第17話 消息不明の勇者

 ギデオネルからなんとか逃げ切り、レレナと合流することもできた。

「ここまで来れば、安心ですね」

 レレナはほっと胸をなでおろした。

「僕は……」

「ん? どうした?」

 カイムの問いに、僕は答える。

「……僕は逃げた。洞窟でも、逃げようとした」

「立ち向かったじゃねえかよ。それに、お前がひきつけてくれたおかげで、人的被害は少なく済んだ」

「でも、あの時は……」

「あの時はみんな死んだかもな。だから尚更、生きる義務がある。お前が死ねば、村の奴らは本当に無駄死にだからな」

 カイムに続いて、レレナが口を挟む。

「そうですよ。それより、あの龍を倒すためにどうするかを決めましょう」

「それなんだけど……」


 それから僕は、あの龍が討伐されたはずの究極龍ギデオネルだったことを伝えた。


 やはりと言うべきか、レレナは動揺している。カイムは怪訝な顔を浮かべた。

「そいつはちらっと聞いた程度でしか知らんけど、そうだったらどれくらいヤバいんだ?」

「……ギデオネルをたおすために、いくつもの軍隊が派遣され、散っていきました。6年前に現れた勇者ヴィファールによって討伐されましたが……ヴィファールは今、行方不明になってしまっています」

 レレナの説明に、カイムは益々困惑した表情を見せる。


「……ちょっと待て、軍隊で駄目で、勇者で倒せたって? そいつ倒すのにマスターソードでも必要なのか?」

「そのマスターソードというものが何かは知りませんが、ヴィファールが軍隊より強かったのは事実ですね」

「ハンス・ウルリッヒ・ルーデル……」


 彼の呆れたような顔は、なんだか妙に印象的だった。

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