最終楽章・12

 彼女を家のベッドに寝かせる。

 まだ目は覚めない。

 彼女はここにいる。

 信じている。


「目を覚ましてくれよ……エイト」

 僕は、彼女にキスをする。

 まるで、おとぎ話。

 最後の最後で、僕はそんな奇跡に頼るしかない。

 科学も技術も、勉強も何もすべてを放り捨てて、根拠のないキスに頼るなんて。

 でも――




「ラック様」

「エイト……」

 彼女は、ゆっくりと目を開けた。

 僕は、彼女を抱きしめる。

 ありったけの愛で。

「夢を見ていました……わたしとあなたがずっと幸せに暮らす夢でした」

「それは、たぶん……」

 僕の言葉は、彼女の唇に塞がれた。

 



 それは、母が娘に授けた『最後の予言』であることを僕は願う。

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