第2話④ 美幸、27歳の恋(4)

エレベーターの扉が開いた。

いつものルーティン。


私の部屋までのアパートの外廊下。

コツコツとヒールの音をたてて。


東の端まで歩いていく。


私の足が止まる。

歪(いびつ)なシルエットが廊下天井の照明に浮かんでいた。


ドクンと。

心臓が脈打った。


間違えようのない。

アイツが壁にもたれていたから。


「みゆき・・・・」

掠れた声が響いた。


あれ?

こんな声だっけ。


「みゆき・・・・」

再び聞こえるヤツの声。


ドクンドクン。

私の心臓が脈打つ。


「やっと、見つけた・・・」

掠れた声、結構、嫌じゃない。


「友達に聞きまくって・・・俺・・・探したんだ・・・」

泣きそうな顔、本当にアイツなの?


「ゴメン・・・俺・・・俺・・・」

ああ、頭がクラクラする。


きっと、そう。

これは夢なんだ。


「もう一度、みゆき・・・」

その続きは、覚えていない。


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