最終楽章・8
コールがいうには、現状の打開に一つ曲が必要なのだとか。
「何か、知りませんか? 何か塔に関連する曲だと思うんです」
「これは……間違うと、どうなるだろうね」
「恐らくですが、期待通りの結果をはじき出したとして、街の破壊は現状維持。これがもし間違っていた場合だと関しては……塔を残して、ここら一帯が吹き飛ぶ程度ですかね。ははは」
「笑ってる場合じゃないよ! 責任重大じゃない!?」
僕は記憶の中から、曲を探し出す。
僕の曲、塔の音楽……原曲『1』、これは違う。
コールの歌……
歌……
「『迷うなら、あなたの心に従いなさい』――」
「え?」
コールは目が点になっていた。
僕は頭の中から、一つの曲を導き出す。
「これだ。間違いなく」
ポケットの中にあった母の手帳、その中にきれいに閉じられていた紙を広げる。
つたない字で、一つの短い曲が五線譜に記されている。
「信じます。すぐに、これをオルゴールにしましょう」
「うん、僕も手伝うよ」
二人の手によって、すぐさまオルゴールに曲がセットされた。
正直な話、彼がどうして開発室にいなかったのかが疑問に思われるほど、やはり彼の手は技術者の手だった。だが、彼もまたデガルドと同じように、塔の秘密の方に心を奪われていたのかもしれないとも思うのだ。
僕は、運命の流れの中で、正しく生きることができていただろうか。
そんなことは、僕らにわかる訳はないけれど。
街や他国との問題は、コールとルインに任せ、僕は塔へと向かった。
いや、もうそこは塔ではない。
真鍮色の円盤――ステージの上だ。
片手にはオルゴール、片手にはノコギリ。武器はない。
僕は、彼女を救う勇者になれるのか?
さらにはサイレンが再び、街に轟く。東の空に飛んでくる機影が見える。また送り込まれたダイロン=ザシアの飛行機たち。二十機ほどの機影は、また胴体の下に爆弾がついている。今多くの者が、どうやって死んだのかを彼らは知らないのだ。
すぐ目の前で、一機また一機と爆風に変わる。
次々に人が、死んでいく。
止めないと。
ステージの中心に立つのは、一人の歌姫。
「エイト……」
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