第11話 ジャパンフォレスト

次の日の朝、起きてからライアンに謝った。


「昨日は役立たずでごめん…」


「別にかまわん」


ライアンは目尻に皺を寄せてフッと笑った。


「川で顔を洗ってこい。朝飯にするぞ」


俺は寝坊をしたようでライアンは朝食の支度を終えていた。

顔を洗って戻り朝メシを食べながらライアンと今日の予定を話した。


「だいたいこの森は周った。しばらくは拠点との往復で物資の整理をするか」


「うん。あ、でも俺大丈夫だよ?ちょっと昨日は取り乱したけどこれからはちゃんと出来るし」


ライアンは地面に地図を描き出した。


「この森で今まで発見出来た拠点は3つ。森の中央からだと東、西、南の三点を結んだ三角形上だ。おそらくだが、その三つの広場の上空と日本に出来た穴が繋がっている。日本のどこかの穴に落とした荷物は三つの拠点のどれかに落ちてきていると思われる。あくまで俺の想像だがな。」


そうなのか、ライアンがいてくれて良かった。

俺だけなら一箇所の拠点で満足して終わってたな。


「覚えていたらでいいんだが、ゆうきが穴に落ちる以前、日本で穴に落ちた人数はわかるか?」


ん?俺の前?


「ええと、確かニュースになったのは2名だった」


「なるほどな。昨日発見した2名は恐らくそのふたりだな。落ちた後、闇雲に森を彷徨ったんだろう。迷ってそのまま…」


「う、うん。そうなのか」


「最初の頃に落ちたやつは不運だった。が、今はゆうきによって拠点も整理されたし今後落ちてくるやつは助かる可能性は100%だ」


「俺って言うかライアンのおかげのが多いけど」


「で、だな。ゆうきに頼みがある」


ライアンが真剣な顔で俺を見つめてきた。


「うん、何?」


「一度、アメリカの森に戻りたい」


「アメリカの森?」


「ああ、ゆうきの落ちたこの森はジャパンフォレストと名付けた。俺が落ちた森はアメリカンフォレスト。勝手に決めた」


おお、ジャパンフォレスト、カッケェな。


「こっちは今後落ちてくるやつがいてもすぐに死ぬ事はない。水も食料も物資も十分にあるし貼り紙もしてある。アメリカンフォレストも拠点を探して何とかしたい」


「そっか、いいよ」


俺はもちろんすぐに了承した。


「ここから森を出るのに途中の野宿を入れて1日、ジャパンフォレストからアメリカンフォレストまで草原を2日。アメリカンフォレストで拠点探しに1〜2週間、戻ってくるのにまた3日。正味20日はここを留守にする事になる」


「うん、大丈夫だよ。1ヶ月ほど留守になりますって拠点に張り紙しておけばいいし。腐っちゃう食べ物はしょうがないよ。生モノ落とさないでって伝えられないからね」


「心配なのは、あっちでも死体を発見する事になる。アメリカじゃ結構な人数が穴に潜ってるからな」


ライアンが心配そうに俺の顔を覗き込んだ。


「うん、大丈夫!昨日はちょっと取り乱して恥ずかしかったけど、今度は頑張れるし!」



それから俺たちは拠点ABCから物資を持ち帰り、アメリカンフォレストへ行く準備を始めた。

向こうで物資を発見出来なかった事を考えるとこちらからある程度の物資を持っていく必要があるからだ。


1ヶ月分の物資を持っていくのは不可能だ。

となると、向こうでの探索期間を短縮するしかない。

向こうの森の広さが不明だがもしこちらの森と同程度の広さとしても、最低でも片道4日、帰り4日、探索2日の10日間か。

それならなんとか持ち運べる。

向こうで物資を発見出来たら探索日数を延ばす、という事に決まった。


リュックは自分がいた拠点Aでいくつか見つけたし、拠点Bには小さい台車、拠点Cには何と!スーパーの買物カートが落ちていたのだ!中身入りで!

これは物資を運ぶのに役立った。

まぁどちらもデコボコ道や木の根っこには苦労させられるが、背負って全てを運ぶよりはラクだ。


カートと台車はアメリカンフォレストへ行く為の水や食糧を乗せるのに大いに役立った。

落としてくれた方、ありがとうございます。


「日本人ってのはすごいな…」


ライアンは感心していた。


そうして準備を終えた俺とライアンは翌日早朝に、西に向けて出発した。

西の草原を突っ切り、アメリカンフォレストへ。

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