5. 易に親しむ(一)
易は周の時代に完成したので周易とも言う。中国から伝来し、権力者たちが政治戦法に活用して来た。原典を日本語に訳した書物は難しくてわかりにくい。それをわかりやすく解説し普及したのが横井伯典氏だ。
天(てん)・沢(たく)・火(か)・雷(らい)・風(ふう)・水(すい)・山(さん)・地(ち)という森羅万象八通りの組み合わせで六十四卦。一卦に六爻ずつの説明があるので三八四の卦爻を学ぶ。習得に時間はかかるが実に頼もしい。
昔は筮竹、いまは八面賽子で、精神統一しいて占う。初めは良く理解できず、講義についていくのに必死だったが、だんだん面白くなった。伯典氏は、「易は人間学であり処世術だ」と豊富な事例を挙げながら熱心に講義された。
そのころ氏から「将来、易が自分に役立つように」と占ってごらんと言われ、占ってみると、山沢損五爻(投資が活きて長期にわたり恩恵を受ける)という良い卦爻を得た。
氏は、「ずいぶん力のある易が出たな」と目を丸くされた。姉が鑑定所を開いて日も浅く、私はどう易を生かすかという計画や予定もなかったので、将来、姉の後を継いでオーナーになろうとは夢にも思わなかった。
しかし後年、夫が倒産したあと肺癌で六十三歳の生涯を閉じてからも、易占のお陰で生活に困ることはなく暮らせたのだから、易にめぐり合えたのはとても幸せなことだったと思う。そして私も八十代に入り、いつ神様から「もう人間の生活は終わり」とお呼びがかかるかもしれないけれど、もう一つの世界が存在すると信じているので、「人間卒業」も悪くないと思っている。人間に生まれた以上、いずれはこの世を去るのだ。この世には科学だけでは割り切れない不思議なことが、まだまだたくさんある。
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