焦り

連続更新六話目だよ!


────────────────────


 足りなかった。

 何もかもが足りなかった。

 あと一歩?巫山戯ろ。あと一歩なものか。あいつは、ピンピンしていた。


 それに、あの熊はリンの記憶が正しければCランクの魔物。そんなものに遅れをとっているようでは、リンの目的は達成できない。


「強くならないと………」


 焦りが出てくる。抑えることなど叶わないそれを、意思で無理矢理押し付ける。

 あいつは速かった。未来を見ても追いついてきた。身体能力をあげても、対応してきた。


 攻撃手段が著しく欠けている。威力も足りない。あいつを超えるためにはどうすればいい?簡単だ。ランクアップすればいい。


「試練は………無理だな」


 まず、冒険者になって半月で試練は受けれないだろう。あれは、ある程度経験を積んだ冒険者でなければ受けることができない。ギルドの試練を受ける条件として、三ヶ月以上の冒険者歴とレベルが10を超えていることだ。

 ならば、リンがすることは決まっている。


格上殺しジャイアントキリング………」


 圧倒的格上を倒すことによる偉業。これの条件は、本来勝てない相手に勝つ、或いは一矢報いること。それとレベルが10を超えていること、だ。

 今回、熊の腕を吹き飛ばしても達成されなかった理由はレベルだろう。ならば、また戦えばいい。

 だが、パウ・ベアーと戦った時と比べると、今のリンにはあらゆるものが足りない。

 まず、最後の一撃で武器が破損した。投げナイフもそのほとんどを無くしている。魔力残量も回復したとはいえ心もとない。


「………今日は休むか」


 生き急いでも仕方がないことはリンも知っている。そんなもの前世で既にわかっていることだ。


「明日は武器の新調と、スキルと魔法を調べないとな」


 所持金と相談しつつ、リン はゆっくりと着実に明日の予定を立てていく。

 ひとまずのリンの目標として


「なにがなんでも、一ヶ月以内にリベンジする」


 パウ・ベアーへの再戦を決意し、歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る