呆気なく

十七話目デス!


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「倒すって、どこにいるのかわかるの?」


「ああ。あいつらは俺が森の一定ラインを超えると妨害してくるし、市販の気配感知のスキルでも見つけれるくらいには潜伏に重視した動きじゃないからな」


 だから見つけるのは問題ない。


「マロンももう見つけただろ?あのお粗末な襲撃者を」


「うん。でも………」


 マロンの言葉が詰まった。リンはマロンの言葉が詰まった理由に察しがついた。


(いつもより、殺気が強いな)


 なんならいつもは殺気は殆ど感じない。完全に嫌がらせに特化してるからだ。

 だが、今日は違う。今日は、完全に殺しに来る気配だ。


「上等」


 だが、リンにとっては都合がいい。


「【我が名はアイン。災禍を宿りし名。堕ちたるその身を惑わし、呪われろ】」


 リンは静かに魔法の詠唱を始めた。


「【偽りの英雄ファルシュ・ユナイト】」


 リンが発動したのは昇華魔法。強化魔法の完全上位互換となる魔法の発動にマロンは驚愕した。なにせ昇華魔法は発現者が少ない希少魔法レアマジックだからだ。だからこそ希少な魔法を使うリンに驚愕したのだった。

 ちなみに隠れているつもりである三人はリンが発動したのが昇華魔法だとは知らない。それもそうだ。マロンは冒険者としての経験故に昇華魔法だと見抜いたが、襲撃者三人組みたいに大した経験もない素人には見抜けるようなものではない。


 そしてリンが1歩踏み出した瞬間に襲おうとした三人組は、次の瞬間リンが来てたことによってその考えは潰えることとなった。


「なっ!?グエッ」


 一人が驚愕の声を発すると同時に蛙が潰されたような声がする。残りの二人がそれを見ると、その一人は完全に伸びていた。


「なっ!?どこに………グアッ」


 今まで三人で難なく嫌がらせすることができていた相手が自分たちを呆気なく蹂躙しているのだ。つまり


「今まで、手ぇ抜いてやがったのか!」


 その事実に気が付き、怒りが湧いてくる。確かに自分たちはEランクだ。レベルも6だ。だが、相手も同じEランクのはず。なのに、なのに。自分たちは同じEランクの駆け出しに舐められていたのだ。これほどの屈辱はない。


「【クリエイト・アーーーース!!!】」


 持てる魔力を使って周囲に砂を撒き散らした。

 意味はないのかもしれない。だが、襲撃者は一矢報いるために、目眩しも含めて砂を撒き散らした。


「来るなら来やがれ!」


「わかった」


 そして襲撃者の決死の思いは、砂が撒きちっていない頭上から攻撃を仕掛けてきたリンによって呆気なく砕けるのだった。

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