最終楽章・9
彼女は、光り輝いていた。
眩く、美しい。金色のドレスに身を包む、彼女。
「姫を助けに来た勇者のつもりか? 残念ながら、助けるべき姫は憎むべき魔王の手先だったという救われぬ
「エイト……じゃないか、オクターブが喋っているの?」
「その通り。我が作られたのはこの日のため」
「……デガルド、さんは」
彼女は、エイトの涼やかな顔で言った。
「風になった……のやもな」
「もう、やめよう。こんなことは……」
僕らの目の前を風が流れていった。
飛行機が上空に集まりだしている。僕がいることなんて気にも留めていないだろう、新しい兵器と目されるもの、新技術の開発上煩わしい技術の街を滅ぼすために爆弾は投下される。
「耳を塞いでいろよ」
オクターブが低く呟いた。
「なるべく、上にしか飛ばさないつもりだがな――」
僕は言葉を聞き終わるよりも先に、耳を塞ぎしゃがんだ。
耳を塞いでいようとも、衝撃と熱さはここまで届いた。パラパラと破片も僕の上や、塔の上へと降り注いだ。
持ってきたノコギリを盾に、やり過ごす。
だが、このままではいけない。
僕は立ち上がる。
そして、空を見上げる。
青い、空だ。
その真っ青な空に絶望する。
誰も、いない空に。
「科学と戦争の行く先は、惨たらしい悲劇しか生まれない。今のように飛行機が空を飛び交い、人間の内部までを破壊しつくす巨大な爆弾を互いに落とし合う戦争だ」
「それは、これから起こること?」
「いいや、すでに向こうの世界で起きたことだ」
「向こうの、世界?」
オクターブは、何を言っている?
向こうの世界――とは、なんだ?
「それでも見せかけの平和を作り出すことは可能だ。現在の世界の姿をまったく新しい形に作り替える。今とは、まったく違う世界に」
「何を言っているんだ?」
「黙って見ていろ。我は、それを成すために作られた」
塔が作られた理由を、塔自身から聞くことになるとは思わなかった。
だが、一つ謎が残る。
「製作者は、なんで早々にそれを実行しなかったんだ?」
「あの男は、このプログラムが発動した後で求められる結果が得られないと算出した。延々と繰り返し、作り上げた結果ですら思って通りにはならなかった。それが彼にはどれだけ悔しいことだったか」
「なら、それは今でも……」
「しかし、もうそれは発動してしまっている。この子が玉座に座った時点で。それは我の意思ですらなく、あの瞬間から誰にも止められない」
彼女は、目を閉じる。
僕に手で、離れろと指示をする。
目を開き、彼女は空を見上げた。
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