第37話 チームファイト開始

 深淵祭の研究の部を終えて、学友たちとゲンガンと一緒に合金製の箱風呂に入っている。初めてお互いが会った時に、ゲンガンがゴブリンの姿と思われて驚かれたが、ビキンのダンジョンの波の騒動で呪いにかかった冒険者の知り合いとして説明をして納得してもらった。

 ゲンガン自身も、普段は血の濃い獣人に見えるように魔道具を装備していたが、王都には魔法師が多すぎて姿を見破られてからの説明が面倒になって、結局外に出る時は仮面と外套の怪しい魔法師姿が多くなっている。

 風呂に漬かりながら今日の発表を思い返すが、自分たちの研究の内容なんて世界のどこかでは同じようなことをやっている人だっているだろうし、考え方もありふれたものであるだろうが、コロンブスの卵と同じで先に研究として発表してしまえばこちらのものだ。

 それに、個人主義の多い魔法師たちが多くいて、補助魔法が得意魔法の魔法師がメインの攻撃役に強化と支援を行うことがあり得ても、わざわざ補助魔法の部隊が集まって1人に集中して力を集めることはしないだろう。

 ビキンのダンジョン入り口前の戦いを見て、あくまで冒険者はパーティ単位で5、6人の中に補助を行う魔法師が1人いるかどうかだったし、魔法師の部隊も火力優先な様子だった。兵士団と騎士団の組織が行う採用条件と部隊運用は知らないが、上には凄い魔法師がいて魔道具もあるためわざわざ人数を掛けて時間を無駄にかけてするの変だと思われているもしれない。

 それに、王都の魔法師学校で過ごしてみて感じることは、多感な時期を過ごす若者が凡人の魔法師は早い段階で才能の違いを思い知らされて、挑戦をしようとしたり格上を倒そうとする気力は無くなっているのだと考える。


 研究の部を終えて、それからもゲンガンの通う道場やその知り合いの道場の人たちにも協力してもらい、我々のチームは実践の場を想定した訓練を続けていた。道場と言ってもかなり規模の大きな所は闘技場のような施設を保有しており、その場所で四方八方から攻撃されて耐える訓練を行ったり、壁役が1人ずつ孤立して攻撃を受ける訓練をしたり、攻撃役やその他の役がやられた場合にマーディンと自身が穴埋めをする訓練を行った。

 想定するだけでも状況が多くなるし選択できる作戦も少ないが、動きながらも耐えながらも魔法の行使を集中を切らさずにすることだけは意識してきた。一方的にやられるだけで自信は一切無いが、少しずつでもチームとしての連携や実力は伸びていると思うし、後はやるだけだと試合当日の開始直前の最終確認に魔法師ギルドの事務へ向かう。


「よく逃げずにやって来たな」


「今日はお手柔らかに頼むよ」


「お前らは父上たちも怒らせたから完膚なきまでに叩き潰してやる!!」


 指名試合開始前にギルドの職員を仲介に、出場メンバーの最終確認と注意事項を受ける。壇上に用意される空間内には、専用の魔道具を身に着けた者だけ中に入ることが出来る。その空間で、魔道具が検知する色が青色・黄色・赤色と変化していき、赤色で攻撃を受けて限界を迎えると命の保護のために空間から出される仕組みとなっている。

 今回の最終確認以降に試合の棄権や装備の変更は許されず、魔法師ギルドと本部ギルド長に誓って不正無き試合を行うことになっているが、それらの説明が終わるとムドの方からちょっかいを受ける。

 彼らの姿は、見る限り発動体に変化はないが着ている服がサイズが合っていない急いで用意した様子が見られる。その服の意匠も白銀の布地に金と銀色の模様が入ったような高そうな服で、なんらかの魔法的メリットを受ける装備なんだろうなとは思う。

 こちらとしては、最初から徒歩か三輪車か自転車で高級スポーツカーに勝つつもりで来ているし、今更オプションパーツを変えられても気にはしない。運と気合と運転手の実力勝負で勝つしかないと決めているのだ。


「指名試合の第1試合の賭けはまだ締め切り期限内ですわー。よかったら賭けて行ってください」


 ムドとその軍団は試合直前でも怒らせられるから、聞き覚えのある専属受付嬢の彼女の声が聞こえる場所に近づく。どうやら自分たちの指名試合は、研究の部の発表と引き続き第1試合にいつの間にか組まれているようだ。


「これって、賭けは成立するんですか?」


「勝者側には最低1.1倍以上の金銭か、ギルドからの貢献の免除等の何らかのメリットが与えられますわ」


 彼女の目の前に置かれた大きな天秤の魔道具を見る。右側が我らがチームの掛け金で天秤の皿には硬貨が1枚だけ載っているが、左側のムドのチームは既に大量の硬貨が載せられていても天秤の皿上の空間は拡大されているようで溢れていない。空に近い右側の皿が大きく上に傾き、表示されている倍率は1000倍となっているが1枚だけ銀貨が入れられている。新たに賭ける人間たちも、金貨を平気で1.1倍と表示されているムド側の左の天秤の皿に放り込んでいる。


「この硬貨を賭けてもいいかな?」


「もちろん可能でございます。勝者側に足りない分はギルドで調整いたします」


「じゃあ、これで賭けるよ」


 硬貨を天秤の皿の上に放り入れると途端に、右側の皿が下に傾いて逆転し、表示されていた倍率は逆転してしまう。価値を客観的に知る機会になったが、自分にとっては聖金貨を負けても手放せるし、残り1枚を持っていたらブル教相手には寄付効果が期待できるが、これは我々のチームが勝つという意思表示だ。

 貴族社会では聖金貨を賭け事に持ち出すなんて評判は地に落ちるはずだが、敵の住まう王都に乗り込んでいるわけであるし、今更評判なんて気にしても仕方がない。それに、傾く天秤を見てムドたちや他の人間は左側の皿に金を積み始めており、絶対に勝てる勝負と思って破産する人も出て来るかもしれないが彼ら個人のの責任で気にしないことにする。


「おっちゃん、聖金貨なんて持ってたのかよ」


「貰いものだけどね。それに喜べ若者たち、これで発動体が手に入るぞ」


 賭けが成立しても旨味が無い状態であったのを、聖金貨の価値を分かっていないおっさんが倍率を狂わせてムド側に賭ける人間が急増し、どうにか双方共に勝ったらそれなりの旨味が出る状況になった。だが、とんでもなく価値のある聖金貨を賭けているこちらが勝てばほぼ1人勝ちだ。ブル教に囲い込まれなくてもチームとしての勝利で金を得られるんだから、全員が何の負い目も無く発動体を手に入れることが出来るはずだ。


「負けるのに無駄に金を賭ける馬鹿がいたとは助かるぞ」


「お互い様だな。それに捕らぬ狸の皮算用って言葉を知っているかい?」


「…フン、行くぞお前ら」


 ムドは軍団を引き連れて会場入りのために、離れた場所にある入口へ移動して行く。発動体を買えると皮算用を行っていたおっさんもどこかにいたが、油断せずに行こう。




『只今より、深淵祭の実践の場の指名試合である第1試合を行います。実況はわたくし、とある魔法師の専属受付嬢と解説は…』


『ビキンの冒険者ギルドのギルド長をやっているローザだ』


『ななな、なんと今回は、過去の深淵祭の実践の場で敵と味方も殺し過ぎてギルドを追放となった炎熱のローザさんを解説に迎えてお送りしています』


『深淵祭に限っては魔法師ギルドへの出入り禁止は関係ないから、毎回見に来てはいるけどね。それにアタシは深淵を目指す気概と覚悟のない奴は、間引いて当然という考えは変わっていないよ』


 ムドたちとは別の入り口である入場口で待機しつつ、観客の歓声と実況と解説の話す声が聞こえて来る。今回用意された実践の場の空間は、大きなドーム状の闘技場のような場であり、魔法師以外の王都の住民も数多く観客席に集まった場の声は、こちらの内臓を振動させるような衝撃を与えて来る。

 過去に観戦をしたことがあるビビとスタインの話では、実況と解説の声は試合中の空間に入った参加者には聞こえないらしいが、試合前から聞き覚えのある実況者と解説の声で集中力を削がれている。


『そーれでは参加者の入場となりますが、人数差の関係から西口からの組の入場となりまーーーす!!早速目に入りますのは離れた位置からも分かる巨躯、それに続く先頭と比較すると僅かに小さな差の巨躯と肉の塊が続いております』


『体格もある意味では才能だから、アイツらも鍛えていたら兵士団か騎士団の実践大会でいいとこ行ったんじゃないか』


『実況として組の構成員の違いが分かっておりませんが、登録名が最強魔法師軍団の一番大きいのが代表であるムドとしか覚えてませんが、それでいいのではないでしょうかーーー!!』


『…それは実況としてはどうなんだい』


 滅茶苦茶なことを言っている実況のことを気にしてはいけないが、ムドたちが名乗る最強魔法師軍団の登録名は成人を迎えた人間には厳しいのではないかと思ってしまう。会場のどこかにいる本部ギルド長の前で最強を名乗る勇気も凄いが、自分たちがムドたちに勝てば最強を超える者として次に最強を名乗ることになるのだろうか。考えるだけで緊張以外の震えが来てしまいそうだ。


『続きましては、東口より今大会の眠れる竜とも眠れるスライムとも評される組の入場です』


『落差が酷いな』


 いよいよ入場のタイミングになったが、研究の部の発表前のような緊張は全員に無いと思いたい。この場に負けるつもりで来ている奴はいないし、嫌になる程の訓練を行って来たから後は理論を行動で証明するだけだ。


「これまでの訓練を思い出したら、実践の場なんて余裕だよ」


 4人と目を合わせて頷く。今回の実践の場に臨むにあたって、作戦を事前に自分がある程度考えたが、チームとして指揮するリーダーは異なるため入場の順番は自分からではない。先に入場していく背を見送る。




『まず、先頭として現れたのは組の構成員の中で唯一眼鏡をかけていることから、火ネズミの吐息の頭脳担当と思われる………マーディンだーーー!!!』


『さっきの入場と情報量に差があるね』



『続いて現れたのは、強化魔法の使い手で身長に比べて細すぎる見た目から、一部の魔法師たちの間では筋肉をその強化魔法で常に圧縮していると噂されている………スーターイーンンンン!!』


『…見る限り噂は嘘だね』



『3人目はこの男、以前は試合相手の最強魔法師軍団にいてもおかしくなかった姿が、深淵祭への参加登録後から容姿が変化しているため替え玉説のある補助魔法の使い手………ポッシューー!!』


『まず本人が痩せたと考えるべきだろう』



『そして4人目はこの男の子、可愛らしい幼女のような見た目に騙されると痛い目に合うのは間違いないし、あえて痛い目にあって火傷したい男の人も多いはず。組の構成員の中で唯一攻撃を担える熱魔法の使い手……ビーーービーーーー!!』


『見た目はともかく、攻撃役として組の主戦力になるだろうね』



『最後に現れますのは商人としては魔法師ギルドと専属契約を結び、冒険者としては3期連続の最速ランクアップの記録保持者。そーーーしてーーーーー、魔法師としては本部ギルド長の直轄である職員が担当として専属受付に付いている謎の人物。今日はどんな魔法を見せてくれるのかーーー………ターーナーーカーーー!!!』


『アイツはビキンのダンジョンの波でも活躍して、勇者パーティと共にサブダンジョンのコアを破壊するのに貢献した男だな』


 あまりにも変な盛り上がりを強いる実況を聞きながら、プロレスラーの入場じゃないんだからと思いつつも観衆の声に応えるように右手を挙げながら入場する。適当なことを言われたチームメンバーの彼らにも同情するが、何故自分だけはピンポイントに事実を言ってくれるのか止めてくださいとしか思えない。

 そうやって実践の場の試合を行う空間が設置された舞台中央に上がると音を遮断しているようで、観衆の声や実況と解説の声も聞こえなくなっている。審判役のギルド職員を挟んで、向かい側にはムドとその軍団が立っているのが見える。


「研究発表の場では調子に乗っていたが、負けるのを目の前にして怖気づいたか」


「いやなに、次の2回戦の相手がとても勝てそうにないから全員落ち込んでいたんだよ」


 舞台中央からでも見える試合進行表を見ると、他の試合の組み合わせも決まったようで我々の勝者が戦うことになるシード枠が王子たちの組になっていることに気が付く。あわよくば次の戦いも勝利か善戦をしたかったが、同じような表情からチームの他の全員も次の2回戦に当然進むと考えているのは嬉しくもある。

 審判の手前お互いに余計な口を叩かないが、ムドたちの目は獰猛な光を湛えており今にもこちらを殺そうとするような意思が感じられ、もう怒らせる必要はないなと思う。審判役から渡された魔道具を両手首に嵌め、説明を聞くながら開始を待つ。

 両手が損傷して魔道具が破壊された場合は、離脱を申し出ることでその参加者は空間外に出ることが出来る。試合開始前に魔力の高まりを確認すれば、罰則として手首の魔道具が感知して色が青から黄色に変わる。相手を殺した場合は、問答無用でその人物が所属する組は敗北となる。空間に入ってからその環境と勝利条件となる規則を知ることが出来る。3回の戦いのうち先に2回勝った方が試合全体の勝者となり、1勝ずつの状態で同時に勝利条件を満たした場合は延長戦が行われる。

 実践の場で試合が行われる空間は特殊な環境となっており、空間から出ると減った魔力は元に戻るが、中での魔法行使で消費魔力の減少や魔力の最大値が上がることはないらしく完全に戦いに魔法を使うコツを学ぶためのものだ。深淵祭開始当初からある機能らしいが、死人が出る事よりも魔力の消費を気にする所が魔法師らしいなと考えてしまう。


『この試合については解説役としてはどう思いますか?』


『どの環境でも火ネズミの吐息の方が不利だよ』


『その理由は何故でしょうか?』


『魔法師としての力量と発動体と身に纏う装備の差から、常に1対1は勝てないだろうから集団戦に望みをかけるしかないが、環境によっては不利な状況も容易に出て来る。それに比べて肉の軍団の方が1対1で有利で5対1も戦いが成立する戦力差だから、斥候なんかを安全に出すことが出来る戦場を有利にする要素も多い』


『なるほどですね。それでは軍団が勝つと?』


『それは決まるまで分からないよ』



「それでは、両組空間に入ってください」


 審判の声を合図に、5人ずつがお互いに前に出て来て、目の前で黒色に渦巻く空間に近づいて入って行く。気が付いたら目の前は岩肌の正方形の空間になっており、幸いなことにチームメンバーも近くにいた。


《今回の勝利条件はお互いの組の代表者をどちらが先に倒すかです。代表者は魔道具に魔力を流してください。残り30秒》


「予定通り、作戦1で事前に決めた代表者にしよう。相手の代表者はムドを優先的に狙おう」


 今回は標的を壊すのを競争する条件ではないため、部屋の角を背負うようにビビを最後方に配置し、ポッシュとマーディンを中衛にし、前衛に壁役の自分とスタインが立つ。部屋には2カ所他の部屋につながるような部分があるが、こちらはカウントが終了次第魔法の準備を始めるだけだ。

 そうして空間に響くカウントの秒数が0になると、開始と同時に途端に感じる、風の魔法と思われる空気の流れを全員が知覚する。


『おおっとー!!まずは軍団側の斥候役が風魔法を放つー!!それに対して、火ネズミの吐息側は部屋の角を背負う形で迎え撃つ準備をしている』


『今回の環境は実際のダンジョンでたまに見る箱型ダンジョンの形で、全体では正方形の部屋が9つ設置されているため接敵する時間は短いな』


 風の魔法がすぐに飛んできたことから敵側も近くにいるため、すぐに攻撃を受けることになるだろう。だが、こちらも散々訓練をして来たし、初撃は同時になりそうだ。そう思っていたが、防御魔法の上からでも感じる衝撃に驚く。


『これは軍団側が部屋の外から遠距離の魔法を放っているようだー!!』


『有効打にはなっていないが攻撃を受け続けるのは不味いし、火ネズミ側の攻撃役の魔法が相手に届くかも心配だな』


「おっちゃん、交代だ」


 最初はスタインが中心で敵の魔法を受けていたが、防御魔法の限界もあるため自分が前に出てスタインと位置を変わる。無駄に上がったステータス上の体力の数値の恩恵もあり、打たれ強さも上がっているが動体視力も向上しているため、自身の防御魔法で敵の火の玉を自ら受けに行って後ろには逸らさない。


『やはり指示役は眼鏡だったー!!彼らの研究発表にあった役割理論を活かして、巧みに魔法をいなしています』


『冒険者でいう壁役が入れ替わることで、防御魔法の効果が減衰しないようにしているな』


「おい!!お前ら手間取っていないでさっさとやるぞ!!」


「ビビの準備が出来た。おっちゃんと俺で牽制をやるぞ」


 格下に時間をかけているのは我慢ならないのか、一向に壁役を倒せないのに苛立って2方向からムドのチームが突入して来るのを目にする。マーディンから牽制攻撃の指示を受けて相手の防御魔法役らしい先頭の男に、自分とマーディンが熱魔法の特に強化されていない攻撃を行う。


「くそっ、やられた」


『なーぜーだー!!軍団側の防御役の足が溶けていしまっている。火ネズミ側が放った魔法も見る限り弱く、防御出来ていたと思ったのに、気が付けば魔法が通っているー!!』 


『攻撃役の魔法師が防御魔法の偏りを狙ったな』


『それは一体何でしょうか?』


『防御魔法を使用する際に最大限に効果を高めようとすると、その攻撃に向かって魔力の膜を集めるように偏らせるのが普通だ。効率を考えると人間の周囲全方向を球状に等しく防御する者はおらず、見せかけの魔法に反応した隙に薄くなった足の裏と地面との接地面の隙間から熱魔法を仕掛けたんだな』


 相手の防御役は失態を自覚するが、遅れて来る痛みで意識を失って空間から離脱となる。これで5対4となるが、相手が近づくことで攻撃の密度も上がり、自分よりは打たれ弱いスタインの腕の魔道具の色が黄色になっている。ムド側もそれに気が付き、こちらの次の攻撃への準備が出来ていないだろうとスタインへ向かって攻撃を集中させる。


「すまん、自分はここまでだ」


『ここで耐えていた火ネズミ側も防御役のスタインが離脱となるー!!』


『岩の玉の打ち所が悪くて内臓をやられてそうだが、魔道具が赤色になっても最後まで膝をつくことなく耐えたな』


『これで状況は4対4で互いに防御役が落ちたと思いますが、戦況をどう見ますか?』


『火ネズミ側は攻撃役が再度熱魔法を通すのに準備時間が必要だが、軍団側は専門魔法ではなかろうが片手間で防御魔法と攻撃を両立させるだろう。あいつらが着ているのは兵士団と騎士団の魔法師部隊で採用されるような装備で、魔法への抵抗力と魔法行使の効率を高める物だから、短期戦と長期戦の両方で差が生まれるはずだ』


「作戦1から2になるかもしれないけど、ビビとポッシュはそのままで俺が前に出る」


 マーディンは宣言すると自分と立ち位置を変えながら、壁役になる。彼は己自身とこちらに回復魔法を使用しながらも、ポッシュに対して強化魔法を使用して作戦2の準備も並行している。訓練開始から誰よりも器用に魔法を行使していたが、チームの穴を埋める役割をしていたことで広い視野も得て、理想的なリーダーと言える。

 だが、短時間の複数の魔法行使は、1回で使用できる魔法の魔力量に制限はお互いにあるが、魔力の最大値は制限を設けられていないためこちらが不利だ。ビビか作戦2が成功してくれと願いながら、激しくなるムド側の攻撃を受け続ける。頼む、間に合ってくれ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る