第3話 前世と今世

ついに生後3ヶ月になり、ようやく首がすわった。

寝返りを打ったり、はいはいはまだ出来ないけど、向きたい方向を自由に向けるようになった事がとても嬉しい。


そして、この3ヶ月。

とても長かった。人生で一番長かった。まだ始まったばかりだけど。


まず、何もする事がない。お腹が空いたらお母さんを泣いて呼ぶ。ぱいおつを吸ったらまた寝る。この繰り返しだった。

でも、唯一できることは、自分の前世を振り返ること。


思えば、沢山の失敗や後悔があった。

母親に吐いた暴言、勉強をしっかりとしてこなかったこともそうだし、好きなあの子へのアプローチを間違えたこともあったな。


色々な後悔はあるけれど、今回の人生では上手くやってやる。

俺はそう誓って、大声を出す。


「うえええええん!」


俺の母親――瑠衣という名前なのだが――は、しかめっ面をしながら俺の下半身の紙布を剥がす。


そう、うん○が漏れてしまったのだ。

不快感がえげつなかった。これは泣くよ。大人でも。


話を戻すが、今回の人生でやるべき事。

それは、まず言語習得である。

勿論それは日本語の事ではなく、英語、中国語、スペイン語などなど。人とコミュニケーションをとる上で、言語を習得しているか否かはとても重要な事である。


そして、言語を自然に沢山学べるチャンスは、赤ちゃんである今しかないのだ。

このチャンスを逃せば、残すは地獄の勉強の日々。楽をするなら今しかない。

今しかないのだ。


だが、ここで一つ問題がある。

どのようにして、言語を習得するのか、という至極当然な壁があるのだ。

まず、赤ちゃんに最適な言語習得の方法が分からない。

分からないのなら試すしかないのだが、試すためには親の協力が必要である。

だが、親に「えいごおぼえたい!」と言えるはずもないし、まず歯が生えてないのでちゃんと発音も出来ない。

文字を書いて協力をしてもらう、という事も考えたが、いくら何でも不自然過ぎる。


ならば、どうするべきか。

ううむ。寝よう!

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