Epilogue・後編

「うちの……ああ、まだなんか恥ずかしいな……会社の工場で直しておいた」

 ルインは、ダイロン=ザシアの飛行機を修復し持ってきた。

 これなら陸路を突っ切って、安全に行けるかもしれない。

 僕はルインに最大級の感謝を捧げた。

「いってきます」

「ああ、行ってこい。二人をここに連れてきてくれよ」

 ルインの手を握り、僕は機体に乗り込んだ。

 

 

 

「エイトは、オクターブがどこまで理解していたと思う?」

 空の中、ふと彼女に尋ねてみた。

 寒い空気に窓が曇っていて、視界が悪い。

 こういうところは、後々改良していくべきだなと思う。

 気を付けて操縦しているが、僕は聞けずにいた疑問をふと彼女に聞いてみた。

「本当に崩壊させる気でいたのかということですか? もう何日も彼女の言葉を聞いていないので、本当のことは分かりません。ですが……」

 ふと彼女は言葉を切った。

 僕は、後ろの席の彼女に振り向く。

 その顔は、穏やかに見えた。

「私の母は、そんなに悪い人ではないように思えるんですよね」

 エイトに感情はない、表情もない。

 だが、本当に穏やかに言った。

 僕もその言葉に嘘はないと思う。

 

 

 

           ◇

 

 

 北の高い山の上に、目的の場所はある。

 まだ雪深く、酷い寒さと横殴りの吹雪。


 遭難してしまいそうになりながら、もう少し先にある、目的地を目指す。

 谷の切れ間に建物があるのを発見した。

 左右の斜面に蜘蛛が巣を張るかのように、細い鉄骨を張り巡らしたような不思議な建物が立っている。

 吹雪の中、目を凝らしてみると一番下に小さな館がある。

 そこが本館のようだ。


「すみません、ドアを開けてもらえませんか。寒くて……」

 僕は必死にドアを叩く。

 その声に反応したのか、いきなりドアが開いた。

「はい。お待ちしておりました。ラック様」

 声の主は、僕の両親ではなかった。

 美しい人。

 姿かたちは、エイトに似ている。

 だが、今度は、男の声だった。

 僕らは彼の案内で、館の中に招き入れられた。


「私は、セブンと言います。今は、私一人でこの建物を管理しています」

「君、一人?」

「ええ、残念ながら、お二人はすでに出発を……どこに行ったかは、中を捜せばわかるのかもしれません」

 僕は、エイトの手を握り、その大いなる謎の中に踏み出す。



「ようこそ、ラック様。風鈴の館へ」

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