2-1 いつもの日常
朝起きてから学校に辿りつくまで何一つ変わらない。強いて言えば、散り落ちた桜花の
放課後訪れると敷き詰められたように自転車の並ぶ駐輪場も、今は点々としており圧迫感を感じない。誰ともすれ違うことなく、 外側に開かれた玄関扉を抜ける。
下駄箱には緑のラインが入った上履きがまばらに並んでおり、上の階から聞こえるバスケットボールの音だけが空間を満たす。靴を脱ぎ、大理石の段を上り、かかとを鳴らして砂を落とす。冷たい床が、靴下越しにもひんやりと気持ちいい。
要の背丈より大きい下駄箱の最上段。少し背伸びをした位置に要のスペースがあり、その二段構造になっている上段へと靴を押し込む。かかとを指先で押し込むようにスライドすると、どことない違和感を感じ、手を止めた。
(ザリッ、いやザザッ?)
人から貰ったシャープペンシルの芯が手になじまないような、微かだが気になる違和感。
違和感の正体を確認するため上段から靴を取り出すと、靴裏の溝に引っかかって何かが滑り落ちてきた。
「紙?」
むき出しの状態で入っていた一枚の紙。薄いオレンジに、四隅にはデフォルメされた動物のキャラクターが所狭しと並んで描かれていた。紙面積の半分以上を埋め尽くすファンシーな動物に面喰いつつも、本文へと目を向ける。
表には「先輩へ」、裏には「放課後、屋上で待っています!」と一言。表と裏を使った表裏二面活用で文章は書かれており、そのどちらにもファンシーな動物たちが描かれていた。
くまなく目を通してみても、差出人の名前は見当たらない。一瞬、動物の並びが暗号になっており、名前の頭文字を数秘術のごとく規則的に並び立て変換すると意味のある文章になる、と最近読んだ小説のトリックに当てはめてもみたが、時間の無駄だった。
「はぁ……、またか。」
文面以上の意味がないことにため息をこぼす。
手にした紙を鞄にしまい、教室へと足を進める。
やはり、今日も
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