4. 娘の誤診事件

 長女が成人式を祝った後「のどが痛い」と言って受診した耳鼻科で、悪性リンパ腫だと疑われ、検査の結果も悪く、半年の命だと宣告された。

 急遽、放射線コバルト治療が始まり、やがて娘の頭髪はごっそり抜け落ち、食べ物が喉を通らなくなってきた。がんの治療は過酷で、どんどん弱っていく。後から思えば半年で抗がん剤にやられてしまうということだ。

 夫は、専門家である医師を信頼して任せようと言ったが、私が易占してみると、「天雷无妄五爻」という卦爻が出た。病気ではないから放っておけ、薬を用いるとかえって悪化する、と言う意味だ。医師より占術を信じるのかという夫を説き伏せ、勧められた入院を断り、私は良い易が出た𠮷方位の大学病院へ娘を連れて行った。

 そこでは熟練の医師が、娘の喉を見てすぐに、「これはアデノイドの変形だ」と簡単に診断を下した。リンパ腫ではないと言われ、危ういところで助かったのだ。なぜ間違えられたのかは判らないが、誤診で助かったし、易占の有難さや凄さを痛切に感じた。

 その経験から、少しでも人々の役に立てればうれしいと思うようになった。実際、客の中には乳癌を疑われていても、手術の必要はないという易が出た人や、余命宣告を受けてあと一年だという人に、大丈夫だから安心するようにと言ったこともある。その人は何年か後に「大丈夫でした」と元気な姿で立ち寄られた。

 反対に、軽い病気だと思っていた人に注意を促し、早期発見につながったこともある。占い師(今は鑑定士ともいうが)は頼まれて占った結果を正直に伝え、慰めたり励ましたりすることはあっても嘘は言わない。それは易の神様からのメッセージなのだから。

 それにしても乳癌は間違えられやすい病の一つだ。私自身、三十代半ばの頃乳がんと疑われ、切除の話も出たが、他でベテランの医師に「繊維腫」だと言われて、放っておいたが何ともなかった。

 また、娘の余命宣告を受けたとき、知人に勧められて観音菩薩系の女教祖に会ったことがあるけれど、「お医者様の言うとおりにして頑張ってね」と励まされただけだった。医者に従っていたら、生命はなくなっていただろう。というわけで、私は易の神様にお伺いするのがいちばん確かで安心できるのだ

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