厄介事
元気ハツラツ十六話!
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自己紹介を終えた二人は早速森に出かけた。
高ランク冒険者であるマロンはリンを観察するだけでリンの手伝いはしなかった。もし手伝いなんてしたら、リンの実力は測れないし、リンにしこたま怒られるってマロンはあのパウ・ベアーとの戦いで察していたのでマロンはなにもしない。
リンはリンで、一週間前に戦ったパウ・ベアーとの再戦のためにパウ・ベアーを倒しながら森を進んでいる。
「………強いね」
マロンはリンの戦いを見て素直にそう思った。マロンはリンを冒険者になって半月だと聞いていたので予想以上の戦いに感嘆するばかりだ。まあ、リンが強いことはパウ・ベアーとの戦いでマロンは知っていたが。
「そうでもないだろ。俺は、まだまだだ」
だが、リンはそんなマロンの言葉を否定する。確かにリンは初心者冒険者にしては強い方だ。しかし、リンは現状で満足していない。もっともっと上へ、強くなることが目的。今のリンは絶対に強くなったなど、認めないだろう。
「もう、小鬼を殲滅するだけじゃダメだな」
地面に転がっているゴブリンの死体を見つめながらリンはそう呟いた。
薄々勘づいていたことだ。ゴブリン程度じゃ、もうリンのレベルは上がらない、と。
そしてマロンもまた、リンが物足りない表情をしているのがわかった。
「奥に行かないの?」
マロン視点ではリンの実力はDランク下位くらいだと思った。だから、奥へと進むことを勧めたのだが
「………」
リンはどこか嫌そうな表情をしていた。恐れている顔ではない。それ以外に、なにか、心底嫌なものが待ち構えているかのような表情。
(何かを、避けてる?)
リンが心底嫌なもの。相性が悪い魔物だろうか?とマロンは考えて
(でも、そんな魔物迷宮にしか………)
森の中には、そんな頭のおかしい魔物は存在していないと思い出す。
(じゃあ、他のトラブル?それとも
だが、リンならば魔物関連の
(対人、関係?)
人との争いなのだと、思い至った。
「他の冒険者と、なにかあったの?」
だからマロンは、純粋な疑問としてリンに問いかけた。
「………何かあったっていうよりは、なんか勝手に絡まれてるっていうか………」
それが面倒な理由だ。リンの知らない因縁で絡まれている。しかも返り討ちにしようにも三人の連携が普通に面倒だ。しかもリンが反撃に出るタイミングで全力疾走で街に逃げていくんだからより面倒だ。
街中での冒険者同士での争いは禁止されているので、それも併せてより面倒なことになっている。なので面倒事を無くすには森の中で返り討ちにするしかないのだ。
「やっつけないの?」
「………そうだな」
面倒事だ。出来れば関わりたくなかったが、成長出来ないのはもっと面倒だ。
「食わず嫌いしてもしょうがないしな」
それに、本格的に対人戦の経験を積む貴重な体験にもなる。
「倒すか、厄介事」
リンは、本格的に人と戦う覚悟を決めた。
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元々普通の日本人なこともあって、リンくんはまだ人と戦うことに少しだけ忌避感はある
魔物は慣れ
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