第38話 ゴブリン討伐戦

「行くぞ!」


 いの一番に集落内に斬り込んだ信士は、雷霆らいていで速力を強化した状態で集落内の建物の屋根から屋根へと飛び移り、迅雷の速さで駆け抜けていく。周囲のゴブリンを無視して。

 そのあまりの速度は、ゴブリンたちの目には映りながらもそれとは認識できぬほどだった。

 信士が目指すのは集落の一点――ゴブリンに捕らえられていたあの少女だ。今回の目的はあくまで彼女の救出であって殲滅はついでなのだ。


 なら第一に、少女の身の安全を確保するのは当然の選択だ。


<イザヴェル>での1年間に及ぶ修行を経た信士のステータスがこれ。



  名前:高月タカツキ 信士シンジ

  年齢:16

  性別:男

  種族:人族

  天職:サムライ

第二天職:魔法戦士  

 総合力:373370

 生命力:40650

  魔力:38440

  体力:39910

  筋力:37020

  敏捷:58450

 耐久力:35600

 魔法力:33900

 魔防力:28800

 技術力:30820

  精神:29780

  状態:良好


 スキル

 物理技能系

<中級刀術510><剣術350><投擲780><二刀流870><歩法590><格闘術480><柔術100><立体起動850><悪路走破5100><隠形730><潜伏690><隠蔽870><無音移動730><調理420><魔物調教480><動物調教500><連携910><回避880><威圧700><手加減680><木工190><水泳560><操車500><潜水390><空中戦闘450><水中戦闘400>


 魔法技能系

<魔力制御910><魔力隠蔽720><魔力強化630><魔力放出700><魔力付与730><魔力回復800><魔法剣790><火魔法590><風魔法520><土魔法600><水魔法670><雷魔法620><氷魔法660><物理魔法900><光魔法590><闇魔法480><空間魔法480><並列発動700><複合魔法590>


 身体系

<身体強化800><跳躍710><俊足930><持久走600><望遠410><暗視510><聞き耳600><生命回復870><魔力回復700><頑強720><闘気710><覇気420><剣気410><根性450>


 感覚系

<気配遮断790><空間把握750><気配察知800><危機察知870><敵意感知740><悪意感知690><呪詛感知600><毒感知490><ウィルス感知510><精霊感知490><魔力感知600><生命感知750><罠感知820><臭気感知630><死霊感知570><病魔感知400><能力看破800><思考加速690><機械感知400><看破妨害600>


 耐性系

<毒耐性810><病魔耐性890><ウィルス耐性890><精神耐性900><物理耐性780><苦痛耐性910><麻痺耐性840><石化耐性800><呪詛耐性670><火耐性780><風耐性620><水耐性780><土耐性700><雷耐性770><氷耐性710><物理耐性900><光耐性760><闇耐性760><異臭耐性680><空間耐性710><魔法耐性690><銃弾耐性890><光線耐性770><爆撃耐性690>


 学術系

<日本語590><英語50><暗記230><速読500><算術150><暗算100><演算420>


 ユニーク系

<無限収納-><錬成460><万能翻訳->


 恩寵

鏖殺英雄スサノオLv1>


 ステータス及び、戦闘に関わるほとんどのスキルレベルが大幅に上昇し、新たなスキルもいくつか習得している。


 特筆すべきは天職である「刀術士」が「サムライ」に変わっていることだろう。


 メルの話では、この「天職」とは言わば「才能」であり、持っている者はその職業に関するスキルの習得率や上昇率が大幅に上昇するのだという。当然、誰でも持っている訳ではなくむしろ保有する者はごく少数に過ぎない。故に「天職」を有している人間はいわば「天才」と称される者たちなのだ。

 さらにその希少な「天職持ち」の中で、ごく稀に「天職」を2つ有する者が現れることがある。当たり前だが「天職持ち」の中でもさらに希少な「第2天職持ち」は、アンディール王国の長い歴史の中でも数えるほどしかいなかったらしい。


 そして「天職」は修練や実戦を繰り返し、特定の条件を満たすことで上位職へとクラスアップすることがある。クラスアップするとそれまでよりもさらにスキルの習得率が増し、より強力な上位スキルを習得することができる。


 お気づきだろうか? 信士の物理技術系スキル<刀術>が、<中級刀術>になっているのが。<イザヴェル>での過酷な訓練を繰り返している内に<刀術>のレベルがカンストし、<中級刀術>へとクラスアップしたのだ。そしてそれと同時に、彼の天職である「刀術士」が「サムライ」へと変化した。

 どうやら「刀術士」から「サムライ」へのクラスアップの条件が、<刀術>レベルのカンストだったらしい。それに伴って<刀術>も<中級刀術>に変化したのだ。


 瞬時にして広い集落内を横断し、少女の元へと到達した信士は――


ね」


 ――一刀の元に、彼女を取り押さえていた2匹のゴブリンの首を刎ねた。崩れ落ちたゴブリンの首なしの死体を目にした少女が、突然の事態に困惑しながらも頭を上げ、信士を見上げる。


「あ、あなたは……」

「詳しい話は後だ。それより、あんた以外に生き残りはいるか?」


 なにか言おうとした少女の言葉を制して、信士は彼女に尋ねた。生存者がこの少女だけとは限らない。もし他にもいるなら、当然助けなければならないのだが……


「い、いえ。私以外は、みんな……」


 だが少女の口から返って来た答えは無情なものだった。


「……判った」


 信士が答えると同時にゴブリンたちの怒声が轟いた。突然の奇襲に混乱していた周囲のゴブリンたちが、自分の姿を認めてようやく襲撃であると理解し、怒りに満ちた耳障りな奇声を上げながら全方位から押し寄せてくる。

 多勢に無勢、孤立無援の状況にありながら信士は不敵に笑った。


「1人で突っ込んできたと思ったか?」


 多勢の敵軍の中に単騎で斬り込み、敵兵をバッタバッタと斬り倒す。戦国を原作とした漫画などではよくあることだが、実際にはそのような無双劇はほとんどなかった。そうした愚行を行った結果、あっけなく討ち取られてしまった武将は多くいる。故に、ゴブリンの集落のど真ん中に1人で突っ込んで来るという信士の行いは、戦国マニアな彼からしてみれば愚行中の愚行でしかない。


 なので、しっかりと仲間を同行させていた。否、仲魔だが。


 信士の背後から黒い影が飛び出し、土煙を上げながらゴブリンたちへと向かっていく。そして、ゴブリンたちに対応する暇すら与えず、ほんの数秒で20体近いゴブリンたちを、まるで魚でも捌くかのようになます斬りにしてしまった。


 信士たちの仲魔であるブラック・スライムの異常種――クロだ。


  名前:クロ

  種族:ブラック・スライム(異常種)

  年齢:5歳

  性別:-

 総合力:343280

 生命力:50100

 魔力量:0

  体力:38920

  筋力:35600

  魔力:0

  敏捷:62730

 耐久力:42800

 魔防力:39600

 技術力:32110

  精神:41420

  状態:良好


 スキル

<擬態710><吸収530><硬化700><射撃610><高速移動620><強酸720><水分吸収710><気配遮断930><気配察知790><物理耐性900><斬撃820><触手890><回避80><潜行630><分裂420><毒生成560><巨大化560><薬生成490><連携700><苦痛耐性510><麻痺耐性320><石化耐性300><呪詛耐性470>


 魔物であるクロは信士たちと違って「天職」を持たない。そしてなにより、魔法に関するスキルを一切習得することが出来ないらしい。故にステータスにおける「魔力」と「魔力量」が0となっている。

 その代わり、それ以外のステータスが極端に高いのが特徴だ。特に「敏捷値」に至っては信士すら凌ぐほどであり、スライム=鈍い、という概念をぶち壊す、まさに異常種だ。


「クロ、この子を頼む」


 信士が言うと、クロは「まかせろー」とばかりにピョンピョンと飛び跳ねた。そしてプルプルと震えだしたかと思うと、突如としてその身体が分裂し、無数の小さいサイズのスライムが生まれた。


 これがクロの新スキル<分裂>だった。

 自身の身体を文字通り分裂させ、小さいサイズの「分体」を生み出すことが出来る。分体は基本時に本体と同じスキルを使用することが出来るが、ステータスは本体の10分の1しかない。現時点で生み出せる分体の数は10体が限界だが、スキルレベルを上げることで増やすことも出来る。


 ちなみにクロのことを溺愛している陽菜はこの一回り小さいクロの分体を「クロコちゃん」と呼んでおり、本体と合わせて「クロちゃんズ」と称していた。


 クロ本体が少女の前に鎮座し、ピョンピョンと飛び跳ねる分体たちがその周囲を固める。突然現れた黒いスライムたちに少女が目を白黒させているが、いまは構っていられない。


 ヒュン! という空を斬る音が信士の耳朶を打った。

 次の瞬間、クロの分体が1匹、少女の頭上へと飛び上がり、<硬化>を使って飛来した矢を弾き飛ばし、身を挺して彼女を守った。

 矢を射ったのは少し離れた櫓の上にいたゴブリン・アーチャーだ。初撃を防がれたことで再度、弓に矢を番えようとしていたが、それよりも先にクロ本体が放った<強酸>の礫が顔面を捉え、悲鳴を上げる間もなく頭部を跡形もなく溶かされて崩れ落ちた。エ〇リアンも真っ青な強酸性だ。


 その間に、集落の中からひと際大柄なゴブリン・ジェネラルが数匹のソードマンを引き連れて信士たちに向かってきた。が、信士はあくまで冷静にそれらを迎え討つ。

 先駆けのソードマンを刀の数振りで手際よく屠る。<剣術>スキルを持っていると言っても、如何せんレベルが違いすぎる。

 その背後から、地響きを上げて大剣を振りかざしたゴブリン・ジェネラルが迫って来る。


「ジェネラル……つまり将軍か。将軍殺しは嫌なんだよなぁ」


 かつて、織田信長は当時の(そして最後の)室町幕府の将軍、足利義昭に2度も裏切られて戦いになり、2度とも勝利した。基本的に裏切り者に対しては断固たる処置を取る信長であったが、将軍を殺すという不名誉を嫌ったのか最終的に義昭を殺すことはせず追放に留めたという。


「なので――」


 至近に迫って来たジェネラルが、頭上から大剣を振り下ろしてきた。それに対して信士は刀を軽く一閃する。たったそれだけで、大人の胴体ほどもあるジェネラルの腕が握っていた大剣ごと宙を舞った。


「他の奴に殺してもらえ!」


 腕を落とされて悲鳴を上げるジェネラルの脇腹に、無造作にミドルキックを叩きこむ。筋力値37020の蹴りは、一撃で体重200kgを下らないであろうゴブリン・ジェネラルを湖まで吹き飛ばした。水中に転落したジェネラルは、泳げないのか、或いは片腕を失ったせいかゴボゴボと溺れるように藻掻いていたが、腕の切断面から迸る鮮血の匂いに誘われ、先ほどのトカゲのような水棲生物が現れ、溺れるジェネラルに喰らい付いて水中へと引きずり込んでいった。


 一拍の間が空いたのを見計らって、信士は新たな魔法を発動させる。


《人質は救助した。他に生き残りはいないらしい。なので、遠慮なくやっちまえ》


 空間魔法――思念通話。いわゆるテレパシーのようなもので、遠く離れた人間と思念で会話できるというものだ。これもまた、<イザヴェル>で仲間との連携戦闘を繰り返している際、敵に悟られずに仲間と意思疎通を図る為に習得したものだ。

 もちろん、信士が思念を送ったのは陽菜とセラだ。


《判った!》

《了解なんだよ!》


 2人からすぐに返答が返って来きた。思念通話を通して2人のやる気が伝わってくる。あんな光景を見せられたせいか、2人ともかなり気合が入っている様子だ。


 そんなこととは露知らず、懲りずにワラワラと集まって来るゴブリンたちに信士は嘆息を漏らした。


「オレたちにばかり構ってて良いのか?」


 その言葉に合わせるように、信士の視線の先――集落の入り口付近で轟音が響き渡った。飛沫の如く宙に舞い上げられる土煙、文字通り木っ端微塵に破壊された家屋の破片、それに混じって宙を舞う何匹ものゴブリンたち。


「フハハハ! ゴブがゴミのようだ!」


 どこかで聞いたようなセリフを捲し立てるのは、言うまでもなく陽菜だった。装備しているのは元の世界で信士が屑鉄から造った鉄剣だったが、まるでそれを小枝の如く振り回して触れるもの全てを薙ぎ払い、破壊していく様は歩くサイクロンのようだ。


  名前:矢橋ヤバシ 陽菜ハルナ

  年齢:16

  性別:女

  種族:人族

  天職:バトルマスター

第二天職:魔法戦士

 総合力:344920

 生命力:38220

  魔力:33210

  体力:31750

  筋力:63100

  敏捷:24330

 耐久力:30800

 魔法力:28990

 魔防力:32860

 技術力:31210

  精神:30450

  状態:良好


 スキル

 物理技能系

<中級大剣術240><歩法520><格闘術400><剣道380><立体起動820><悪路走破510><隠形630><潜伏600><隠蔽710><調理760><連携870><回避630><威圧720><手加減580><水泳400><操車220><清掃430><護身術620><潜水390><水中戦闘320><空中戦闘400>


 魔法技能系

<魔力制御890><魔力強化570><魔力放出790><魔力付与870><魔力回復850><魔法剣790><火魔法730><風魔法540><土魔法540><水魔法590><雷魔法800><氷魔法530><物理魔法550><光魔法730><闇魔法570><空間魔法560><幻影魔法550><並列発動690><複合魔法490>


 身体系

<剛力120><身体強化780><闘気800><跳躍660><俊足600><持久走610><望遠590><暗視510><聞き耳500><生命回復810><頑強710><覇気350><回復強化420>


 感覚系

<空間把握710><気配遮断690><気配察知770><危機察知700><敵意感知840><悪意感知900><虚偽看破860><悪意感知880><毒感知630><ウィルス感知570><精霊感知630><魔力感知660><生命感知760><罠感知800><臭気感知710><病魔感知690><能力看破740><思考加速550><機械感知420><看破妨害570><死霊感知500>


 耐性系

<苦痛耐性830><毒耐性710><病魔耐性590><ウィルス耐性670><精神耐性880><物理耐性790><苦痛耐性610><麻痺耐性810><石化耐性710><呪詛耐性620><火耐性700><風耐性600><土耐性590><水耐性630><雷耐性690><氷耐性730><物理耐性720><光耐性640><闇耐性770><空間耐性710><魔法耐性690><銃弾耐性800><光線耐性830><爆撃耐性710>


 学術系

<日本語570><英語150><暗記390><速読650><算術410><暗算490><演算500>


 ユニーク系

<無限収納-><万能翻訳->


 恩寵

幻想勇者パーシアスLv1>



 これが陽菜のステータス。彼女も信士と同様、<イザヴェル>での訓練を経て天職が「大剣士」から「バトルマスター」へとクラスアップしていた。

 バトルマスターとは主に大剣、斧、棍棒といった重量系の武器を扱うクラスの上位職で、習得すると筋力値が上昇しやすくなり、メインウェポンに関する上級スキルを習得できるのだそうだ。実際、陽菜の筋力は6万オーバー。さらに<大剣術>が<中級大剣術>へとクラスアップしている。そんな彼女の代名詞ともいえる<怪力>が、さらにその上の<剛力>へと昇華していた。


 これらの影響で陽菜のパワーを生かした戦術にさらに磨きがかかってしまった。力こそ正義! と言わんばかりに向かって来るもの、立ち塞がるもの全てを力で捻じ伏せ、叩き潰していく様は、もはや勇者と言うよりは破壊神と言った感じだ。

 実際、普通のゴブリンだけでなく、ホブ・ゴブリンやゴブリン・ジェネラルといった上位種までも家屋ごと薙ぎ払っている。

 しかも――


「破片がこっちまで飛んできてるじゃねーか!?」


 人間よりも大きい丸太や破片が紙くずみたいに宙に飛ばされ、勢い余って信士たちのいる辺りまで飛んできていた。が、信士が手を宙に翳すとそれらが重力を無視して一斉に空中で停止する。

 信士が得意としている物理魔法――念縛だ。目に見えない魔力の手で人や物を掴んで浮かしたり、飛ばしたりすることが出来る魔法。


「せいっ!」


 信士が翳していた手を振り下ろすと、空中で静止していた無数の破片が向きを変え、一斉にゴブリン目掛けて降り注ぎ、多数のゴブリンを下敷きにしてしまう。


 ギガガガガッ!!


 お返しとばかりにゴブリン・メイジたちが信士に杖を向ける。その先に大きめの火球が出現、膨張し、いままさに放たれようとした、その時――


 特大の稲妻がゴブリン・メイジたちの頭上に降り注いだ。


 さながら神の裁きを思わせる強大な電気エネルギーの奔流に、ゴブリン・メイジたちは悲鳴を上げる間もなく一瞬で蒸発させられてしまう。


「女の子に酷いことするなんて、絶対に許さないんだよ!」


 頭上からゴブリンの集落を俯瞰するのは言うまでもなくセラ。その内心に宿る怒りを表現するかのように彼女の身体からはバチバチと言う音を立ててプラズマが迸っている。


  名前:セラ・ヴェル・アムスタード

  年齢:16歳

  性別:女

  種族:人族

  天職:ハイプリースト

第二天職:アークメイジ

 総合力:320340

 生命力:26620

  魔力:91310

  体力:1860

  筋力:950

  敏捷:1100

 耐久力:1120

 魔法力:88960

 魔防力:85330

 技術力:10080

  精神:13010

  状態:記憶喪失


 スキル

 物理系

<杖術200><護身術310><隠形230><潜伏190><連携720><回避300><水中戦闘280><空中戦闘510>


 魔法技術系

<魔力制御990><魔力強化980><魔力隠蔽930><魔力放出970><魔力付与970><火炎魔法310><颶風魔法260><大地魔法280><水禍魔法270><雷帝魔法350><極冷魔法210><物理魔法950><光魔法950><暗黒魔法110><空間魔法890><幻影魔法550><並列発動950><複合魔法980>


 身体系

<生命回復630><魔力回復950><回復強化880><暗視300><頑強200>


 感覚系

<魔力感知940><気配察知310><危機感知490><呪詛感知860><精霊感知850><死霊探知800><空間把握860><看破妨害600><気配遮断360><機械感知350>


 耐性

<魔法耐性810><石化耐性790><呪詛耐性880><物理耐性630><光耐性990><闇耐性820><火耐性620><風耐性580><雷耐性700><氷耐性710><土耐性630><水耐性800><空間耐性650><銃弾耐性410><爆撃耐性320><光線耐性400><病魔耐性300><ウィルス耐性250>


 学術系

<標準語620><演算30><暗算60><算術20><鑑定450>


 ユニーク系

<神聖魔法830><精霊魔法940>


 恩寵

神魔聖女ブリュンヒルデLv3>


 セラもまた信士たちと同様、ステータスやスキルレベルを大きく上昇させている。さらに彼女の場合、第二天職である「メイジ」が「アークメイジ」になっていた。それによって闇、火 風、水、土、雷、氷系の魔法スキルがランクアップし、より強力な魔法が扱えるようになった。

 ただでさえ強力な攻撃魔法を扱えるセラがクラスアップしてしまったものだから、その威力たるや常軌を逸する。魔力値は9万越え。魔法力、魔防力ともに8万越えというステータスがそれを物語っている。ただ、攻撃魔法系のスキルを伸ばすことに集中しすぎたせいで、<光魔法>だけはランクアップすることが出来なかった。もし<光魔法>のスキルレベルがカンストすれば天職「ハイプリースト」が「アークプリースト」にクラスアップ出来たのだが。


 なお、以前は物理系のスキルをなにひとつ習得していなかったが、信士や陽菜から万が一の場合も考えて最低限のスキルは習得するべきだと説得され、<杖術>を始めとしたいくつかのスキルを習得したが、いかんせんレベルが低く付け焼刃感は否めない。


「くっころするゴブリンは、ごぶっころすんだよ!」


 恐らく……というか間違いなく陽菜の入れ知恵で有ろうおかしなセリフを吐いてセラが杖を掲げると、それに合わせるように周囲にいくつもの魔法陣が現れ、けたたましい大音響を轟かせて雷撃の雨が集落に降り注いだ。


 雷の雨を降らせ、ゴブリンの集落を破壊していく様はまさに天災。

 さらに彼女の眼下では物理パワーの塊である陽菜が家屋ごとゴブリンたちを薙ぎ払っている。


 もはや蹂躙以外の何物でもなく、やられるゴブリンたちが気の毒になってくるほどの有様だった。


 火力お化け女子たちの暴れっぷりを傍で眺めていた信士とクロは――


「……オレたちは節度を弁えような?」

 ……ぷる


 ――静かにうなずき合っていた。


 その時。


 ギシャアアア!!


 一際甲高い咆哮が集落の中央の建物から聞こえてきた。

 入り口を突き破る様にして出てきたのは、ゴブリン・ジェネラルよりもさらに二回り以上大柄で、豪勢な装飾品を身に付けた巨大なゴブリン。


 アンディール・ゴブリン・ロード

 総合力:170530

 生命力:15200

 魔力量:0

  体力:22390

  筋力:31220

  魔力:0

  敏捷:20040

 耐久力:29050

 魔防力:23200

 技術力:18970

  精神:23660

  状態:憤怒


 スキル

<身体強化510><大斧術460><統率560><威圧4200><闘気380><覇気450><咆哮310>


「ゴブリン・ロード……あいつがボスか」


 総合力17万超。他のゴブリンたちとは桁外れの強さを誇るゴブリンたちの王。ステータス欄の状態が「憤怒」になっているのを見るに、自身の王国に踏み入った上に好き勝手に暴れまくる信士たちに相当お怒りのようだ。当たり前のことだが。

 もちろん、陽菜やセラもゴブリン・ロードに気付いたが――


《あいつはオレがやる》


 信士が思念通話で2人を制した。

 敵総大将を討ち取ることこそ、戦における最大の誉。


 怒りに満ちたゴブリン・ロードの赤い瞳が信士の姿を捉えた。自身の姿を認めながら、刀を鞘に仕舞った状態で余裕たっぷりに徒歩で近づいてくる信士の無警戒ぶりは、ゴブリン・ロードのプライドを瞬時に沸騰させた。


 憤怒の叫号を上げ、信士の頭を叩き割るべく手にした戦斧を振り上げ――


 しゃこん――


 文字にするとそのような音を立てて、信士の右手と刀がブレた。


 キン――


 すぐ後に響いた静かな金属音は、刀を鞘に納めた金丁だった。


 それを合図にゴブリン・ロードが戦斧を振り上げた態勢で動かなくなる。ややあって、ゴブリン・ロードの野太い首に一条の紅い線が走り、鮮血を溢れさせたかと思うとそれを境に首が上下にズレた。重力に引かれた頭部が呆気なく地面に落ち、やや遅れて頭部を失った巨体が糸の切れた人形のように倒れ伏す。


「悪いな。敗軍の将は首を打たれるものだ。それに――」


 視線だけを動かして、件の晒し首に目を向ける。


「これがお前たちの流儀だろう?」


 吐き捨てるように言い残して、信士は事切れたゴブリン・ロードの首の前から身を翻す。

 大将であるゴブリン・ロードが討たれたことで、ゴブリン集落の戦いは一方的な決着を迎えたのだった。

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