前のエピソード――6. もう一つの世界

　　昔も今も人間の悩みはさまざまあるが似通っている。

　結婚や家庭の問題、就職や仕事などに付きものなのは人間関係の善し悪しと対処の仕方。自分がどんな時代にどんな国に生まれるのかは自分で決められない。裕福な家に生まれるか貧乏なのかもわからない。子は親を選んで生まれてくるという説もあるけれど、だれも貧乏人の家に生まれたくはないだろう。

　幼少期は親や周囲の環境が大きく影響する。しかし、生まれた日によってある程度の運命が定まっているとしたらどうだろうか。

　ある時期は順調満帆に事が運び、ある時は何もかもうまくいかず、どうして自分ばかり苦労して損な人生なのだろうと嘆きたくなる。そんな時期が必ずあるのだ。

　人間には良い時期と悪い時期があって、すべては流れてゆくものだ。と達観できる人は少ない。それでもその時期を知り、低調な時を静かに過ごせれば、また良い時がやって来る。

「雲の向こうにはいつも太陽が輝いている」

　いまは雲で遮られているだけなのだ。そして占い師は、悩みを抱えて訪れる人々に、現在の運気や、どうすれば良い方向へ進めるのかを知らせ、明るい気持ちで帰れるように努力する。中には毎週のように来て悩みを話し、解消すれば来なくなる。ときには独り暮らしの老婦人が、歩んできた人生を誰かに聞いてほしいからと、一時間ほど話して帰ったこともある。現代の駆け込み寺かもしれない。

　占い処の利用法は人さまざまだ。

　一つ大切なことは自分の運気を知ることで、良いときにのんびりしていては幸運を逃してしまうし、運気の弱い時に焦って動いたり、新しいことを始めようとしても失敗しやすいということ。時を知り、自分を知ることは人生を豊かに、そして大過なく過ごせるということなのだ。