第4話 言語習得の壁

生後6ヶ月目。

声をセーブして出すことができるようになった。今までは0か100かだったから、疲れたんだよね。

そして今は、寝がえりも打てる。


そして今、俺は英語の勉強中である。

え?どうやってって?

いやいや、そりゃ勿論親に…え?うんうん、言いたいことはわかるよ。


まず、あの時のことを振り返ろう――。


--リビング


ある日、薄い液晶から芸人が喋る声が聞こえた。


「Why Japanese people!?」

「うへへ、うははは!」


お父さんの笑い声が聞こえる。


まだこの芸人居たんだなぁ…。

そんなとぼけていたことを考えていた俺。

だが、俺はどうやら天才なようでなんでもないような風景を見て、閃いた。


(これだ!)


それは、「言語に異常な興味を示す赤ちゃん」を演じる事である。

つまりどういうことか。

外国語を聞くことで喜ぶ赤ちゃんに対し、親ならば恐らく英語なり、中国語なり、韓国語なり、言語を赤ちゃんに聞かせるようになるだろう。

俺は、外国語が聞こえてきたら、「笑う」という動作をするだけでリスニングの勉強が出来ることを発明したのだ。

ああ、天才。




そして、今に至る。

そして今思っていること。

それは、赤ちゃんって凄い。ということだ。


「蒼太って変わってるよな…」

「言語が大好きな子なんじゃない?私はいいと思うけどな」


まず、日本語にないような音まで聞き分けられるのだ。

RかLか、こんなのは序の口で、中国語とかアラビア語とか、言ってることは何も理解できないんだけど、恐ろしいくらいに「音」を理解できるのだ。


「俺も、蒼太がこれで英語とか喋れるようになるなら、万々歳だけどさ」


知らない音も、知っている音にすぐに変わる。

正直、楽しくて仕方ない。


「ちょっとだけど、気味悪いって言うか…」

「何言ってんの!?信じらんない」


綺麗な女の人は、男を睨むように声高く言った。

そして、肩を上下に揺らしながら、鼻を少し膨らませて、喉から出そうになる言葉を必死に飲み込んでいた。


「ご、ごめん、そういうつもりで言ったんじゃ」

「もういいよ!」


ドアを閉める大きな音が部屋を揺らす。

静寂が数秒間、いや、数十秒間続き、男が口を開いた。


「ごめん蒼太、パパ、ママを怒らせちゃった」

「あうあう~」


うむ。俺はやりすぎてしまったらしい。

確かに、よく考えればわかることだが、赤ちゃんが熱心に外国語を聞いているなんて普通におかしい。

違和感の塊である。


でも、着実とリスニングの成果は出ているのだ。

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