不審者………

連続更新七話目!

あ、そうそう

言い忘れてたけど、今回の連続更新。別のアプリで書いてたのを一斉放出してるのもあって後書きで書く予定だった頭の中で考えてた備考とか諸々が抜けてるとこがあるかもです


まあ、ない可能性も全然あるけど

気が付いたら書き足しますね


────────────────────


 あの後宿に戻り、適当に腹を満たして十分な睡眠をとって朝を迎えたリンは現在強大な敵と相対していた。


「………」


「………」


 互いに向き合って無言で見つめ合うだけ。その時間の気まずさたるや。


「えっと………あの………」


 見知らぬ女性に急に肩を叩かれ、振り向いたらそこに立っていた人。

 言葉を紡ぐのがゆったりで、おそらく会話があまり上手ではない人。話しかけたはいいものの、なにを話したらいいのかわからず、戸惑っている少女、マロン。

 だが、何も言わないマロンを、今のリンはこう判断するしかなかった。


 ──不審者………と。


 だが、リンに前世も数えて女性経験がほとんどないのもまた事実。故にリンもどう対処したらいいのかわからなかった。


 話しかけたはいいものの、なんと言ったらいいのかわからず戸惑っているマロン。

 話しかけられたが、相手が中々言葉を発さず、自分自身もどうしたらいいのかわからずに戸惑ってしまっているリン。

 この場は混沌に満ち溢れていた。


 マロンは謝罪をしに来たのに言葉がわからずにほとんど何も喋らず、リンは新しい武器や魔法、技巧を求めていたのにも関わらず呼び止められて困惑。周囲からはあの二人ずっとなにやってんの?という視線が向けられる。


 黙るマロン。困惑するリン。見守る街の人々。この場は混沌に溢れていた。


「………悪いな。用事があるからそろそろ行く」


 今無理に会話する必要はない。そう判断したリンがマロンの横を静かに通って武器屋に行こうと歩を進めるが、


「ま、待って………」


 そのリンの手をマロンが掴むことによって、またもやリンの行動は防がれた。


「………悪いが、話すことがあるのなら、はやくして欲しい。あんたが話すのを苦手だとわかったが、それでも30分近く黙られるとこっちだって困るんだ。それに、俺とあんたは初対面だろ?なにを話す必要があるんだ?」


 周囲の目が女の子に何言ってんだ、という意味を孕んできたが、リンにはそんなものは関係なかった。


(強いな………)


 ただ、出会ってからずっと、リンは彼我の戦力差を見ていた。そして判断した。


(今のままじゃ、絶対に勝てない………)


 マロンとの圧倒的戦力差を。目の前の話すのが下手な少女が、自分よりも圧倒的格上だということを。あのパウ・ベアーよりも強いと。

 だからここでこの少女と話したいという思惑もリンにはあったのだが………


(話さないんだよなぁ………)


 口下手にも程がある。マロンは、リンにまだろくに要件も伝えていないのだ。

 強くなる。リンの目的はそれだけ。そして目の前に自分よりも高みにたどり着いている少女がいる。だから話したい。だけど、話さない。


(ここで急かしても意味が無い)


 逆に、喋ろうとしないということは、自分の中で明確な答えが定まっておらず、変に急かしても逆に話さないだろう。

 だが、それをわかっていても、リンからしてみれば話すことが定まってから話しかけて欲しいとは思う。マロンがリンを見かけ、衝動的に捕まえたのをリンは知らないが、それでも決まってから話しかけて欲しいと願うのは当然のことだろう。


「………取り敢えず、座れる店に行かないか?」


 マロンが話さない以上、リンから言えるのはそれだけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る