第25話 つぶらな瞳の性倒錯野郎からの招待
糞平が俺の名を叫ぶ声が頭から離れない。
糞平が組み伏せられながらも抵抗する姿が頭から離れない。
糞平の様子からすると奴の両親とペヤングが病院へ帰ろうと呼びかけていたのも納得なのだがな、どこか釈然としないのだ。
「シロタン、見たよ。
凄かったね」
ジージョさんの声だ。
俺の前方にはジージョさんとパリスがいた。
「ジージョさんとパリスか」
ジージョさんは神妙な面持ちなのに対し、パリスはいつもの半分にやけたような表情だ。まぁいつものパリスだ。
「僕は糞平とそれほど関わりはないけど、あいつはおかしくて有名だったよね。
ああいう危険な奴は病院入れたら出て来れないようにしてほしいよ」
図書館の前には騒ぎを聞きつけた学生達が大勢集まっていた。
「何かあったの?」
高梨妹がどこからか現れた。
「高梨さんか!
高梨さんは糞平って奴、知ってる?」
ジージョさんの表情が明るく、それでいてどこか好色そうな色を帯び、声色も高くなる。
「糞平?知らない」
そんな高梨妹の言葉にジージョさんは得意げな顔をし、
「糞平っていう挙動不審な性犯罪者みたいな奴がいて」
糞平は爆弾作ろうとして失敗する自爆系不審者であって、性犯罪者系はジージョさん、あんただろうよ。
「病院に強制入院させられていたらしいんだけど、脱走してここに来たところを捕まったんだよ」
「へぇ、そんな人がこの大学にもいるんだね」
「それはもう凄い大捕物だったよ。
高梨さんも変な奴に気を付けてね」
だなんてジージョさんはしたり顔で高梨妹に言ってるがな、ジージョさんこそ変な奴だろうよ…
「ところでシロタン」
ジージョさんが不意に俺へ話を振ってきた。
「さっきは糞平の奴と一緒だったみたいだけど、シロタンは糞平と仲良いの?」
「仲は悪くないですよ。昨日の夜は」
ここで俺は思わず口をつぐむ。
明らかにジージョさんは糞平へ嫌悪感を持っている。
それは置いておくとして、昨晩は糞平の家で過ごすことが出来たのだが、奴がああやって連れ去られた今、俺は今夜泊まる場所が無くなったことに気付いた。
俺は今夜からどうしたらいいのか…
「高校で同じクラスの同じグループでしたからね」
「そうなんだ。でもあんな奴とはつるまない方がいいよ。
君まで糞平の仲間と思われるからね」
確かに糞平はおかしいし狂っている。
だとしてもジージョさん、あんたよりはマシだ。
少なくとも糞平は公衆の面前で、劣情を露わにはしないからな。
「そうですね、気を付けます」
と気の無い返事を返すのだが、そんなことよりも今夜はどうするかの方が重要な課題だ。
まぁ、いいか。単刀直入に探りを入れてみるか。
「ジージョさん」
「なんだい、シロタン」
「ジージョさんの知り合いで、俺をしばらく泊めてくれるような人はいませんかね?」
ジージョさんは驚いたような顔をした。
「え?どうしたの?」
「色々と訳ありで、しばらく実家に居られないんですよ」
「それなら僕の家へ来る?」
俺はジージョさんの知り合いで、とは言ったが、ジージョさんの家へ行きたいなどとは少しも思わないのだがな。
全く趣味ではないAVを見せられ、ジージョさんの猥談に付き合わされるのなら、糞平の陰謀論に付き合わされる方がまだましな気がする。
「我ながらいいアイデアだよね!
僕は一度、シロタンと腹を割って話をしたかったところなんだよ!」
ジージョさんが満面の笑みを浮かべ、その気になり始めた。
嫌な展開だ…
「私の家へ来る?」
と何者かが口を挟んできた。
俺とジージョさんが同時にその声の主を見る。
高梨妹だった。
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