第4話 夜世界の水服店
幻想的な世界に二人は「わぁ~」と感嘆の声を上げ見惚れていた。
「ここ、景色がめちゃ綺麗でお気に入りなこともあって、今から行くお店に良く行くんスよ~!それにお店もすごいスよぉ~っ!」
「いつもの夜の景色が何倍にも綺麗になったみたいな、結晶みたいな、宝石みたいな…朝日のような刺激的な空じゃなく、
優しい夜の光がすごく強くなった、そんな空…つい魅入っちゃいます…。」
「不思議スよねぇ…色んな色が見えるのに、それでも夜だってわかる空…本当に、あたしの頭じゃ言葉が足らないス…。
だからオススメしたいときは大体直接案内するんスよねぇ…。」
「大丈夫ですよ!人には向き不向きがありますから!それにそういうのは色々生きていくうちになんとかなっていきますよ!
たぶん!」
「そうっスね!あたしには勢いがある!こういう悩みは!一旦置いておいて……今に目を向けるっス!それじゃぁ気を取り直して
服屋に行くっスよ~!」
トレイルは右の拳を空に突き上げて気合いを入れると
「さっこっちっスよ」と一言声をかけて、再びキスア、クゥの三人で歩き始めた。
「トレイルさん、ここはもしかして永世の夜…夜の魔女の世界ですか…?」
辺りを見渡しながら、キスアは言う。
「その通りっス!訳あってここの世界にお邪魔することになったんスけど、まぁ、
いろいろと便利なんで良く来るんスよ」
トレイルは歩きながら振り返りそう言うと、再び前を向いた。
「今から行く店は結構品ぞろえが良くて、身長や体格に悩まされることが無くて要望も
可能な限り叶えてくれるからオススメなんスよねぇ」
「さすがは魔女の都…住み始めてからまだ知らないことがいっぱいです…」
「あたしはたまたま師匠がここに詳しかったから知れたけど~…普通ならわからないスよねぇ。でも
気付ける人もいるみたいスよ?隠ぺい魔術もそう見破るのが難しいものでもないっスからね。もちろん
知識があればこそ何スけど。キスアさんはそういうのは?隠ぺい魔術の見破りとかできるスか?」
「私は錬金の魔法しかしてこなかったから…でもこういうのがあることは知ってました、色々やっては見たんですけど…どれも適性が無くてうまくいきませんでした…。攻撃系も、探査系も調査系も、識別系も変化系も…だめ。
知識としては色々勉強したからわかるけど…実践は全く。」
「その辺の魔術の勉強とかの詳しい話、もっと聞きたいスけど、そろそろ…あっとここっス!」
トレイルが立ち止まり、指さす方を見ると……
水で出来た不思議な建物があり、中に店舗を構えていた。
「す、すごい…こんなの初めて見ました…水でできた建物なんて…なんですかこれ…!」
「これはクエリィさんが経営している水中店舗の一つです!すごいっスよね!自分も初めて見たときはこんな反応しました!
不思議っスよねぇ…水の建物、形が変わり続けるし、色も綺麗で…光がふわっふわ柔らかい淡い色味で…夜に映えるんすスねぇ…。」
「でも、これ…中に入っても大丈夫なんですか?息ができなくなったりしません?わたし水中呼吸の魔術使えないんですけど…。」
「あっ大丈夫っスよ!この中、なんでかわからないっスけどふつうに呼吸ができるんス!
それなのに中はちゃんっと水の感じ何スけど
出たら服が濡れてたりしないんスよねぇ…。」
「…うぅぅんどういう原理なのか気になるぅぅ…でも今は服のことです!いきましょうトレイルさん」
「もちろんス!案内しますんで入りましょう!…ゴボボ!!」
話ながらそのまま水の建物にぶつかると水しぶきを飛び散らせ、途中から何を言っているのかわからなくなるトレイル。
「トレイルさん…?と、とりあえず私たちも入ろっか…」
「………うん」
クゥの手をとり、キスアと一緒に建物へ近づいていくが、二人とも無意識のうちに息を止めて目をつむってしまう。
「んっ!」
「っっ!」
一瞬バシャッと水が弾ける音が聞こえたがその後、外の音が聞こえなくなる、そして、
代わりに先ほどまで聞こえなかった建物の中の賑わいが辺りを包んでいた。
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