同行するのは当たり前だと思っていたから、自然に断りを入れたのだが、逆効果だったみたいだ。


「実は、彼の部屋が無くてね。今部屋が空いてるのはメロしかいないんだよ」


『えぇ………』


 それなりに広く、設備も充実してそうな【黄昏の絆】のホームだが、団員の部屋は少ないらしい。


「それに、メロもつい二ヶ月前に入団したばかりなんだ。所属したばかりという観点では、二人とも似たような立場だと思うし、仲良くできると思うんだけどね」


 さり気なく出された新情報だったが、ぶっちゃけリンにはどうでもよかった。


『う、うぅーん………』


「いや、なんであんたは悩んでんだよ」


 即断る案件だろ、とリンはツッコミたかった。


「それに、メロは後衛の魔導師だろう?前衛で、しかもCランク冒険者を倒してランクアップを果たしたリンとパーティを組んで探索に行くのもスムーズになると思うけどね」


『え?そうなんですか?』


 リンがDランクというのは知ってたが、まさかの格上殺しジャイアント・キリングを果たしていたのを知ったメロは驚愕の声を上げた。


『確かに、それなら………でも、さすがに同じ部屋は………』


 クロムのスムーズになると言うのは本当のことだろう。同じ部屋ならば、話す機会はいくらでもあるし、明日の打ち合わせもスムーズにいきそうだ。


「それに、君たち二人からは不思議な予感がしてる。まあ、勘だけどね」


 絶対嘘だ、とはリンは言えなかった。

 嘘だと言える根拠がなかったからだ。さすがに、メロを説得するための嘘だとは思ってるが。


『………じゃあ、今日お試しでパーティ組んでから、決めます』


「だ、そうだ。頑張ってくれ」


 クロムはそう言うと、あとは丸投げして行った。でも、その前に


「いや、最後雑だな」


 リンはそう言わずにはいられなかった。

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